第25話 獅子のような滅びの獣 後半戦
高いところから飛び降り、膝を折って、両足で着地する。ようやくターゲットと対峙する。改めて大きいと感じる。郊外にある一軒家と同じぐらいの大きさだ。迫力も十分ある。敵だと互いに分かっているからこそだ。
「ぐるぉっ」
素直に獅子が襲い掛かって来た。左右に分かれる。私は右。カエウダーラは左。すぐに獲物に向かって走る。私はホルスターにある拳銃二丁を出す。元々拳銃でもレーザーの刃が付いているもので、接近戦でも切ったりすることが出来る。震えるような不思議な音を聞きながら、二丁拳銃を構える。
「せえい!」
カエウダーラが一足早かった。槍で前の左足の上部を刺す。素早く槍を引き抜き、獅子から離れる。私も負けまいとレーザーで前後の右足を切っていく。風圧を思わせる音で私は後退する。
「あっぶな」
尻尾二本で叩こうとしていた。現在進行形で尻尾による追撃をしている。伸縮自在なのが厄介だ。レーザーでスパッと切る。太い金属の紐のようなもので出血せず、動物の要素が薄い印象だ。
何ヶ所も切られたからか、獣は吠える。足を切ったので走る事が出来ない。それに気づいたら、どう動くのか。凝視する。獅子は眠るように丸くなる。そして薄くて光るドームに覆われる。
「うっそでしょ?」
拳銃で撃ってみたが、ヒビすら入っていない。これだけならまだ良かった。足が骨と血管から再生し始めている。これが原因で私は驚いているのだ。次に筋肉、最後に皮膚と毛が再生するだろう。二丁拳銃をホルスターに戻す。背負っていた狙撃銃で回復し終わった足を狙う。不安定な体勢だが、ここでやるしかない。
数秒後に三本の足が元通りになった。それと同時に一発に一本の足を撃っていく。背中よりやりやすいし、硬い毛皮の獣専用の銃弾なので、容易に傷を付けることが出来る。というかへし折っている。
カエウダーラは私が獲物の足を破壊したと同時に、跳躍して背中に乗り込む。その後、槍で首辺りを貫こうとする。流石に硬かったのか、槍を使う事を諦めたみたいだ。背負っている狙撃型のレーザー銃を構える。銃口を奴の首元に。
「うわー……」
確かに喉を潰してと伝えた。しかし実際に見てみると加減ゼロで撃っている感がある。光線を集束させた破壊兵器とも呼べるものなので頭と胴体を真っ二つに切断しているようなものだ。今まで以上に血が出血している。ぼーっとしている場合ではない。また回復というか、肉体の再生という現象が起きたら面倒だ。大声で大雑把な指示を出す。
「回復させないようにして! くっつけたら面倒!」
カエウダーラはレーザー銃を背負う。獅子の胴体から降りて、頭部を両手で掴む。一般的に二人で持つぐらいの重さだろう。カエウダーラは獅子の頭部を持ち上げる。腕が震えているが大丈夫なのだろうか。
「了解」
ムリに返事をしなくていい。
「しましたわ!」
おもいきり投げた。端から端まで投げている。相変わらずの馬鹿力だなと改めて思う。それではこちらは解体をやってしまおう。その前に面倒ごとになる前に、銃口を胴体の腹部に当てる。引き金を引いて、三発撃ち、マガジンを変える。また撃つわけではない。狙撃銃を背負い、しゃがみ、解体用のナイフで足を切っていく。パーツは遠いところに投げる。その繰り返しだ。
「ん?」
光ったなと思い、見上げる。薄い何かで覆われている。肉体が再生した時と同じものだ。定期的にやられると困るが、前より効果が薄くなっている。いや。この表現は正しくない。もう再生すら出来なくなっているのかもしれない。さあて。解体の続きを行っていこう。構造が気になるところだ。ざくざくと皮を剥いでいく。
「手伝いますわ」
大きいので時間がかかってしまう。カエウダーラが手伝ってくれるため、ピンク色の筋肉の塊までいけた。私が何発か撃ったせいで所々跡が残っている。そこからまた捌いていく。元の動物がいることもあってか、大差がないように思える。肉を粗方取ったら、骨が見えてきた。中に内蔵がある。もう面倒なので拳で砕いてやってしまう。粉々になったものは除外。内臓を一つずつ丁寧に分ける。
「今から報告しに行くから、あとはよろしく」
ある程度仕分けて、私は上にいる二人に報告しに行く。魔力が喰われることに警戒し、小道ではなく、大きい道にいた。
「その様子だと倒したみたいだね」
グロリーアの台詞に頷いて伝える。
「うん。一体目の獣の討伐を完了したよ。例の石は黒い奴でいいんだよね?」
「ああ。黒くて白い文字が刻まれている石だ。具体的にはこういう文字なんだけど。それを破壊して欲しい」
資料によると召喚する獣は核となるものがある。私達のターゲットも石を使っているのだそうで、グロリーアから渡された紙の文字がより具体的なものだろう。見た目が分かれば、あとはこちらで何とか出来る。
「了解」
というわけで再び飛び降りる。カエウダーラに伝えなければいけないのだが。
「カエウダーラ、えー……もうやってる」
怪しいと思ったのか、例の黒い石が砕かれていた。考察力が恐ろしい。相棒がやったからなのかは不明だが、肉や骨や内臓が消え始めている。召喚獣の討伐完了の合図だ。
「それじゃあ。あの二人の所に戻ろっか」
「ええ」
グロリーアとタファに報告。あとはアルムス王国のテレッサ村に戻って、待機をする形になると、この時は思っていた。
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