第26話 卒業旅行?

ふと箕輪君に揶揄われたのを思い出しながら、キヨくんと別れて塾へ向かった。指定校推薦に応募するかどうかに関わらず、受験勉強をサボることは出来ない。それでもさっき話した内容に、心は浮き立つのを感じた。ああ、それを楽しみに勉強頑張れる気がする。



放課後キヨくんからのメッセージで、ひと足先に自習室を退出した僕たちは、駅前でバーガーを買って近くの公園で食べることにした。キヨくんとちゃんと話したのは朝以来で、僕はキヨくんと一緒に居たい気持ちが、どんどん強くなる気がした。


「一覧表見た?玲。玲は評定良いんだろう?箕輪が何か言ってたな。」


そう言うと、ガブリとバーガーに食らいついた。僕のひと口と随分違うキヨくんの食べっぷりに圧倒されて、僕は慌てて自分の買ったバーガーを食べた。



多分まだ成長期の僕の身体は、食べ始めると一気にお腹が空いていたのを自覚して、思わず無心でもぐもぐ食べ続けた。キヨくんが呆れたように僕の目の前で手を振って、僕はハッと顔を上げてキヨくんを見た。


キヨくんはクスクス笑いながら、僕の唇の端についたソースを指でゆっくりなぞると、その指をペロリと舐めた。僕は急に空気が薄くなった気がして、ドキドキして咽せてしまった。目の前に差し出された炭酸を慌てて飲むと、キヨくんが楽しそうに言った。



「…俺たちもっと際どいことしてるのに、玲は可愛い反応するな。」


そう言うと、うっそりと僕を見つめた。僕はもう、恥ずかしくて、居た堪れなくて、慌てて話題を変えた。


「あ、ねぇ!今日配られた指定校一覧、キヨくん行きたい大学あった?キヨくんも評定悪くないでしょ?」


すると、キヨくんはちょっと考え込んでボソッと言った。


「…ない事はないけど、俺国立狙って行こうかなって。理系で強いとこ。だから指定校は使わないかな?でも、そうなるとめちゃくちゃ遅くまで受験生やってないといけないんだよなぁ。…俺、玲と卒業旅行行きたいのにさ。」



そう言ってチラッと僕を見たキヨくんと目を合わせて、僕はドキドキして尋ねた。


「…卒業旅行?キヨくんと?」


キヨくんは凄く意味深な顔をして言った。


「ああ。玲と二人だけで温泉とか?行きたくない?」


僕は心臓がドクドク言いながらコクンと頷いてポツリと呟いた。



「…行きたい。二人だけ?」


僕は思わず楽しみ過ぎて、ニヤニヤしてしまったのかもしれない。キヨくんが大きくため息をついて僕の頬をつねって言った。


「まったく。そんな可愛い顔すると、チュウしたくなっちゃうだろ?こんな場所で無理なのに。玲って本当俺を煽るよなぁ。」





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