第11話 幸運さをたくさん上げて、マナが多すぎることがばれる


 光の球から出ると森の中だった「ここが世界樹の下?」

「違うわよダンジョンの中には直接転移魔法で飛べないから、世界樹の影響範囲のダンジョンの少し手前よ!」とフィリオーネが教えてくれる。

「じゃあ、世界樹に出発!」とリリオーネが元気に言った。

「リリオーネもこっち来たんだ?」

「ドングリを探しにね!」

「そりゃそうか」

「2人とも転移魔法に後から飛び込むのは危ないのよ? 半分だけ転移している時に魔法が消えたら、身体が半分になって死んじゃうんだから!」

「「そうなの!あぶな!」」

「あたしも木の棒で実験しただけで正確な事は言えないけど、あたしの魔力の層よりも身体の中にある魔力の層が小さかったらそうなると思う」

「身体の中にある魔力の層が、フィリオーネよりも大きかったら?」

「身体にまとってる魔力の層も大きかったら、無傷でどっちかに落ちると思う。身体にまとってる魔力の層は小さかったら、その分のダメージを受けてどっちかに落ちると思う」

「今度から気をつけるね」

「そうして、じゃあまずは世界樹を見せてあげる! アルヴィンよつんばいになって!」

「はい……」素直によつんばいになる、ぼく。

 フィリオーネに釣り上げられて木の上まで上がっていくと、遠く離れた所に雲を突き抜けて伸びていてどれだけの高さかわからないここから見ても大きな木が生えていた。

「あれが世界樹」

「あたしの故郷から一番近い所にある世界樹ね」とフィリオーネ。

「あたしがドングリを探した世界樹よりも大きい?」とリリオーネが何かはっきりしない事をつぶやいた。

「あれも世界樹の種だったんだ?」

「そうよ!あたしが30年ぐらい世界樹の下でさがした、一番大きいドングリだったのよ!」とリリオーネがくやしそうにする。

「フィリオーネは運がよかったんだ? ちょっと下におろしてくれる、まずは必要になる魔法を習得しちゃうから」

 フィリオーネが下におろしてくれる。

「それはいいけど、新しい魔法たくさん習得して残りのマナは大丈夫なの?」とフィリオーネが不思議そうに聞いてくる。

「まだまだ、たくさんあるよ?」

「そう? 前世でマナを使ってなかったみたいだから、その分かな?」とフィリオーネが納得いかない風に言う。

「違うんじゃないかな? 前世では魔法使おうとしても使えなかったから、魔力の無い世界だったんじゃないかな」

「そう言う世界が絶対にないとは言い切れないけど、この世界では魔力は精神と肉体をくっ付けておくノリみたいなものだから、魔力を全部使い切ると死ぬのよ?」とフィリオーネが重大な事をサラッと言った。

「ちょっと!そう言う重大な事は最初に言ってよ! 今まで、何の制限もなしにホイホイ魔法使ってたんだよ?」

「大丈夫よ!魔力はノリみたいなものって言ったでしょ! 自分で全部使いつくす事なんて出来ないから! まず魔力の全体量が半分になると、魔力の層を身体にまとえなくなるし魔法が使えなくなるから!」とフィリオーネがまた重大な事をサラッと言う。

「え? 魔力の全体量が半分になると、魔力の層を身体にまとえなくなって魔法使えなくなるの? それも最初に言ってよ!」

「大丈夫よ!今まで見てたけど1割も使ってなかったから! 遠隔魔法使うようになって無駄に魔力を使うようになってから、自分の魔力を回収する魔法覚えればいいから!」

「そうなんだ? でも自分の魔力回収する魔法、覚えられるイメージわかないんだけど……」

「そうね、まず自分の魔力と他の魔力を区別して感知できるようにならないとね」

「そらそうか、魔力感知の魔法は覚えるつもりではあったけど、どの精度の魔法を習得するか先に確認しておいてよかった~~~。二度手間になる所だった。まずは魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法を覚えて、そのあとでマナがあまったら収納魔法おぼえようかな?」

