第64話 【注目の的・4】


「クロ!」


 そのワイバーンと目が合った俺は、知ってるワイバーンの名を叫ぶと、その黒いワイバーンは地上に降りて来た。


「久しぶりだな。アレン、アルフ」


「久しぶり、クロ」


「久しぶりだな。お前がここまで出て来たって事は、新しい王は決まったのか?」


 師匠がそう聞くと、クロは頷き「少し前に決まった」と言った。


「本当は決まって直ぐにお主達の所に行こうと思ったが、我の姿を人間が見たら騒動になるだろ? だから、お主達が街から出て人が居ない所に来るのを待っていたんだ」


「そうか、約束はちゃんと守ったみたいだな。それで、クロは本当にアルフの従魔になるのか?」


「その方が我は楽しい気がするからな。それに暫く見ない内にまた強くなってるだろ? アレンより面白い人間なのは確実だ」


 クロはニヤッと歯を見せ笑いながらそう言い、俺はそんなクロに「これから、よろしく。クロ」と手を向けた。

 クロは俺の手に向かって頭を近づけると、そのまま俺の中から魔力がクロに行き、クロが俺の従魔になった感覚を感じた。


「これで我もアルフの従魔になったのか……アルフ。これからよろしくな」


「うん。よろしく、クロ」


 それからクロは、ずっと俺達が王都から出て来るのを待っていて寝ていなかったらしく、異空間に中に入ると直ぐに眠りについた。


「また戦力が上がりましたね。正直、フェルガとクロの二体だけでもかなり俺って安全じゃないですか?」


「街中で出せたらな、流石に街中でフェルガ達を連れ歩くのは無理だろ?」


「あっ、確かにそうですね。捕まったりしたら、その先でフェルガ達に助けてもらえますけど、それまでは自分の力でどうにかしないといけませんよね」


「そういう事だ。まあ、今回の迷宮での目標は30レベルを超える事だな。その位あれば、アルフのスキルとかの力も考えたら大体の事は対処できるだろう」


 レベル30だと、俺の今のレベルの倍か。

 15上げるとなると、単純計算でいうと1500体の魔物を狩らないといけない。

 俺に出来るだろうか? ……いや、やらないいけないんだ!

 少しだけ不安に思った俺は気合を入れ直し、移動を再開したので魔法の訓練も再開する事にした。

 それから特に何事も無く、もう直ぐ迷宮に到着しそうだと師匠は言った。


「ぬっ! なぜ、こやつが我の世界に居るんだ!?」


「わっ、びっくりした!」


「ッ! どうした。アルフ。何かあったのか?」


 急に脳内にフェルガの驚く声がして、俺が驚くと、驚いた俺に師匠も驚き馬車を止めた。


「す、すみません。フェルガが起きて、いつの間にかいたクロに驚いて、その声に驚いてしまいました……」


「そうだったか、というかフェルガは今の今まで寝てたのか?」


「はい。基本的にフェルガは寝てますから、クロと会った時も出てこなかったのは寝ていたからなんですよね」


「昔から、寝るのが好きな奴だったがアルフの従魔になってから更に悪化したみたいだな……」


 師匠は呆れた感じでフェルガの事を言うと、フェルガは突然人に出て来た。


「アルフ! 何故、奴が我と同じ空間に居るんだ!」


「そりゃ、従魔になったからに決まってるだろ? 前に話してたの覚えてるだろ?」


「だとしても、何故我が奴と同じ空間で寝ないといけないんだ! 即刻、異空間を分ける様に要求する!」


「異空間を分けるって、そんな事出来るのか?」


 フェルガの要望に対して俺がそう言うと、フェルガは「やれるかやれないか、試すんだ!」と詰め寄りながらそう言ってきた。

 全く、仕方ないな……。


「取り合えず、意識してやってみるから待ってて」


 フェルガに俺はそう言って、意識して異空間を分けてみようとした。

 すると、何となく出来た気がして、フェルガに異空間に戻ってみる様に言った。


「奴がおらん! よし、これで安心して寝れる」


 フェルガはそう言うと、そのまま静かになって眠りについた。


「どうだ? 無事に空間を分ける事が出来たのか?」


「はい。無事に出来ました。フェルガも安心して眠り始めました」


「さっきまで煩かったくせにもう寝たのか? マジで駄犬になってるな……」


 そう師匠は言った後、再び馬車を動かし始めて目的の迷宮に到着した。

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