フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』をプレイしてみる。

庄野真由子

フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』をプレイしてみる。

私はフリーゲームが好きだ。

フリーゲームとは、アマチュアのゲーム制作者が、ゲーム制作ツール等を使って、自らシナリオやグラフィックを用意し『ゲーム』として完成させたものだ。

アマチュア制作、かつ無料公開なので、ゲーム制作においての制約は限りなく少なく『自由』だと言われている。


フリーゲームゲーム制作の期限はない。忙しければゲーム制作をやめていいし、ゲームを作りたくなったら作ればいい。

人気を欲さなければ、流行りのゲームを作らなくていい。

マイナーなゲームでも無料公開されていれば、フリーゲーム好きのプレイヤーの目に留まり、プレイされることもある。


私はフリーゲームを制作するわけではなく、ただ、フリーゲーム投稿サイトに公開されたゲームの中で、自分の好みに合いそうな作品をノートPCにDLして遊ぶ『プレイヤー』だ。

子どもの頃は、友達と一緒に商業ゲームで遊んでいたけれど、社会人になり、一人暮らしを始めて、しかも新型コロナが蔓延したせいで、一人で出来る趣味を探すことになった。


フリーゲームは一人プレイ用の作品がたくさんあるので、一人で遊びたい私には嬉しい。


「今日は、あんまり面白そうなゲームが無さそう……」


私はフリーゲーム投稿サイトの『新着ゲーム一覧』に目を通して呟く。

新着一覧を少し遡ってフリーゲームを探してみよう。

私が遊ぶゲームを探していると『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』というRPGが目に留まった。


RPGというのは『ロールプレイングゲーム』の略称で『役割を演じるゲーム』という意味らしい。

プレイヤーは主人公を操作して、ゲーム内のシナリオやイベントを辿り、敵と戦って、物語の『エンディング』を目指す。


「私、テンプレなRPG嫌いじゃないんだよね」


今日、遊ぶフリーゲームが見つかった。

私はフリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』をクリックしてゲームの紹介ページを確認する。


「めちゃくちゃ短い紹介文しか書いてないんですけど……」


私はそう呟きながら、フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』のゲームの紹介ページに目を通す。



プレイヤーは『勇者』となって、魔王を倒せ!!

魔王を倒せなければ、新たな『勇者』が召喚されます。



私はシンプル過ぎるゲームの紹介文を読み終えてフリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』のゲームデータのDLを開始した。

私、シンプルでテンプレなRPGは嫌いじゃない。


ゲームデータのDLを終え、データを解凍して、ゲームフォルダを見る。

フリーゲームをプレイする前には、ゲームデータに同梱されている『はじめにお読みください』または『read me』に目をとおすのが、マイルールだ。

フリーゲーム好きを自称するプレイヤーの中には『はじめにお読みください』または『read me』に書かれていることはだいたい同じと言って読み飛ばすこともあるみたいだけれど、私が読んだ内容は、皆それぞれに少しずつ違っていた。


「『はじめにお読みください』も『read me』のデータもない……」


『私を読んで!!』も『嫁』もない。

ゲームデータと、セーブデータフォルダがあるだけだ。


フリーゲームには、たまに『はじめにお読みください』または『read me』のデータが無い場合がある。

『はじめにお読みください』または『read me』にはゲーム制作者の著作権表記や、グラフィックデータを借りた場合の著作権表記、ゲーム動画を配信する際の注意事項等、ゲーム制作者がプレイヤーに伝えたいこと、伝えるべきことが記載されている。


でも、時々『はじめにお読みください』または『read me』がゲームデータに同梱されていないフリーゲームもある。

ゲーム制作者が『はじめにお読みください』または『read me』を制作し忘れたり、ゲームデータに同梱し忘れたりしたことが原因だと思う。


「ま、いっか。ゲームで遊ぼう」


私はゲームを起動した。

フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』のタイトル画面はシンプルで、黒い背景に白い文字で『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』と表示されている。

シンプルすぎる。でも、嫌いじゃない。

美麗なグラフィックを求めるプレイヤーからは、タイトルを見ただけで去られる素朴さ。でも、アマチュア制作なんだから、こういうフリーゲームがあってもいい。

私はゲームを始めようとして、手を止めた。


「『はじめから』が無い……?」


タイトル画面には『つづきから』『終わる』しかない。

おかしい。変だ。

いつも、私がプレイするフリーゲームには『はじめから』『オープニング』『NEW GAME』等の、新規プレイ用の項目があった。

初めてプレイするゲームなのに、なんで『つづきから』しか選べないの?

