第83話 【騒動のその後・3】


 それから俺が部屋に入って30分程経った頃、部屋の扉をノックする音が聞こえ返事をすると、外からレオルドが入って来た。


「その様子だと、楽しくお喋りが出来たみたいだね」


「レオルド、ありがとう。こんな時間を作ってくれて」


「ありがとうございます。レオルド様」


「ふふっ、良いよ。丁度、今日は父上とエルドさんが話す日だったから、アルフ達に話す時間を作ってあげようって思いついただけだからね」


 レオルドはそう言いながら、俺達の向かい側のソファーに座った。


「クラリスちゃん、アルフのステータスを見た? 凄い事になってたでしょ?」


「はい。レオルド様から、兄さんは凄く強くなっているとは聞いていましたが。まさか、あれ程とは思いませんでした。レオルド様も兄さんのステータスは御覧になった事はあるのですか?」


「うん。国が動く前にアルフと話す時間があって、その時に見せて貰ったよ。元々、スキルが一つとは思えなかったよ」


 その言葉にクラリスも同じ意見なのか、頷いて「それは私もそう思いました」と言った。

 それから、レオルドも加わり三人で話をしていると、エルドさん達の話し合いが終わったと報告された。

 その報告を聞いた俺達は部屋から出て、エルドさん達が話し合っていた会議室へと行き。

 今日の用事も終わったので、帰宅する事になった。


「……えっ、何でクラリスが一緒に馬車に乗ってるの?」


 あの後、陛下とレオルドに見送られながら馬車に乗り込んだ俺は、隣に嬉しそうに乗っているクラリスを見てそう言った。


「んっ? クラリスはアルフに何も話してないのか?」


「あっ、他の事で頭がいっぱいでお伝えするの忘れてました。兄さん、これからは私もルクリア商会の一員なんだよ」


「……えっ?」


 クラリスの言葉に俺は、一瞬何を言われたのか分からずエルドさんの顔を見つめた。


「本当の事だ。今回の事件によって、ノルゼニア家は事実上の取り潰しとなって、アルフの妹は平民になってしまった。クラリスのステータスをアルフを見たなら、家名が取られてる事に気付かなかったか?」


「そう言えば、無かったですし、身分も〝平民〟となってました……」


「それでクラリスをどうするのか国と話し合って、アルフと一緒が一番良いだろうと決まってルクリア商会の一員に迎え入れる事になったんだ。まあ、儂としても優秀な魔法使いが増えるという事は嬉しな事だからな」


「陛下は最後まで、兄さんを国に渡して欲しいと言っていたらしいですよ」


 隣に座ってるクラリスは、ニコニコと笑みを浮かべながらそう言った。


「王としても優秀な魔法使いであるクラリスを手放すのは嫌みたいでな、中々話し合いは平行線のままだったんだ。最後は、クラリスとアルフを一緒に住まわせてやるのが良いと言って、諦めさせたんだ」


「そんな話し合いが行われていたんですね……全く知りませんでした」


「アルフには内緒にしておいたからな」


 エルドさんは、悪戯が成功した子供の様な表情をした。

 その後、商会へと帰宅して、クラリスの使う部屋に案内された。


「俺の隣ですか……」


「近い方が良いと思ってな、元々ここは空き部屋になる予定だったからな、少し時期を早めてクラリスの為に部屋を用意したんだ」


「だからここ数日、この部屋に住んでた方を見なかったんですね」


「うむ。あやつは隣街での仕事になってな、そっちで家を持つ事にして寮を出たんだ」


 エルドさんから事情を聞いた後、これからは兄妹の時間を過ごせばよいと言われて、エルドさんは去って行った。


「……えっと、取り合えずクラリス。これからよろしくね」


「はい! よろしくお願いします。兄さん」


 クラリスは満面の笑みを浮かべて、そう俺に言った。

 その後、クラリスに寮の説明をして、共有部分の施設を説明して回った。


「あら、アリスちゃんじゃない女の子を連れてるね? その子は誰なんだい」


 一通り商会を終え、丁度昼食の時間となったので食堂に来ると、食堂のおばちゃんからそんな事を聞かれた。


「妹のクラリスです。クラリス、この方達は食堂のおばちゃん達だよ」


「あら? その子が前に言ってた妹さんね。よろしくね~」


「クラリスです。よろしくお願いします」


 クラリスと食堂のおばちゃん達は、互いにそう挨拶をしてから料理を受け取り、席に座って食事を始めた。


「そう言えば、クラリスは商会で何をするの? 俺は一応、冒険者兼護衛的な事をしてるけど」


「今はまだ特に決まってないけど、商会の受付になるかも? 一応は貴族として礼儀作法を習ってるから、それを活かして受付を担当してもらえると助かるって言われたんだ」


「受付か、確かにクラリスは俺と喋る時以外は凄く礼儀正しいからね」


 普段は今みたいにどこにでもいる感じだが、礼儀正しいお嬢様を演じる事が出来る。

 それから食事を終えた後、クラリスは俺の剣術が見たいと言ったのでクラリスを連れて、訓練場へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る