第135話 【大会後・4】


 翌日、学園に少し早めに登校した俺は、同じく早めに登校してきたアリスと話し合いを始めた。


「アリス。ごめんな、こんな朝早くに学園に来て欲しいって頼んで」


「ううん。大丈夫だよ。それより、話って昨日の事だよね?」


 アリスはエルドさんから話を聞いているのか、呼び出された理由についてそう聞いて来た。

 俺はそんなアリスに対し頷き、「その事についてちょっと話がしたくて、早めに来て貰ったんだ」とアリスに伝えた。


「アリスも知ってると思うけど、今の学園で俺はかなり注目されてる。今朝もこんな早くに来たのに、かなり視線を集めていたのはアリスも気付いてたよね」


「うん。アルフ君の後に学園に来たけど、色んな所でアルフ君の話をしてる生徒を見かけた。あんなに注目されてたら、生活し辛いよね……」


「まあね……だから少しの間、学園から姿を消したいなと考えたんだよ」


 そう俺は改めて自分の考えをアリスに伝えた。


「私も昨日、お家に帰って考えたんだけど、私の我儘でアルフ君に我慢させるのは駄目だなって気づいたの……寂しいのは本当だけど」


「……アリス。もしかしてだけどさ、ずっと会えないと考えてない?」


「えっ、だって学園から居なくなるって事は、冒険者として活動するんじゃないの?」


「まあ、冒険者として活動もするとは思うけど、ずっと王都から居なくなる訳では無いよ。だから、会おうと思えば商会で会えるよ?」


 王都でも俺は有名になりつつはあるが、商会の中に居れば人の眼は気にしなくてもいい。

 少し冒険者活動で王都を離れたとしても、予定を決めて商会で皆と会う事はいつでもできる。


「……そ、それなら早く言ってよ! 私、ずっとアルフ君と会えなくなると思って色々と考えて今日来たんだよ!?」


「いや、まさかそう思ってるとは思わなくてさ……学園には来なくなるけど、王都から姿を消すとは言って無かったでしょ?」


「うっ、そ、それはそうだけど……」


「まあ、アリスの誤解もあったけど学園を暫く休む方向で動くよ。後で、一応リアン先生に伝えておくね」


 そう言うと、アリスはムッとした表情をして「知らないッ」とプイッと顔を逸らされてしまった。

 その後、皆が来るまでの間に俺はアリスを宥める事になった。


「成程、確かに最近の学園ではアルフ君の話題で持ちきりですからね……分かりました。また学園でアルフ君と会えることを先生は待ってますね」


「はい。一応、学園の事はアリス達に聞いたりするつもりですし、商会に基本的に俺は居るつもりなので何かありましたらご連絡下さい」


 あの後、朝の会が終わった後に先生に暫く学園を休む事を伝えた。

 リアン先生は学園での俺の話題について知っていた為、特に止める事も無く許可を出してくれた。

 そうして先生の許可も下りた俺は、教室に戻りアリス達に休む許可が下りた事を伝えた。


「そっか、アルフ君とは暫く学園では会えないんだね」


「うん。少しの期間で落ち着いたらいいんだけど、長引いても学年が変わる時には戻ってくるつもりではいるよ」


 そう俺はアリス達に伝えた後、その日は人の視線を無視して学園生活を楽しむ事に専念した。


「そうか、アリスは誤解していたのか」


 学園が終わり、アリス達を先に訓練場へと行かせて俺はエルドさんの部屋に向かい報告をした。


「伝え方が悪かったのもありますけど、商会で会えると分かったら許可を出してくれました。正直、学園に来れないだけでも嫌がるかなと思いましたけど、そこに関してはありませんでした」


「ふむ、レインとリサという友人も居るからそこに関してはアリス自身も成長しているみたいだな……それより、アルフは学園を休んでる間は何かしようか考えておるのか?」


「そうですね。一応、師匠と話し合って決めようと思いますけど、強くなる為にレベル上げはしようかなとは考えてます。後は普段通り、皆と訓練をしたりもするつもりですし、エルドさんが何か頼みがあるのでしたらそちらもやるつもりでは居ます」


 その後、報告を終えた俺は皆が待ってる訓練場へと行き、一緒に訓練をする事にした。

 そして訓練を終えて、皆を見送った俺は食堂で師匠とフローラさんと今後について話し合いを始めた。


「学園を休む権利を手に入れて直ぐに休むだなんて、アルフ君も中々の悪ね」


「今回に関しては仕方ないだろうな、学生だけでなく教師からも注目されたら俺だって逃げる事を選択する」


「注目される事ってそんなに嫌なの? 私は別に平気だけど?」


「性格の問題だ。俺やアルフは繊細なんだよ」


 平気だと言ったフローラさんに対し、師匠はそう言った。


「ふ~ん……まあ、アルフ君を教える時間が増えたのは師匠としては嬉しいわね。丁度、そろそろ私の謹慎も解けるみたいだし、一緒に迷宮に行くのはどうかしら? アルフ君が実際に戦ってる姿、私まだちゃんと見てないし」


「それは俺も勧めようと思っていた。レベル上げの続きもしようと思っていたから、次の迷宮探索は三人で行くか」


「あら、いつもは私の提案に反対するのにアッサリと了承するなんて珍しいわね? 何かあったの?」


「別に、ただ俺も思っていた案だったから乗っただけだ」


 師匠はフローラさんの言葉に真顔でそう言うと、次に行く予定の迷宮について教えてくれた。

 迷宮の名は〝墓所迷宮〟という名の迷宮で、迷宮の名の由来は迷宮が出来る以前にそこが墓があった場所だったからそう名付けられたらしい。


「ちなみに迷宮の名は墓所なだけあって、出て来る魔物は基本的にアンデット系の魔物で特に多いのはスケルトン種だ。ちなみに、一度に出て来る数もかなり多いからアルフのレベル上げには最適だぞ」


「確かにあの迷宮は、アルフ君のスキルの特性からしてレベル上げには最適ね」


 フローラさんも、師匠が提案した迷宮には賛成みたいだった。

 そうして、学園を休んで最初の予定は迷宮でレベル上げと決まった。

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