第105話 【二人目の白金級冒険者・1】
冒険者活動を始めて一月が経過した。
最初の目的通り、この期間は色んな魔物と戦いを経験した。
「なんだか立った一カ月間でしたけど、王都に居たのが随分と懐かしく感じます」
「アルフはこんなに長く、王都から離れた事が無いからそう感じるんだと思うぞ」
「多分、そうだと思います。ルクリア商会に来てからもこんなに長く王都を離れた事が無いですし、貴族の頃も無かったです」
俺はそう言うと、隣に座っているウィルが「僕は本当に久しぶりに行くよ」と言った。
「そう言えば、ウィルっていつまでこっちに居れるの?」
「う~ん……まあ、暫くは滞在できるかな? 僕も一応、自国の学園に通ってるから休みが終わる前には帰らないと」
「……えっ、ウィルって学園に通ってるの?」
俺は衝撃の事実を知り、驚きながらそう聞いた。
「うん。言って無かったっけ?」
「聞いてなかった。えっ、でも俺を探す為にこっちの国で調査してたんだよね? その間は学園どうしてたの?」
「在籍扱いだよ。これでも優秀だからね。僕の通ってる学園は、成績優秀者かつ普段の授業態度が良ければ申請すれば長期休みを貰えるんだ。まあ、それに見合う成績をしてないと取れないんだけどね」
「ウィルって頭が良かったの? 知らなかったな」
昔、会っていた頃はそんな話はしなかったし、再会してもそういう話題にはならなかった。
「まあ、でもアルフに自慢できる程では無いけどね。聞いた話だと、かなり成績良いんでしょ?」
「それなりにはって感じだよ」
「ほ~、アルフは頭も良いのか? それは凄いな! 俺は、勉学が苦手て学園も初等部だけ通って、高等部には進学しなかったんだよな」
ダラムスさんは俺達の話を聞いていて、そう自分の過去の事を話した。
「進学しなかったって、成績が足りずに行けなかったの間違いじゃないか? 俺が知ってる情報と違うぞ?」
「い、良いだろ行かなかったのは事実なんだから!」
「少しでもよく見せようとするなよ……」
ダラムスさんの言葉に対し、師匠は呆れた様子でそう言った。
そうして王都へと戻って来ると、ダラムスさんとウィルは王城に用事があるらしく、そのまま王城の方へと去って行った。
「王城に用事って、ウィルが呼ばれた感じはしませんけど、ダラムスさんってこの国の王族とも知り合いなんですか?」
「あんなんでも、白金冒険者ではあるからな。それにダラムスの性格は、王族貴族に対してもあれだから、陛下とは仲が良いらしい」
「あ~、確かにダラムスさんの性格だと陛下も喜びそうですね……」
その後、俺と師匠は商会へと一月振りに戻って来て、まずはエルドさんの所に報告に向かった。
「経った一月でアルフの顔つきが変わったように見えるな……どんな魔物と戦って来たのか?」
そうエルドさんから聞かれた俺は、この一カ月間で戦った魔物達をエルドさんに伝えた。
その中でも一番強かったのは、俺の従魔のクロと種族は同じのレッドワイバーンとの戦いだ。
本当はワイバーンとは戦う予定は無かったのだが、別の魔物を探しに行った際に偶然出会ってしまい、戦闘をする事になってしまった。
その時は既にウィルとの連携も完成していた俺は、ウィルと協力してレッドワイバーンの討伐に成功した。
「凄いな、その歳でワイバーンの討伐を成功させるとは……アレンも成し遂げてないぞ?」
「はい。俺もこの話を聞いた時は驚きました。疑いはしませんでしたが、証拠のレッドワイバーンの死体を見せて貰って、本当にアルフ達は凄いなと感じましたね」
エルドさんは俺がレッドワイバーンを討伐した事に驚いており、師匠は頷きながらそう言った。
それから報告を終えた俺は、師匠とは商会の建物で別れて寮の自分の部屋に一旦戻って来た。
「一ヵ月振りの自分の部屋だ~」
師匠の家でもほぼ俺の部屋と化している客間があるが、やはり既に住み慣れてる寮の部屋に戻ってきた俺は、何となく安心感を感じた。
そして少しだけ椅子に座って休憩をした俺は、今日は移動だけしかしてないので体を動かそうと思い訓練場へとやって来た。
「あれ、見かけない人が訓練してる」
訓練場にやってくると、今まで商会で暮らしていて見た事のない女性が訓練場で剣を持って訓練をしていた。
貴族の様な綺麗な金色の長髪の髪に、蒼い瞳をしたその女性は真っ直ぐと剣先を見ていた。
俺はそんな女性の剣術を見ていると、後ろからエリスさんに声を掛けられた。
「ふふっ、アルフ君。彼女の剣技に見惚れてたでしょ?」
「えっ? あっ、はい。綺麗な剣術だなって、でもどことなくエリスさんから教わった剣術に似てるなとも思いました」
「それは多分、彼女の剣の師匠が私だからよ。フローラちゃん、訓練してる所悪いけど、ちょっと良いかしら?」
エリスさんがそう女性の名を呼ぶと、訓練に集中していた女性はエリスさんの声に反応して、剣を鞘に収めるとこっちに近づいて来た。
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