第107話 【二人目の白金級冒険者・3】
そうして俺とフローラさんの準備を終えると、審判役は師匠が行い試合が始まった。
試合開始直後、先に動いたフローラさんは物凄いスピードで俺に接近して剣を振るった。
「へぇ~、アレン君があんな戯言を言うだけあって、そこそこの実力はあるみたいね」
「ありがとうございます」
その剣を受け止めたフローラさんは、俺を品定めするような視線でそう言った。
そこから戦い中に喋る事は無く、俺とフローラさんの戦いは続いた。
白金級冒険者であるフローラさんは、戦闘中に俺の強さを察し始めていて、最初は馬鹿にされて苛立っていたが今は落ち着いている。
最初の荒々しい剣技から、落ち着いたフローラさんの剣技は美しく強かった。
エリスさんから教わった剣術をそのまま扱ってる俺とは違い、フローラさんは自分の戦い方に合った剣術へと変えているのも分かった。
「そこまでだ!」
試合開始からどれ位経ったか分からないが、師匠のその言葉が訓練場に響くと、戦っていた俺とフローラさんは剣を止めてその場に座り込んだ。
「面白い試合を止めないでと言いたい所だけど……正直、今でも十分満足出来てるわ。こんなに楽しい戦いが出来たのは、久しぶりよ」
「だから言っただろ、アルフは強いから本気でやれって、お前最初俺の言葉を疑って抑えてただろ?」
「そりゃそうよ。これでも白金級冒険者としての誇りがあるもの、でも戦っていて気付いた。アレン君の弟子は強いって、だからちゃんと本気で戦ったわ」
フローラさんは師匠にそう言うと、俺を見て「強かったわよ」と笑みを浮かべてそう言った。
その後、地面に座ったままだと汚いからと、俺達は訓練場のベンチへと移動して、休憩をする事にした。
「それにしても、少し見ない内にまたアルフ君は強くなったみたいね。この一カ月間でどれ位成長したの?」
「まあ、エリスさんにはアルフのステータスを見せても良いとは思うが……」
師匠はそう言いながら、俺の隣に座ってるフローラさんを見た。
「私だけ仲間外れにするつもりなの、アレン君!」
「仲間外れって、本来他人にステータスを見せる事自体しない事だろ? アルフは俺の弟子で、エリスさんから剣術を教わってる剣術の弟子でもあるが、お前は違うだろ?」
「うっ! で、でもいいじゃない! 私だって、彼の強さを知りたい!」
フローラさんは絶対に俺のステータスを見ると言わんばかりに、俺の腕に抱き着き「見せるまで、離れない!」と叫んだ。
そんなフローラさんに対し師匠は、額に手を当て溜息を吐いた。
「師匠。フローラさんには別に見せても大丈夫ですよ。同じ、ルクリア商会の人間ならエルドさんの下で働く仲間ですし」
「……全く、アルフのその優しすぎるその性格は、いつか痛い目に合うぞ?」
「俺が甘いのは身内にだけですよ。これがフローラさんがエリスさんの弟子ではあるけど、ルクリア商会の人間じゃないなら警戒はしてますよ」
そこの区別は、俺なりにしているつもりではいる。
なのでちゃんと考えて行動していると、師匠に俺はそう言った。
「はぁ~……フローラ。先に言っておくが、アルフのステータスについては口外するなよ? もし誰かにバラしたって事がバレたら、エルドさんもお前には容赦しないからな」
「私もそこまで馬鹿じゃないわよ。アルフレッド君がエルドさんから、特別可愛がってもらってるのも知ってるわ。ルクリア商会の人間がそんな相手に、下手な真似はしない」
師匠はフローラさんと数秒間見つめ合うと、俺の方を向いて「アルフ、良いぞ」と言ったので俺はエリスさん達にステータスを見せた。
✤
名 前:アルフレッド
年 齢:16
種 族:ヒューマン
身 分:平民
性 別:男
レベル:120
筋 力:16578
魔 力:18457
敏 捷:14578
運 :91
スキル:【経験値固定:—】【剣術:10】 【属性魔法(9):—】
【魔力制御:10】【従魔:10】 【調理:10】
【指導:10】 【並列思考:10】【身体強化:10】
【信仰心:6】 【気配察知:10】【魔力探知:10】
【夜目:10】 【集中:10】 【冷静:10】
【認識阻害:10】【鑑定:10】 【体術:5】
【威圧:10】
加 護:Error
✤
✤
水属性魔法:10
土属性魔法:10
火属性魔法:10
風属性魔法:10
光属性魔法:10
氷属性魔法:10
炎属性魔法:10
岩属性魔法:10
雷属性魔法:10
✤
「また強くなってるわね」
エリスさんは俺のステータスを見ても、成長に対して褒めはするが驚きはしなかった。
しかし、初めて俺のステータスを見たフローラさんは驚いた表情をしていた。
「う、嘘でしょ。こんなスキルの量、初めて見たわよ! アレン君、彼は何でこんなスキルを沢山持ってるの!?」
「ステータスのスキル欄にある【経験値固定】というスキルの効果だ。このスキルは、行動に対して経験値が固定で手に入るといった効果を持つスキルとなっていて、そのスキルはスキル習得にも効果を及ぼす」
「ッ!? そ、そんなスキルがこの世に存在するなんて……って待って、スキルがって事はこの年齢に対して凄いレベルもそのスキルの効果なの?」
「そうだ。アルフの場合、例え相手がその辺で呑気に寝ているゴブリンだろうと、アルフはそいつらを100体。本気で戦えば、1レベル上がる」
師匠は質問をしたフローラさんに対し、俺の【経験値固定】の能力を伝えると、フローラさんは目をキラキラとせさて俺の方を見て来た。
「という事は、アルフレッド君はこれからもどんどん強くなるって事よね!」
「ああ、そうだが……お前まさかと思うが、アルフを自分の訓練相手にしようとは思って無いだろうな?」
「ええ、そうよ! だってこんな近くに強者が居るなら、成長に行き詰まってる私も次のステージに上がれるかも知れないわ! それにアルフレッド君も私と戦えば、良い経験になると思うわよ。これでも白金級冒険者の剣士の中では、トップクラスの実力を持ってるんだから色々と学べるところは多いと思うわ!」
先に自分の成長に繋がるからと言ったフローラさんだが、後者の経験は俺にとっては良い経験になるなとその言葉を聞いて俺は思った。
「まあ、それは私も思うわね。どうしても、私の場合は冒険者を引退して剣の実力が落ちてしまってるから、剣術を教える師匠としては私よりもフローラちゃんのが適任ではあるから知れないわ。アレン君はどう思う?」
「……性格はあれですけど、実力は確かにありますからね。取り合えず、フローラがアルフに剣を教えるかどうかはエルドさんに聞いてからですね」
そう師匠が言うと、エルドさんに決めて貰うために俺は師匠達と一緒に訓練場を出て、エルドさんの部屋に向かった。
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