第71話 【動き出す者達・3】
そうして俺は自分自身を許せず悶々としていると、部屋の扉をノックする音が聞こえ、外から一人の青年が入って来た。
「失礼します。父上、アルフが来たら私にも連絡が欲しいとお願いしていたのに、どうして連絡を頂けなかったのですか?」
「……忘れてた。すまん、レオルド」
「……国の事以外となると、途端に中途半端になるの止めてください」
その青年は溜息を吐きながらそう言うと、俺の方を見て来た。
レオルドって呼ばれてたけど、もしかしなくてもこの美青年が俺の知ってるレオルドなのか!?
「アルフ。久しぶりだな、また会えて嬉しいよ」
「や、やっぱりレオルドなの? えっ、大きくなりすぎじゃない?」
俺の友人であり、この国の王子レオルド・フォン・ベリアナ。
光に当たると輝く金色の髪に、透き通った蒼い瞳をしている美青年。
昔はこんなにも身長は無かったのに、見た感じ180後半位の身長をしている。
「ふっ、成長期で身長がグンッと伸びたんだよ。逆にアルフはあまり変わってないな」
そうレオルドは自慢気に言うと、スッと俺に手を差し出し、俺はその手を握り握手を交わした。
それからレオルドは陛下側のソファーに座り、話し合いに参加する事になった。
「アルフが落ち込んでるみたいですけど、父上はあの事をアルフに伝えたんですか?」
「うん。ノルゼニア家の事を気にしてたから話したよ」
「そうですか……アルフ。自分のせいでって思ってるだろうけど、それは違う。暗殺者を送ったのはノルゼニア家だから、アルフのせいなんかじゃない」
レオルドは俺が落ち込んでいる理由を知ると、そう俺に言った。
「だけど、俺がルクリア商会に行かなかったからこんな事にはならなかったでしょ」
「そうだとして。アルフは被害者な訳で自分を責める通理は無い。だって、アルフが悪い事をしたわけでもないんだから」
「そうだぞ。悪いのは全てノルゼニア家な訳で、アルフは何も悪くはない。だからそう気にするな、儂等もアルフのせいで迷惑だななんて思ったことは一度も無い」
そうエルドさん達から慰められた後、少しだけ気が張れた俺を見て陛下達は話し合いの続きをする事になった。
話し合いはかなり長時間行われ、自分の知らないノルゼニア家の事などもエルドさんと王家は調べつくしていた。
「15年間住んでいた自分の家が、まさかあそこまで悪い家だったなんて……」
話し合い終盤、それより先は俺達には話せないと陛下から言われ、俺とレオルドは会議室から出されて別室に移動して来た。
「まあ、アルフが知らないのは仕方ないとは思うけどね。かなり上手く隠していたみたいだから、アルフやクラリスは他家との交流も無いから調べるにも調べられなかっただろうからね」
「……クラリスの事が心配だな」
「ああ、その心配は大丈夫だよ。クラリスには僕の方から接触して、クラリスの周りには国が送った者達で秘密裏に守っているから」
「……え? それって、どういう事?」
クラリスの事が心配だと言うと、レオルドは突然そんな事を言い出した。
詳しく話を聞くと、国はノルゼニア家の事を調べ始めて、クラリスを味方に引き込み、クラリスの従者等を国が送った者達で固めたと言った。
「ちなみに送ったのは影の人達だから、そう簡単にやられたりはしない人達だから心配しなくて大丈夫だよ」
「影の人達って、そんな凄い人達をクラリスが!?」
影、それは王族にだけ仕える者達の呼び名。
実力と忠誠心を持つ者達で揃えられており、王族の剣であり盾でもある者達の事だ。
「いや、それなら安心だけど……よくクラリスの従者に送れたね」
「そこはまあ、かなり簡単だったよ? ノルゼニア家ってそういう面に関しては、そこまで堅くなかったってのもあるけど、クラリスがこっちの味方をしてくれたからね」
「内通者が居るからこそ出来た事って訳か……」
「そういう事だね」
レオルドはそう笑って言ったが、王族にだけ仕える〝影〟まで使われているなんてノルゼニア家は本当に終わったのかも知れないな……。
そう俺は心の中で思いながら、エルドさん達の話し合いが終わるまで待つ事にした。
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