第19話 告白
鈴木君の、僕が男を好きなのかと言う問いに、僕は首を傾げて答えた。
「…どうなんだろ。僕にもそこら辺が分からないんだけど。好きになったら男だとか女だとか、そんな事どうでも良い気がして。あは、でも鈴木君みたいに女の子と付き合った事もないから、ハッキリした事は言えないけどね。
…でも、初めて人を好きになったから、この気持ちは大事にしたいと思ってるんだ。」
僕がそう答えると、僕の言葉をじっと聞いていた鈴木君は、ため息をついて言った。
「俺がくよくよ悩んでるところを、橘先輩は簡単に飛び越えていくんですね。そんな先輩だから、俺好きになったのかもしれないです。…失恋ついでに聞いても良いですか?その、先輩は好きな人と付き合ってるんですか?」
僕は一瞬で顔が熱くなったのを感じて、両手で頬を隠して呟いた。
「…た、たぶん?付き合ってる…かな?」
照れてしまって、そんな言い方しか出来なかった僕を見つめて、鈴木君は大きく伸びをして言った。
「あーあ、何か橘先輩を、そんな風に可愛くするその相手に嫉妬しちゃうな。もっと早く告白してたら、俺にもチャンスあったのかな…。」
そう言うと、スクっと立ち上がった。釣られる様に立った僕に向き合って、鈴木君は少し苦しげな表情で僕に手を差し出して言った。
「俺、先輩に告った事、後悔してませんから。こうして話してみて、やっぱり先輩の事好きだなって思うし。先輩、もし彼氏に酷いことされたら、直ぐに俺に連絡してくださいね。俺、チャンスは活かしたいタチなんで。」
僕は鈴木君の手をそっと握った。鈴木君は僕の手をぎゅっと握ると、にっこり笑って言った。
「まだ、先輩の事諦められませんけど、先輩の幸せを願ってます。」
そう言うと、踵を返して広場を出て行った。僕は鈴木君の後ろ姿を見つめながら、何だか急にキヨくんに会いたくなった。僕の大好きなキヨくんに抱きしめてもらいたくなった。
今日は会えない日なのに…。僕はぼんやり電車に揺られて家に帰り着くと、無意識に日課の受験勉強をした。母親に夕食に呼ばれるまで、時間の観念を失っていた事に気がつくくらいだった。
入浴を済ませて、ふと時計を見ると夜の10時だった。僕はスマホにポツポツとメッセージを打ち込んだ。直ぐにスマホが震えて、僕は慌てて部屋を飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます