第八三編 憂鬱な新学期
二週間強の冬休み期間が明け、憂鬱な新学期が始まった。
初日は休み明け恒例の始業式。校長のどうでもいい長話を聞き、担任から直近の簡単な
なお結局英語の課題を終わらせられず
「ったく、なにが天王山だ、その理屈なら今はまだ一年生なんだから別にいいじゃねえか……というか二週間しか休みがないのに課題が多過ぎンだよ……
「――さっきからブツブツと
そして始業式の翌日。早くも通常授業がスタートし、長期休暇に甘やかされた脳みそを酷使しながらも午前中の授業を乗り越え、ようやく訪れた昼休みの時間。
俺が焼きそばパンとレモンティーでエネルギーを補給しつつ文句を垂れ流していると、清流の
「学生の本分は勉強でしょう。他人同士の恋愛に
「うるせえな、
「…………」
「ねえガン無視しないで? 俺めっちゃ頑張って喋ってるよ?」
お嬢様のくせに紙パックのミルクティーなんて飲んでいる彼女は、格好をつけた言い回しをする俺を完全
「おーい」と、七海の顔と本の
「……まさかとは思うけれど貴方、また〝彼女〟のためになにかしていたの?」
「え? いや、トクベツそういうわけじゃねえけど」
無表情のままこちらを
〝彼女〟というのは
「……そう。けれど、それなら尚更課題に苦戦する意味が分からないわ。貴方はもう少し計画的に物事を進める癖を身に付けるべきよ」
「俺なりに計画立ててやってたっつーの。ただ年末年始は急に親戚の集まりが入ったり、バイトのシフトが入ったり、なんかイマイチ勉強する気にならなかったりして、計画通りに課題を進められなかっただけで」
「最後の一つは貴方次第じゃない」
「それでも、ホントだったら最終日に全部終わらせられたはずだったんだよ。なのに
「変な女?」
焼きそばパンを食い終えた俺は、一昨日の夕方にあった出来事を七海に話して聞かせた。
あれからというもの、背負い投げを綺麗に決められた俺は背中に残る
「それは単なる
俺の正当な言い分を一蹴し、お嬢様は続けた。
「――貴方も相変わらず愚かな
本を
「ストーカー気質の人間を相手に、
「うっ……」
たしかにその通りだ。
「……だけど」
瞳を伏せつつ、俺は言う。
「『守らなきゃ』って……そう思ったんだ」
あの子を。
「…………そういうところが、
「えっ?」
「――なんでもないわ。ただ、『守る』というならやり方が違うでしょう? 結果を論ずるとすれば貴方の行動は
「言いすぎだろ!」
なにもそこまで言わなくたっていいじゃないか!? 俺なりに桃華のためを思ってやったことなのに!?
「
「わ、分かったっつの……そりゃ俺だって、自分一人でなんでも出来るなんて思ってるわけじゃ――あっ」
「?」
ふと思い付いて、俺は七海の顔を見る。
「そうだ……俺には無理だったけど、出来る人もいるじゃねえか……!」
俺を投げ飛ばすどころかお姫様抱っこしてみせた人が、身近なところに。
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