第61話 フェアリーマノンちゃんの功績《こうせき》


「あんたたち!英雄ね!」ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテとロロとルルとエマさんとルイーズさんで春なのに10分前から猛暑日もうしょびみたいな気温の中住宅街を歩いていると、ぼくに感知出来ない魔力の層の英雄の気配をまとった可愛い女性声での詰問口調きつもんくちょうに後ろから話しかけられた瞬間猛暑日もうしょびから酷暑日こくしょびの気温に変わったのを確認して、ぼくは迷わずまよわず仲間全員を戦闘からでも緊急脱出きんきゅうだっしゅつさせる魔法を発動はつどうさせた。


 目の前には、ぼくの家に生えているフェアリーの木がある。

「アルヴィン! だめじゃない! 英雄狩りから逃げちゃ!」と、フィリオーネが怒ってぼくに言ってくる。

「え? 格上の英雄狩りみたいだったから、逃げたんだけど?」

「ジョンさんとジェイムズさんが借りかりを返せるように私たちが運命を引き寄せて出て来た英雄狩りなんだから、逃げてたらいつまでたってもジョンさんとジェイムズさんが借りかりを返せないじゃない!」とフィリオーネ。

「でもあんなのと戦っていたら、あたしたち死んじゃわない?」と、おびえたリリオーネ。

「ジョンさんとジェイムズさんが借りかりを返せるぐらいの英雄狩りなんだから、あたしたちが普通に戦っても勝てないわよ? どうにか敵のえんをさえぎる結界けっかいを無効化して、ジョンさんとジェイムズさんに助けに来てもらうのがあたしたちの基本戦術よ?」とフィリオーネ。

「アルヴィンの緊急脱出きんきゅうだっしゅつの魔法が効いたんだから、結界けっかいをはっていなかったかあたしたちが戦って勝てるあいての可能性もあったんじゃない? 少なくとも、アルヴィンの『死にたくない!』と言う意志力よりも下の意志力だった可能性があるわよ?」と、訳知り顔わけしりがおのフロレーテ。


「英雄狩りらしき人は、いないね……」

「真夏の酷暑日こくしょびみたいな結界けっかいの中心は、さっき声かけられた所みたいね……」とフィリオーネ。

「なんだろ? えらく迷惑な結界だけ出して追跡ついせきしてくるわけでもなく待ち伏せまちぶせしてくるわけでもなく、何がしたいんだろう?」

「英雄狩りじゃなくて、話がしたかっただけのただの英雄なんじゃない?」とフロレーテ。

「え? だって、攻撃的な詰問口調きつもんくちょうだったよ?」

「そう言う、話し方の人なんじゃないの?」フロレーテ。

「え? まさかそうなの? じゃあこのまま、妖精たちの被害ひがいにあった家を回っていたらまた出てくるかな?」


「こんにちは~! 妖精たちに荒らされた花畑や花壇かだんや消したいラクガキなどはないでしょうか? あれば花畑や花壇かだんをあっと言う間に咲かせる事もラクガキをキレイに消す事も出来ますが! いえ、お代はいりません! 妖精たちの事を、悪く思わないでいただけたらそれで結構です!」ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテとロロとルルとエマさんとルイーズさんで回ることあれから3件目、朝から数えて18件目巨大な扉が開いた瞬間、ぼくはお決まりのセリフを早口でまくしたてた。

「ああ!妖精使いアルヴィン君だね! 右腕も左足も調子いいよ! ありがとう! 準備できしだい、ダンジョン攻略再開しようと思ってるよ!」身長3メートル20センチの分厚い筋肉につつまれた巨体の男が、右腕をグルグル回し屈伸運動くっしんうんどうをして体の動きを見せてくれる。

「軍隊所属の方ですか?」

「いや? ずっとダンジョン攻略一本だよ?」巨体の男がゴキゲンなのはそのままに、不思議そうな顔をする。

「民間にもエリクサー回ってきてるんですか?」

「いや? エリクサーや機械式や流体金属式の義手義足なんて値段が高すぎて家に引きこもって筋トレしたり子作りしたりしかやることなかったんだが、フェアリーのマノンちゃんが飛んできて『お菓子くれるなら手足治してあげるよ?』と言って治してくれたんだよ?」

「そのフェアリーのマノンちゃんって、いつから四肢欠損を治せるようになったか聞いてます?」

「『最近必要になるかと思って故郷に戻って習得してきたけど、さきこされた!』って言ってたよ?」

「ああ~~~!」

「どうしたんだい?アルヴィンくん? やっぱり報酬少なすぎるよね? 一応マノンちゃんは毎日お菓子を食べに来るんだけど、ダメかな?」

「いえ報酬はいいんですけど、同じような思考回路のフェアリーがたくさんいる可能性がありまして! あ!実はフェアリーって花畑の花をむしったり壁や床や天井にかべやゆかやてんじょうにいたずら書きをしたりする習性しゅうせいがありまして、どうにかフェアリーのイメージアップをしないと国から追い出される可能性があるんです。そこで出来ればフェアリーたちやインプやピクシーが追い出されないように、心の片隅こころのかたすみにでもおぼえていてくれればそれが報酬になります! どうでしょうか?」

「そんなことでいいのかい? こちらこそ望む所のぞむところだよ! 僕の名前はユージーン、背の高い一族の評価基準では最高評価の血筋と言う事になってるんだ! まだまだ20才で引退するには早すぎると思っていた所、救ってすくってもらったおん全力で返させてかえさせてもらうからね! よろしく!」


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