第102話 【冒険者活動・2】


 それから冒険者ギルドへとやってきた俺は、事前に決めていた依頼を受けて街の外へと出た。


「う~ん……やっぱり、移動用に馬とか借りた方が良いのかな?」


 昨日も歩きながら、考えていた事を俺はそう呟いた。

 依頼対象がいる場所は、街から少し離れている。

 その為、移動に時間が掛り昨日も戦闘する時間よりも、移動する時間の方が長かった。

 これから冒険者活動をしていくなら、この無駄な時間をどうやって解消するのか考えながら歩いた。


「……俺って、本当に馬鹿なんだな」


「そこまで落ち込まなくとも、良いと思うぞ?」


 あれから少し考えていた俺は、フェルガ達の存在を思い出した。

 基本的に人前にフェルガ達を出すと、騒ぎになってしまうが移動時に乗るくらいなら平気だと前に師匠と話していた。

 俺はその話をすっかりと忘れ、愚痴を言いながら歩いていた。


「それでこれからはどうするのだ? 我に乗り移動するのか?」


「そうしたいかな、移動時間が勿体ないからね。人が居ない場所に行けば問題ないし、仮に見つかっても従魔だから大丈夫だからね」


「ふむ……まあ、我としても最高の寝床を用意してくれたアルフに何か恩返しをしようと考えていた所だし、移動用の馬替わりとなってやるぞ」


「ありがとう。フェルガ」


 それからフェルガの背に乗った俺は、フェルガから落ちない様に毛をシッカリと掴んでるようにと言われた。


「最初はゆっくりでいいからね?」


「分かっておる」


 そうフェルガが言うと、優しく走り始めた。

 そうしてフェルガという移動手段を手に入れた俺は、予想よりも早くに目的地に到着した。

 今回、討伐する対象の魔物は一つ目の大きな魔物〝サイクロプス〟だ。


「そいつとはアルフだけが戦うのか? 我も手伝って良いなら手伝うぞ?」


「いや、師匠から俺は色んな魔物と戦闘して、経験を積んだ方がいいって言われてるから一人で戦うよ。気にしてくれて、ありがとね」


 そう俺はフェルガにお礼を言い、サイクロプスを探し始めた。

 それから10分もしない内に、サイクロプスを見つけた。

 今回は食事中とかでは無く、サイクロプスはその辺を歩いていた。


「他の魔物は……少し遠くに魔力を感じるが、この位の距離なら大丈夫だろう。よしっ、始めよう」


 魔物の気配が近くにないのが分かった俺は、早速戦闘を始めようと剣を抜き、サイクロプスに気付かれない様に近づいた。

 そして魔法の射程距離に近づいた俺は、気付かれないように魔法をサイクロプスの頭部を狙って放った。


「グゥッ!」


「かたっ!? ただ歩いていただけなのに、頭部はしっかりと強化してたのかッ」


 サイクロプスは目が弱点だから、戦闘中は基本的に魔法で強化している。

 だから俺は散歩中のサイクロプスなら、強化はしてないだろうと決めつけていたが、そんな事は無かった。


「グルァァァ!」


「弱点を狙われて、いきなり狂暴化かよっ!」


 サイクロプスは弱点である目を狙われると、一気に狂暴化するという特性を持っている。

 狂暴化すると理性を失い、暴れる怪物と化してしまう。


「落ち着くんだ。俺……多少、予定は狂ったが狂暴化したら動きは単純になるから、よく見極めて攻撃をするぞ」


 理性を失い暴れる怪物となったサイクロプスは、敵対対象である俺を見つけると叫びながら突っ込んできた。

 俺はそんなサイクロプスを近距離まで近づかせ、サッと横に避けて俺の後ろにあった大木にぶつけさせた。

 頑丈だとは言え、全力疾走していたサイクロプスは木にぶつかると、足元がフラついていた。


「よしっ、いまだッ!」


 フラフラしてるサイクロプスの弱点である目に向かって、俺は再び魔法を放った。

 今度は正面からの魔法で、強化されていたが俺の魔法は頭部を貫通し、サイクロプスは倒れ数秒後には息をしなくなった。


「久しぶりにアルフの戦いを見たが、かなり成長しておるようだな」


「まあ、フェルガ達と出会ってから大分経つからね。普段、フェルガ寝てばかりだから俺が迷宮で戦ってる姿は見てなかっただろ?」


「偶に見ておったぞ、ずっと寝ていても暇だからな。まあ、外に出るよりもあの異空間に居た方が居心地が良いから、声は掛けなかったが」


「そうだったのか」


 それから討伐したサイクロプスの死体を回収して、フェルガに乗って街へと戻る事にした。

 フェルガに乗ったまま街に行くと騒ぎになる為、街から少し離れた所でフェルガから降りて、街へと帰還した。


「あれ、アルフ君? 今日は早かったわね」


「はい。昨日は自分の足で移動してたんですけど、今日はフェルガに乗って移動したのでその分早く移動する事が出来たんです」


「あ~、そう言えばアルフ君には強い従魔が二匹いたわね。でも昨日は、使わなかったのは何か理由でもあったの?」


「いえ、単純に忘れてました。それで、今日どうしようかなって考えてた時に思い出して、協力してもらったんです」


 正直にそう伝えると、アンナさんはクスッと笑い「アルフ君って、ちょっと抜けてるんだね」と言われた。

 それからサイクロプス討伐の達成報告と死体の売却をした俺は、次の依頼を受けてもう一度街の人へと出た。

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