私は首を傾げていたが、ゲームフォルダにセーブデータフォルダがあったことを思い出した。

もしかしたら、ゲーム制作者がフリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』のテストプレイをして、セーブデータフォルダを削除し忘れたせいで『つづきから』しか選べないのかもしれない。

セーブデータフォルダを削除すれば『はじめから』を選べるようになるかも。


そう思いつつ、私は『つづきから』を選んでゲームを始めた。

だって自分以外のプレイヤーのゲームデータ、気になるんだもの……!!


ゲーム開始直後も黒画面。そして、ドット絵の男性キャラが一人いる。

フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』は男主人公のゲームのようだ。

私は女主人公のゲームが好きなので、少し残念だ。



『タケモト マサフミ の職業を選んでください』



画面下部のテキストウィンドウに記載された一文を読んで、私の気分が上がる。

ゲームの職業選択は楽しい。

『戦士』『魔法使い』『神官』『魔法使い』から選択するようだ。私は迷わず『神官』を選択した。

回復魔法が使えれば、とりあえずなんとかなる!! 敵は杖で殴ればいい。



『タケモト マサフミ の職業は 神官 になりました』


マサフミ「はあっ!? 神官!? なんだよ、それ……っ!?」



この男主人公はセリフを喋るタイプのようだ。

私は無口主人公の方が好きなんだけど。

とりあえずメニュー画面を開こう。セーブしなくちゃ。


「セーブが無い……?」


ノーセーブを強要するタイプの『プレイヤーに試練を与える』ゲーム制作者が作ったフリーゲームのようだ。

よろしい。挑戦を受けよう。

私は男主人公の『ステータス』を確認した。



タケモト マサフミ 男/15歳


レベル15 神官


体力 15/15 魔力 3/3


力 8


技 7


魔力 0(+3)


素早さ 4


運 3


使用可能魔法 ヒール(消費魔力1)


レベルアップに必要な経験値 15



初期の能力値設定としては適正なのだろうか?

私は男主人公の装備を確認した。



武器 木の杖

防具 中学校のジャージ

足 白い靴下

装飾品 なし



「ファンタジーな世界観に突然現れる現代テイスト……。このゲーム制作者は独創性を求めるタイプなのかも」


私は装備の確認を終え、男主人公を操作して、真っ暗闇の画面からの脱出を試みる。

こういう画面は下に動くと扉か光が漏れている部分にいきつくはずだ。テンプレRPGのお約束。嫌いじゃない。


私の予想通り、光が漏れている部分が見え、男主人公を光に触れさせるとゲーム画面が切り替わった。


最初は廃墟になった村から始まる。

村が襲われて廃墟になるのはファンタジーRPGあるあるだ。



マサフミ「ここどこだよ……。俺、部屋でゲームしてたはずなのに……」



この男主人公はよく喋る。作り込みはすごいけど、私にはうっとうしい。

廃墟の村を回って、アイテムを回収して、冒険を始めよう!!


……廃墟の村には粗悪な回復薬が1つしかなかった。しょぼい。

でも大丈夫。なぜなら、男主人公の職業は『神官』だから!!

私は男主人公の魔力の少なさから目を逸らし、意気揚々と最初のフィールドに繰り出した。


……男主人公、スライムとバトルして死んだんですけど。

弱い。弱すぎる。まさかファーストバトルで死ぬとかある?



『タケモト マサフミ は死亡しました。新たな勇者が召喚されます』


『セーブデータ更新中……』



「あー。ゲームオーバーだ」


このゲーム、セーブできないからこれでゲームは終わり。

つまんないゲームだった……。

フリーゲームにはこういう駄作もあるけど、でも、名作フリーゲームにも出会えるから、フリーゲーム探しはやめられない。


「コーヒー淹れよう」


私は、ゲーム画面をそのままにして、気分を変えるためにコーヒーを飲もうとして立ち上がる。



『セーブデータを更新しました。カナモリ マイ を新たな勇者として召喚します』



そこで、私の意識は途切れた。


……目を開けると真っ暗だった。

えっ? なに? 停電?

私、コーヒーを飲もうとしていたんだよね?


目が慣れるまで、じっとしていた方がいい?

それとも、ベッドの上に放り投げているスマホを取りに行くべき?

私が迷っていると、声が聞こえた。女の人の声……?


「カナモリ マイ の職業を選んでください」


「カナモリ マイ の職業は 戦士 になりました」


なんで私が『戦士』なの!?

この声はいったいなに……!?

気がつくと、私の手には剣が握られていた。

小学生6年生の時の修学旅行で男子生徒が買っていた木刀のような……。


「なんなのよ。この木刀、どこから出てきたの……?」


私がそう呟いた直後、足が勝手に動き始めた。

私は真っ暗な中を、迷いのない足取りで歩いていく。私の意志とは関係なく。

目の前に、光が見えてきた。私は光の中に進み、そして……。


【フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』をプレイしてみる。完】

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フリーゲーム『ファンタジーライフ 魔王を倒せ!!』をプレイしてみる。 庄野真由子 @mayukoshono

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