カップルの定義

第11話 土曜日

「玲、明日は6時には私たち出掛けるから、昼まで寝てないのよ?お昼は冷凍ものもあるし、それが嫌ならハンバーガーでも食べに行ってね。」


僕がお風呂から上がって冷たいお茶を飲んでいると、母さんが色々言ってきた。僕は、そう言えばキヨくんを家に誘ったんだったと思い出して、念のために尋ねた。


「夜は何時ごろ帰ってくるの?」



母さんは、キッチンで片付けをしながら答えた。


「そうねえ、久しぶりに兄さんに会うから、夜ご飯食べて来ようと思ってるのよ。日付けが変わる前には戻るけど、大丈夫よね?」


僕は肩をすくめて言った。


「うん。全然大丈夫。文化祭も終わったし、受験も本腰入れなくちゃ。返って誰もいない方が捗りそう。あ、もしかしたらキヨくんと一緒に勉強するかも。」



僕が少し心臓をドキドキさせながらそう言うと、母さんはにっこり笑って言った。


「良かったわね、昔みたいに仲良しに戻れて。まったくどうして離れちゃったのか、母さん達ヤキモキしてたのよ?」


僕は余計な事をこれ以上言われない様に、苦笑いしてさっさと退場した。母さん達は、僕たちが違う種類の仲良しに移行しつつある事なんて、きっと想像もしてないんだろう。僕だってほんの二週間前は考えもしてなかったんだから。



部屋に戻ると、僕はマジマジと自室を見回した。キヨくんの部屋とは大違いだ。ベッドにはゲームのキャラクターの抱きぐるみがあるし、雑然とした小物が飾ってある。


僕はクローゼットからコンテナを引っ張り出すと、中に入っていたバランスボールを取り出した。空になったコンテナへ子供っぽい飾りやぬいぐるみなどをどんどん放り込んだ。それからウエットティッシュでざっと拭き掃除すると、何とか見られる部屋になった。



この部屋にキヨくんが来るなら、ベッドのシーツとかも変えた方が良いかも…。でも夜中にバタバタしてると、母さんに何言われるか分かんないな。僕は明日やろうと決めて、ベッドへとダイブした。


自分のベッドの匂いは、自分では臭いのかとかよく分からない。キヨくんの部屋のベッドは眠ってしまったくらい、キヨくんの匂いでいっぱいだった。てことは良い匂いだったはず。



キヨくんも僕の部屋に遊びに来て、変な匂いだって思わないといいな。でも何度も抱きしめられることを見ると、僕の匂いは嫌じゃ無いよね?僕は、その事を考えるだけでもドキドキしてくるのに、明日ちゃんと接待出来るんだろうか。


それに僕に話がしたいって言ってた。進学する大学の事?僕も出来ればキヨくんと同じ大学行きたいけど…。そんな事を考えながら、僕はすっかり眠ってしまって、起きたのはキヨくんからの電話だった。


ああ、僕ってほんと色々ダメだ!



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