「魔力を回収する魔法、習得しなくて好いの? それに幸運さ精密感知の魔法なんて覚える人いないよ?」

「魔力を回収する魔法はそんなにすぐに要らないかもしれないから、マナを消費しないでおぼえようと思うんだ。それにケサランパサラン魔法王国の軍人なら、幸運さ精密感知の魔法おぼえてる人結構いるんじゃないかな?」

「幸運さ精密感知の魔法、無駄だと思うけどな~~~」とフィリオーネが忠告する。

「まずは、魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法のイメージを固めて全身にありったけのマナを行き渡らせる! は! 習得成功! 次は魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法を発動して、マナを消費しないで収納魔法を覚えられないか試す!」魔力精密感知とマナ精密感知と幸運さ精密感知の魔法を発動すると、ぼんやり光っていた身体が淡く光を増した。その状態で自分の持っている2枚の身分証を出し入れして、観察する。収納魔法の物を収納しておく空間が少しわかってきたので、そこにさっきもらった支度金迷宮大金貨1枚(約百万円)を入れてみる……成功。今度は出してみる、成功。マナを消費する事もなく身体が光る事もなく、収納魔法習得!

「次は今の自分の幸運さを覚えておいて……ケサランパサラン魔法王国バンザイ!ケサランパサランバンザイ!」と言って200マナ(約40万円)ささげる。

「なに? また?」とフィリオーネがちょっとうんざりしている。

「びっくりするじゃない!」と言ってリリオーネが怒る。

「ごめんごめん! ちゃんと幸運さが上がるのか確認! ちゃんと上がるみたい! それはそうとフィリオーネと同じぐらいの幸運さにしときたいんだけど、フィリオーネの幸運さが分からないんだけど」

「あたしはいつも魔力の層をまとってその上で魔力の流れを内向きにして、気配を消しているからね! 今魔力の層をまとうのをやめるから……はい!どうぞ!」とフィリオーネが魔力の層をまとうのをやめ、両手を開いてにっこりする。

「ぼくよりずいぶん幸運さが高いのは分かるんだけど、どこまで高いのか分からない」

「今のアルヴィンがまとっている魔力の層で分かる所までしか分からないよ? 身体の表面に魔力の層をまとってなくても、身体の重要器官ほど魔力の層をたくさんまとっているからね!」

「じゃあてきとうに予測で、幸運さを上げてみるか……ケサランパサラン魔法王国バンザイ!ケサランパサランバンザイ!―(中略)―ケサランパサラン魔法王国バンザイ!ケサランパサランバンザイ!こんなもんか」40000マナ分(約8千万円分)の幸運さを上げると、それを待っていたフィリオーネが口を開く「アルヴィン……普通は上げられない幸運さを上げてみたい気持ちは分かるけど、そんなに幸運さを上げられるだけのマナがあったらいざと言う時にたくさん魔法おぼえられたのに……」

「幸運さって何かの役に立つの? 気休めじゃない?」とリリオーネも批判的な事を言う。

「フィリオーネはあの大きさのドングリ見つけるのに1年って言ってたけど、リリオーネは30年であれぐらいだったんだよ? 世界樹の下で1年間こもるとしても、フィリオーネと同じぐらいの幸運さは必要だよ! それにまだ、マナたくさんあるしね!」

「え? 前世の世界、魔法がなくて魔力の層を身体にまとう事もなかったんでしょ? それに魔法が使えない人間の寿命って50年ぐらいって聞いてるんだけど、いくら生まれつきの魔力が多くたってそんなにマナがたまるとは思えないんだけど……。やっぱり1000年ぐらい転生を繰り返したのかしら、何かマナが多すぎる理由に心当たりある?」とフィリオーネが前世関連の事を聞いてくる。

「さあ?」ぼくは出来るだけ何気なさをよそおって、しらばっくれる。

「つまり、心当たりがあるんだね! 何で隠すの! パートナーでしょ!」とフィリオーネが不信の目で見てくる。

「言うともっと頑張りなさいって、みんなに言われるようになるから言えない」とぼくは下を見ながら答える。

「そう、じゃあ仕方ないか。見逃してあげましょう!」とフィリオーネが、ぼくの肩に手を置いてにっこり笑って言った。

「ありがとうございますだ!」とぼくはへりくだってお礼を言う。

「ねえアルヴィン!なんでマナ多いの?」とリリオーネが追及の手を伸ばしてくる。


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