第127話 【学生大会・3】
その後、午前で4試合の集団戦が行われて個人戦に上がる生徒が決まった。
例年であれば、商人科からこんなに上がる事は無いらしく、会場では商人科から個人戦に上がった俺達が注目されているみたいだ。
「この後は一旦、お昼休憩を挟んで午後から個人戦が始まるんだよね?」
「そうだよ。その間に会場の整備をして、お昼休憩が終わって直ぐにくじ引きが行われて対戦相手を決める流れだね。僕としては、少しは活躍した姿を見せたいから一戦目からアルフ君とは当たりたくないかな」
「私も、出来るならアルフ君とは離れた場所がいいな~」
「わ、私も……流石にアルフ君相手に戦うってなったら、戦う前から棄権したいもん」
レインに続いて、リサとアリスはそう言って、話しを聞いていたレオルドとデイルも何度も頷いていた。
「正直、訓練期間を経て自分達が強くなったことは実感するけど、アルフの凄さも改めて認識したからね。アルフ相手に訓練の成果を見せようと思う気持ちは、今の所僕にも無いよ」
「え~、それだとかなりの高確率で俺の相手が棄権する事になるんだけど……」
「まあ、負けると分かっていても僕は棄権はしないよ。アルフの強さを実際に感じてみたいって、ちょっとした好奇心はあるからね」
レオルドはニヤッと笑みを浮かべて言うと、レインとデイルは「その気持ち分かる」と頷きながら言った。
「アルフに適わないって分かってるけど、挑戦はしてみたいかな」
「僕も同じだね。というか、王子の従者をしてるから強い相手だからといって、逃げ出したらそれだけで臆病な従者だと思われてしまうから、僕はアルフと戦う事になっても全力で挑むよ」
アリス達とは違い、レインとデイルは闘志を宿した目で俺の事を見ながらそう言った。
「そう言ってくれると嬉しいよ。俺も二人が全力で来るなら、ちゃんと全力で迎え撃つよ」
「……せめて5分は生き残りたいかな」
「……呆気なく終わりたくはないよね」
二人の闘志に応えるように、俺も全力で行くと言うと、二人は乾いた笑みを浮かべながらそう口にした。
その後、食事を済ませて少し休み、くじ引きの為に会場へと俺達は向かった。
集団戦でかなり目立った俺は観客からは勿論、他の個人戦に上がって来た生徒から視線を集めていた。
「アルフ君、かなりの人気者だね」
「ルクリア商会に所属してるから、変な奴は来ないとは思うけど……大会が終わったら、エルドさんに相談はしておいた方がいいな」
俺はそう愚痴を言いながら、くじ引きが開始され一番最初に俺が引く事になった。
そして俺が引いた番号は、個人戦の第一試合となる〝1番〟を引いた。
その後、アリスは俺とは正反対の16番を引き、レインは5番、リサは7番、レオルドは10番とそれぞれ一試合目は別れる形となっていった。
「まだ二番が残っていて、次が僕の番なんだけど……」
「デイル。まだ希望はある。自分の運を信じるんだ」
残り4組で、そのうちの一つが俺の対戦相手となる二番が残っている。
そしてデイルは自分の番となり、くじを引きに行き気合を入れてくじを引いた。
デイルが手にしたのは2番、ではなく隣の3番の枠だった。
「逃げたくはないけど、活躍せずに終わりたくなかったから良かった……」
「その気持ち、よく分かるよ」
デイルは安心した様子で戻って来てからそう言って、残り生徒達もくじを引いた。
くじ引きを終えると、一旦俺達は待合室へと戻る事になった。
「レオルド、さっき俺の対戦相手になった相手と話してたけど知り合いなの?」
待合室に戻る際、俺の対戦相手となって女性とレオルドとデイルは話しをしていた。
その女性は最終調整をする為か、今は待合室には居ないので俺はその女性と話していたレオルド達に相手が誰なのか聞く事にした。
「知ってるよ。彼女は、ヘレナ・フォン・アルベティス。デイルの婚約者だよ」
「……えっ、デイルって婚約してたの!?」
「あれ、言って無かったっけ? 彼女は年上だけど家同士が仲が良くて、小さい頃からよく遊んでいたんだよ。それで家同士も仲良いし、僕も彼女も仲が良いからって数年前に婚約したんだよ。結婚式には勿論、アルフ達も招待するよ」
そう俺は驚きの事実を知り、少し混乱していた俺は「お、おめでとう?」と取り合えずそう口にした。
「でも、そうなると全力で相手するのはなんだか気が引けるな……デイルの婚約者って強いの?」
「学園の中だと、トップクラスだよ。まあ、アルフには負けるけどね。でも、弱い訳じゃないから全力で相手してあげた方が彼女の為にもなると思うから、手加減はしないであげて欲しいかな」
「デイルがそう言うなら、手加減はしないけど……怪我だけはさせないように気を付けるよ」
そうして俺はデイルと約束をして、試合の時間となったので俺は待合室を出て会場に向かった。
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