第三幕一話

「お前ら、騎士検定試験合格おめでとう。今日からお前らは騎士だ。これから、戦争にどんどん利用していくがそれが運命だ。嫌なら帰れ。だが、残る奴らはこの戦争を終わらせる英雄達となれるだろう。俺はこの代で戦争に勝つと信じているからな。」


久々に見たサーティス騎士長は更に、強くなってそうだ。


「サーティス騎士長ありがとうございました。今年の騎士は対エルフ班です。これからは、対エルフ班のラグロ班長お願いします。」


この後、これからの方針や戦略など色々な話を聞かされていた。俺とティナは無事に騎士検定試験に合格した。俺は魔法を使えることを隠し、ティナはハーフであることを隠していた。これはヘスティアと最後に会った時にした約束だ。俺たちはもう、ヘスティアとは会わなくなっていた。





俺の十五歳の誕生日のこの日、俺とヘスティアとティナはいつもの場所で徹夜していた。時計の秒針の音を聞く度に待ち遠しく思ってしまう。


「十二時になりましたね。」


俺の視界を一つものが埋め尽くす。これが『恩寵』なのだと頭で理解した。


『氷結』


とだけ書かれていた。もう少しくらい、詳しい説明があってもいいと思うが、それ以上ではないだろう。


「『氷結』って、魔法で十分じゃない?」


「そんなことありませんよ。騎士になった後は魔法は中々使えないから、基本は『恩寵』で戦うしかありません。それに『氷結』が『恩寵』だと、魔法で氷を操ったりしても何も問題ないでしょう。」


なるほど……。


「私も今、『恩寵』分かった。」


「え?」


ティナは自分の誕生日を覚えていなかったようで、いつ『恩寵』が貰えるのかが分からずにいた。


「同じ誕生日だったんだ。びっくり。」


「びっくりって言うなら、もう少し驚いた顔をしろよ。」


平然としたティナを見て、こっちが驚いている。


「それで、どうでしたか?」


「なんか、空中を速度無制限で移動出来るっぽい。それ……」


「めっちゃ、凄いじゃん!」


サーティス騎士長とかよりも速く動けるのだろう。ティナの『恩寵』と比べると、自分の『恩寵』がしょぼく感じてしまった。


「それじゃあ、二人とも安心して優秀な騎士になれそうですね。だから、二人とはお別れです。」


「「え……。」」


どうして、そんな急に……。頭が事実に追いつかない。


「私にはまだ他にもやることがあるんですよ。だから、いつまでもここに居たら怒られてしまうのです。」


五年も一緒に居たのに俺はヘスティアのことを何も知らなかった。彼女が何者であるのかすら知らない。


「でも、どうしても私の助けが欲しい時は空にオレンジ色の炎を打ち上げてください。そしたら、いつでも助けに行きますよ。ティナはこれから、ロージェンの作った転移用の隠れ家に住んでください。」


「ん。」


「では、またいつか。」


それっきりヘスティアは姿を消してしまった。次の日に俺とティナが湖に尋ねてもヘスティアは居なかった。今でも沢山の建物が思い出だけを残して、湖に居座っている。





「それでは、各自騎士寮にお戻りください。」


騎士は戦地と内地の境目で暮らしている。一人部屋を与えられるが、他の人達と一緒に暮らさないといけない。


「ロー、一緒行こ。」


「オッケー。」


ティナは俺をローの呼ぶようになり、ヘスティアがいなくなってからかなり仲良くなった。


寮は十号棟まであり、試験の成績順に一号棟から八人ずつ振り分けられることになっている。俺とティナは一号棟に振り分けられている。俺とティナは二人で重い扉を押し開けた。


「おお。」


中は綺麗に整っていて、寮と言うよりも屋敷って感じだ。思っていたよりもかなり立派な待遇だ。


「一番乗りだぜ。」


後ろから、思いっきり扉を開けてガサツそうな男が入ってきた。


「チッ、一番乗りじゃねえじゃんかよ。お前ら、成績は何番だ?」


「二番」


「三番」


俺はバレない程度の魔法を駆使して、何とかティナに勝った。


「俺より、上の奴はおめえらかよ。一番はどこだ?」


競争心が強そうな奴だ。


「いや、知らないよ。」


「我じゃ。」


男か女か分からない人がガサツそうな男の後ろに居た。いつから居た……?


「てめ、いつから居た?」


「呼ばれたから、行っただけじゃ。」


な……てことは俺たちの目に追えないスピードで背後をとったということになる。獣族の血を持っているティナの目を盗むのは簡単じゃないだろう。


俺たちが呆気に取られている間にぞろぞろと人がやってきた。


「みんな、揃ったようじゃな。それでは自己紹介をするのじゃ。まずは、我からじゃ。我はミカエルじゃ、これからよろしく頼む。」


さっきのを見た俺らは中々断りにくい雰囲気がでていた。それに、味方のことは知っていた方がいいのだろう。


「俺はロージェンだ。」


「ティナ。」


「俺はマイト。てめらは、俺の足を引っ張んなよ。」


「私はマリエッタよ。これから、よろしく。」


「僕はローゼルイス。よろしくね。」


「あーしはセレン。」


「わ……私はみ……ミルフです。」


全員、とても簡潔な挨拶をした。こいつらが、トップ八ということはそれぞれとんでもない力を隠し持っているのだろう。誰からともなく、一旦みんな部屋に戻ろうとした。


「ミカエル。」


男部屋の方についてきたミカエルを見て、声をかける。


「お前、こっちじゃないだろ。」


「何を言っておるのじゃ。我は男じゃ。」


このテンプレ一度はやってみたかったんだよな。


「まあ、いいや。」


「おい、待つのじゃ。我を男と認めたのか?」


さて、どう答えるのが正解だろう。答えは勿論、認めていない。だが、この後がめんどくさくなりそうだ。


「まあ、認めたってことで。」


俺はそれだけ言い残して、部屋に戻った。部屋は一人で普通の家並の広さがあった。そこの端っこにベッドと机が置いてある。このただただ広い部屋を見て、優秀な騎士になったという実感を持てた。

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