第57話 【スキルについて・1】
学園に通い始めて数日、今日は学園が休みの日だ。
週の七日間の内、二日間連続で学園は休みとなるが、勉強したい人は学園の訓練場や自習室を使える。
俺の場合、寮の訓練場がある為、態々学園には行かずに寮の訓練場で学園に通う前にやっていたようなスケジュールで訓練をしている。
「アルフ。俺が居ない間も訓練を頑張っていたか?」
「師匠。お久しぶりです! ちゃんと、体を休めながら訓練してました!」
学園に通い始めてから師匠とは一度も会えてなかった俺は、久しぶりに師匠に会えて、少し興奮気味に挨拶をした。
師匠と出会ってから、こんなに会わなかったのは今回がはじめてだからな。
「そうかそうか、アルフが訓練をサボるとは思えないから無駄な質問だったな」
師匠はそう言うと、エルドさんから聞かれていたアリスの話を始めた。
「エルドさんから聞いたよ。アリスに魔法を教えてるんだろ?」
「はい。アリスも魔法が上手くなりたいと言っていて、教えられるのは俺くらいだと思ったので教える事にしたんです」
「それに関してはアルフには感謝だな。俺もアリスの能力については、エルドさんから軽く聞いていたから魔法をちゃんと教えてやりたいとは思っていたんだけど、俺は無理だったからな」
師匠は少し落ち込んだ様子でそう言うと、アリスのスキルが発現した話を始めた。
「それで俺も考えたんだが……やはり、思い当たるのはアルフの持ってる【経験値固定】だと俺は思う。アリスは成長系のスキルを持ってないし、一緒にアルフが訓練をしていたという点を見ると、アルフのスキルが何かしら効果を発動したんだろう」
「師匠もそう思いますよね。でも、【経験値固定】がどうアリスに作用したんでしょうか? これまで、師匠と一緒に訓練していた時もありすが、師匠は新しいスキルとか獲得はしてませんよね?」
「確かに、俺はスキルを獲得していない。だが、それは俺がアルフと一緒に居る時に、何かしらの訓練をしていた訳じゃないからだと俺は考えている。訓練もしていないのにスキルを獲得するのはおかしいからな、それでアリスの場合はアルフが魔法を教え、訓練をしていたからスキルが現れたんだと俺は思う」
師匠はそう言うと、今日はその検証をすると続けて行って、検証の為にフェルガも呼ぶように言われた。
「何故、我もなんだ?」
「検証するには多い方が良いからな、まずフェルガだが持ってないスキルがここで訓練出来そうなスキルはあるか?」
「そんな急に言われてもな……」
師匠からの言葉にフェルガは困った様子で、自分のステータスと見比べて訓練場で獲得できそうなスキルを話し合っていた。
そうして話し合いの結果、師匠達は【剣術】の訓練をする事になった。
「師匠は大丈夫だとして、フェルガはどうやって剣を扱うんですか?」
「口に咥えさせれば行けるだろう。昔、ウルフ系の従魔を扱ってる奴が居てそいつはウルフに武器を咥えさせて戦っていたから、フェルガも習得は可能だと思う」
師匠はそう言うが、フェルガは納得していなさそうだった。
それからスキル効果の為、俺が師匠とフェルガに【剣術】を教える事になった。
「いつも教わる側なのに、師匠に教えるってなんだか変な気分ですね……」
「剣に関してはアルフの方が知識はあるからな」
その後、俺は師匠とフェルガに剣の持ち方や間合いの詰め方等を教えながら、簡単な打ち合いから始めた。
人間である師匠は直ぐに感覚を掴み始めたが、四足歩行であるフェルガは剣の扱いが難しそうだった。
実際、俺自身が使ってるのが人用の剣術な為、フェルガに教えるというのがかなり無茶な気がする。
「う~ん。フェルガの体格だと、普通の片手剣だと〝短剣〟みたいになっちゃうな。大剣って、訓練道具にありましたっけ?」
「大剣はあまり使う人間が居ないから、訓練場には置いてなかった気がするな。寮の倉庫にもしかしたらあるかも知れないから、探しに行ってみるか?」
そう師匠に言われた俺は、フェルガを寮の中を歩かせる訳にはいかない為、フェルガだけ訓練場に残ってもらい俺と師匠で探しに行く事にした。
倉庫は訓練場から近い所にあるが、倉庫に入るには寮長かエルドさんが持ってる鍵じゃないといけないので、まずは寮長室に向かった。
「おや、アレン君にアルフ君。こんな時間にどうしたんだい?」
寮の全てを管理している寮長のローレンスさんは、俺と師匠が来た事に首を傾げながらそう聞いて来た。
「はい。実は、訓練用の大剣を探していて倉庫にないかなと思って、倉庫の鍵を借りに来ました」
「訓練用の大剣? 確かに倉庫にあるね。でも、大剣なんて何に使うのかい? アルフ君もアレン君も大剣は使えないだろ?」
ローレンスさんは俺と師匠が大剣を使えないのに、何で必要としているのか疑問に思ったようだ。
そんなローレンスさんに師匠は、事との経緯を説明してフェルガの為に体験が必要な事を伝えた。
話を聞いたローレンスさんは納得して、倉庫の鍵を貸してくれた。
「それと訓練用の大剣なら、入口から入って右手側の奥にあるから他の物は移動させたりしないでね。無くなったら、アルフ君達を疑わないといけなくなるから」
「えっ、場所知ってるんですか?」
「勿論、倉庫の管理も私の仕事だからね。後、訓練に大剣を使うなら、そのまま訓練場の方に大剣は保管していていいよ」
ローレンスさんはそう言った後、俺と師匠は部屋を出て倉庫に向かった。
「師匠。ローレンスさんって、エルドさんとほぼ同年代ですよね?」
「同年代というか、ローレンスさんはエルドさんの幼馴染らしいぞ。昔は凄腕の冒険者だったらしいが、怪我をしてしまって冒険者を引退してしまってその後にエルドさんが商会に誘ったって話を聞いた事がある」
「成程、エルドさんの幼馴染だからあんなに仲が良いんですね」
ローレンスさんとエルドさんが、楽し気に喋ってる姿をこれまで俺は何度も見た事がある。
幼馴染なら仲が良いのも頷ける。
それから俺と師匠は、倉庫に着いてローレンスさんに教えて貰った所に行くと訓練用の大剣が置かれていた。
俺と師匠は大剣を倉庫から持ち出し、鍵をローレンスさんの所に返してから訓練場へと戻って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます