第三幕三話

俺らが騎士になってから一ヶ月、一度も戦争に行ってない。未だに訓練の段階で止まっている。エルフとの戦争はラグロ班長の『恩寵』が作戦みたいなものだから、チームワークとかは殆どいらない。つまり、俺らの実力が戦争に参加するのに足りないということだ。


「なあ、こんな訓練飽きてきたぞ、おら。」


「あーしもそろそろ、戦争に行ってみたいんですけどー。」


訓練は実力のあるものにとっては、かなり退屈なものになっている。だから、セレンやマイトの不満は溜まっていく一方だ。


「ミカエル、今日もやろうぜ。」


「よいぞ、我はいつでもいいのじゃ。」


マイトの『恩寵』の『爆破』で目くらましして……気づいた時にはミカエルがマイトの後ろに居て、肩に剣をおく。


「貴殿の負けじゃ。」


「クソがっ。」


マイトは毎日のようにミカエルに挑んで、負けて更にストレスを溜めている。誰とも関わらなさそうな性格に見えるが、この一ヶ月色んな人と関わりを持っていた。訓練なんかも文句を言いながら、真面目に受けている。


「何見てんだよ、てめえもぶっ飛ばすぞ。」


こんな風に俺は何故か嫌われているみたいだ。だが、こんなマイトでも大人しくなることがある。


「あなた、うるさいわよ。もう少し、静かにしてもらいたいわ。こんなにぴーぴー鳴くのはブタだけで、十分だわ。」


「わりぃ。」


そう、マイトはマリエッタだけには弱い。マリエッタに怒られたら黙りしょんぼりとしている。


「ほんとに分かってるのかしら、毎日このやり取りをしていたら、いい加減理解して欲しいものだわ。」


マリエッタはグチグチ言いながら、寮へと戻っていった。


「ねえ、ティナちゃん。今日、僕の部屋に来ないかい?」


「ヤダ。」


「そう言わ」


ローゼルイスの目の前をティナの足が空をきる。


「ヤダ。」


ローゼルイスは色んな女子に代わる代わる手を出しているが、ティナには断られたみたいだ。良かった……あと一秒、ティナが断るのが遅かったら、ローゼルイスの首を飛ばしている所だったぜ。


寮で寝る準備をしていると、部屋の扉がリズミカルにノックされた。この寮で俺を訪ねるやつなんて、ティナくらいだろう。仲良しこよしって感じには程遠いグループだ。


「はーい、鍵空いてるよ。」


鍵は本当は空いていなかったが、ベッドから立つのがめんどくさいから魔法で鍵を開けた。


「よ、ロージェン。あーしと楽しいことしようよ。」


ティナと思って部屋に入れたのは下着姿のセレンだった。そう、下着姿の。


「はよ、やろーよ。」


そう言いながら、セレンは下着を脱ごうとしている。


「おい、なんの目的だ?」


セレンが俺に惚れたってことは無いだろう。ただやりたいだけなら、他のグループの奴らとヤッタ方が気まずくならない。


「別に……あーしは強い奴とヤリたいだけ。」


「じゃあ、なんでミカエルじゃないんだ?」


「あれ、男か怪しいし。ローゼルイスはあっちはあっちで忙しそうだし、マイトは生理的に無理。 」


「なんでだ?」


「だから、今言っ」


「なんで、強い奴となんだ。」


流れでもっていこうとしているのがバレバレだ。強い奴とヤリたい理由があるのだろう。恐らく、弱い奴とヤッても意味がなかった理由が。


「はあ、なんでバレんの。あーしの『恩寵』の『性強』はヤッタ奴の八割と同じ魔力になるってやつなんだよね。この一ヶ月で分かったのはあんたの魔力が一番だということ。一年目じゃない騎士達よりもよっぽど魔力がある。化け物かよ。」


「なるほどね、だから俺だったってわけか。」


俺の魔力の多さはバレていたらしい。あまり、バレないようにしないとだな……。魔法が使えることまでバレたら大変だ。


「だから、あーしとしよう。」


その時、コンコンとノックの音がした。そして、俺が返事をする前にティナが鍵の空いた扉を開けて入ってきた。


「ねえ、ロー。どういう状況?」


「あーしと」


「黙って。あんたに用ない。」


ティナの目の圧がだんだん強くなる。セレンがまだ居るから、説明は簡単だった。どちらかと言えば、セレンを殺そうとするティナを止める方が大変だった。


「あーしも死にたくないから、ロージェンには手を出さないから。」


「当たり前。さっさ帰る。」


ティナに追い出されるようにして、セレンは帰って行った。


「ロー、ヤッタら許さないから。」


「もちろん、ヤル気もないから安心して。」


ティナの耳を撫でながら甘やかし、その後一緒に一晩過ごした。


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