第55話 90才ぐらいのおばあさんとちーちゃんとフェアリーのクリーム


「みんな~~~お菓子食べながら聞いて~~~」迷宮大金貨4枚(約4百万円)分、3トンのお菓子が妖精たちの胃袋に消える10分の間に演説するぼく。

「もうすでに聞いている子もいるかもしれないけど神の契約で休みが決まっていると休まないと神罰で強制バカンスが始まって英雄価格の高額料金を請求されるらしいから、今日の17時までに君たちが荒らした花畑やラクガキした建物や道路をキレイにする必要があります! 自分が荒らした花畑やラクガキを優先して、キレイにしてきてください! 建物のラクガキをキレイにする時は、建物の住人にラクガキを消すかそのままにするか聞いてから消してください! 花畑をもと通りにしたりラクガキをキレイに消したりするとお金やお菓子がもらえるかもしれませんが、ぼくたちの目的は妖精たちがこの国から追い出されないようにイメージアップする事です! 報酬のもらいすぎに注意してください! 明日から4日間皆さんは直接神の契約をしていませんがぼくが働かせていると判定されると神罰の強制バカンスにぼくが隔離されてしまう可能性があるので、皆さんも4日間休みです! そのつもりで今日の17時まで、妖精たちのイメージアップと後始末をがんばってください! お菓子を食べ終わった子から作業に入ってください! 以上です! ぼくも、妖精たちのイメージアップと後始末に向かいます!」


「こんにちは~! 妖精たちに荒らされた花畑や花壇かだんや消したいラクガキなどはないでしょうか? あれば花畑や花壇かだんをあっと言う間に咲かせる事もラクガキをキレイに消す事も出来ますが! いえ、お代はいりません! 妖精たちの事を、悪く思わないでいただけたらそれで結構です!」ぼくとフィリオーネとリリオーネとフロレーテとロロとルルとエマさんとルイーズさんで回ること5件目、ぼくはお決まりのセリフを早口でまくしたてた。ここは錬金術師の店なのだが、外壁や門やお店の壁いたるところにラクガキがされていてぼくは内心びびっていた。

「ああ! 妖精使いアルヴィン君かい? 許可をもらおうと、待っていたんだよ!」と錬金術師の店の、50才ぐらいの身だしなみのパリっとした男のレジ打ち店員さん。

「何の許可ですか? 世界樹の樹液なら、王宮から買ってくださればぼくの許可はいりませんよ?」

「いや世界樹の樹液ならたくさん買わせてもらったけど、そうじゃないんだ! 家のばーちゃんがあるフェアリーとの交渉に成功してね、いや成功してしまったと言うべきか……」

「何したんですか?家のフェアリー」

「まあ奥で確認してください。ばーちゃん~!妖精使いのアルヴィン君きたからフェアリーの部屋に案内して~!」と左胸に付いた三角フラスコ型のブローチをおさえながら大声を出す、50才ぐらいの身だしなみのパリとした男のレジ打ち店員さん。

「ちょっと待ってね! 今全館放送で呼んだから!」

 待つこと10秒。

「呼んだかい?まーくん? ちーちゃんが言うには『妖精使いアルヴィンが、フェアリーの権利を守るために査察ささつに来た!』って言うんじゃけどの? 何か誤解があるんじゃないかいの~?」と90才ぐらいのおばあさんがレジの後ろの居住区きょじゅうく?から出てきて、ぼくと目が合った瞬間。

「アルヴィンのぼうや! しばらく見ない間に英雄化して大きくなったんじゃってな! わしは『アルヴィンのぼうやは出世する!』って家族に言っていたんじゃよ! 覚えておるかの~? この間アルヴィンのぼうやと話した時、ぼうやはこんなに小さかったんじゃがわしの事おぼえとるかいのう?」と言ってニコニコと嬉しそうに両手を上下縦に50センチの幅に広げる、90才ぐらいのおばあさん。

「まあ……それぐらいの大きさでしたね。 それはそうとおばあさんって錬金術師さんだったんですね」

「そうじゃよ?」

「それに建物の中や外のラクガキを消してないようですし、王宮に『妖精たちの描いたラクガキを消すな!』って言ってくれたんですね!」

「そうなんじゃよ!そしたらまあ『そこまで言うならばーさんの家のラクガキは消すなよな!』とか言われての! ご覧ごらんの通りじゃ!」

「それで何ですか、ぼくに許可をもらうことって?」

「大したことじゃないんじゃがな、ちーちゃんが許可をとれとれうるさくての。4日前にぼうやの家に行ったんじゃがその時は留守で『いつ帰ってくるかわからない』そうじゃから、『大した用ではないですからまた暇な時に顔を見に来ます』と言って来たのじゃがさすが軍隊!わしの事を特定して来てくれるとは!らくちんでいいのう!」

「いえ伝言とかはなかったですよ? 順番に家を回って妖精たちの後始末をして、ここが5件目です。それよりぼくの家族たちやメイドさんたち、この店に買い物に来ないんですか?」

「来とるよ? ぼうやの母親のソフィアさんは、結婚前にほれ薬をたくさん買って行ったかの~」

「ええ?」

「アルヴィン? 聞いちゃいけない事なんじゃない?」とフィリオーネ。

「そうだね!聞かなかったことにしよう!」

「大丈夫じゃよ? ほれ薬と言っても、結婚が決まった後にルークさんの同意のもとえんを結び付けて強化する薬を注文を受けてからそれぞれの髪の毛を少し提供してもらって作った無害なもんじゃ! えんを強化するだけじゃから、直接的に好きになるようなもんではないんじゃよ? まあ、仲良くなりやすくなることはそうなんじゃが」そう言って大人2人が並んで歩ける廊下ろうかからとびらなしで入れるリビングキッチン?の20人がけぐらいのテーブルの上に、1匹のフェアリーが大きな鳥かごにおさまった状態でケーキとジュースを飲み食いしていた。

「え?」近寄ってちかよって鳥かごのかんぬきをつまんで外して鳥かごのとびらを開いて中のフェアリーを見ると、不思議そうに見返される。

「え?」

「それで、許可の件なのじゃが?」

「許可なんて出すわけないじゃないですか! フェアリーはペットじゃないんですよ!」

「もちろんペットなんて思ってもいないんじゃよ? これは契約なんじゃ!」

「契約って……。キミ名前は? どんな契約したの?」と、鳥かごの中のフェアリーに聞いてみるぼく。

「あたし、クリーム! クリームの乗ったケーキが好きだから! 4日前に生まれたの! 鳥かごの中に入ってケーキを食べながらキッチンを見張って、他のフェアリーにキッチンは危ないよ!って教えるのが仕事なの! あたし、キッチンのハチミツで死にかけたから!」死にかけたとは思えない輝くような笑顔を向けてくる、フェアリーのクリーム。

「ええ? フェアリーがハチミツで死にかけるの? フィリオーネ、本当?」

「普通のハチミツでは死なないわよ? 毒入りだったんじゃない?」

「え? この家、毒入りのハチミツおいてるんですか?」

「毒入りのハチミツなんておいてないぞい」と90才ぐらいのおばあさん。

「いや、死にそうになったって言ってるじゃないですか!」

「ちーちゃんが言うには、『キッチンで見つけた時にはフェアリーがひっくり返ったハチミツの大ビンに顔を突っ込んでピクピクけいれんしていたから、流しで洗って口と鼻の中のハチミツを口で吸いだして息を吹き込んでチカン撃退用の電撃をおみまいしたら蘇生できた』と言っておったよ?」

「え? それはすいません、ご迷惑をおかけして。それで、ちーちゃんさんは今いますか?」

「おるよ? 今『妖精使いアルヴィンの心証しんしょうを良くする服装に着替え中』じゃよ?」

「なんでわざわざ着替える必要があるんですか?」

「ちーちゃんが言うには『よくわかっていないフェアリーをおおばあちゃんがだまして、奴隷どれい契約をむすんだ!』と言うことなんじゃが、ひどい言いがかりじゃと思わんか?」

「ぼくはちょっと、ちーちゃん派かな? それよりクリーム? なんでマ●ドライブしなかったの?」鳥かごの中のフェアリーのクリームに顔を向ける、ぼく。

「マナがなかったからだけど?」不思議そうにするクリーム。

「なんでマナがなかったの?」

「お姉さまたちにもらったドングリを入れるために、収納魔法を作ったからだよ?」

「ああ~~~~、どうにかならない?フィリオーネ?」

「無理ね! 悲しいけど宿命なの……」

「「そうね、宿命ね……」」と、フロレーテとリリオーネも悲しそうにしている。

 ちなみにちーちゃんは20才ぐらいの美女で胸の谷間と背中を大胆だいたんに見せた真っ赤なドレスを着て現れあらわれ、たくさんのケーキとクッキーとジュースをふるまってくれた。

 だからと言うわけではないが、フェアリーのクリームの事はようすを見ると言う結論けつろんになった。


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