第44話 【学園へ・4】


 休暇日の翌日、しっかりと休んだ事で体が休まったのかいつもよりも更に訓練に集中出来ている気がした。


「やっぱり、知らず知らずのうちに無理をしていたのかも知れないな。これからは、日付を見て休む日を作った方が良さそうだな」


「えっ、また昨日みたいに一日訓練禁止日をですか!?」


 午後の師匠との訓練の際、俺は昨日と同じ事をこれから実施されると聞いた俺は、驚いて聞き返した。


「そのつもりだけど、アルフのその反応からして嫌なのか?」


「その、訓練以外にする事が無くて暇になってしまうので……」


 師匠に俺はそう言って、昨日一日の過ごし方を報告した。

 それを聞いた師匠は、「訓練好きにも程があるだろ……」と呆れられ。

 取り合えず、今度もし休む日を作る場合は半日だけにすると約束してくれた。

 それから師匠と訓練をしていると、試験結果が商会に届いたと報告を受け、俺と師匠は結果が届いたエルドさんの仕事部屋に向かった。

 そしてエルドさんと師匠と一緒に結果を確認すると、合格と書類に書かれていた。


「合格おめでとう。アルフ」


「おめでとう。アルフ」


「ありがとうございます」


 一緒に書類を確認していたエルドさんと師匠は、合格した俺にお祝いの言葉を掛けてくれた。

 その後、合否の通知と一緒に送られてきた箱の中には、指定の服屋で制服を作るように書かれていた。


「あっ、このお店ってビビアンさんのお店ですよね?」


「うむ。学園の指定の中には、ビビアンの店も入っておるからそこで作ると良い」


 そうエルドさんから言われた後、エルドさんは直ぐに馬車を用意して、俺は久しぶりにビビアンさんのお店へとやって来た。


「あら、アルフ君にお爺ちゃんじゃない。今日はどうしたの?」


「アルフが学園に通う事になったから、制服の注文に来た」


「この時期に学園に入学って事は、特別入学試験を合格したの? アルフ君って、頭が良かったのね~。あら、でも前回採寸したばかりだし、連絡だけしてくれたら作れたわよ?」


「お前に服を見繕って貰ってから、アルフも成長している。前回のまま作ったら、直ぐにピチピチになるから新しい採寸をさせようと思って連れて来たんだ」


 エルドさんがそう言うと、ビビアンさんは「確かに、前回会った時よりも男らしくなってるわね……」と俺の事をジッと見つめてそう言った。

 その後、ビビアンさんに採寸をしてもらうと、前回来た時よりも筋肉がついてる事をビビアンさんに指摘された。


「こんな短期間でこんなに変わるって、ずっと訓練でもしていたのかしら?」


「そうですね。最近は、午前中は剣術と身体トレーニングをして、午後は魔法の訓練をしています」


「成程ね。それだったら、この短期間で体が変わるのも分かるわ~。でも、あまり無理しちゃ駄目よ?」


 ビビアンさんからもそう心配され、俺は「師匠からも同じような事を言われました」と言った。

 そうして採寸が終わり、制服は後日商会に届くと言われ。

 俺とエルドさんは、商会に戻る事にした。


「後は、制服が届けばアルフも学園に通う事になるな」


「そうですね。まさか、商会に所属してから学園に通う事になるとは思いませんでしたけど、アリスの事は任せてくださいね」


「うむ。アルフにしか出来ない事だからな、アリスの事はアルフに任せたぞ」


 そう俺はエルドさんから言われて、「はい!」と返事をした。

 その後、エルドさんとは別れて商会で待っていた師匠と合流して、もう一度訓練場へとやって来た。


「意外と採寸時間早かったな」


「はい。他にもお客さんが居たんですが、ビビアンさんが俺の事を優先してくれたんです」


「そうなのか……なあ、アルフはビビアンは苦手じゃないのか?」


「ビビアンさんですか? まあ、ちょっと見た目は驚きますけど良い人なのは分かりますから、苦手では無いですね。師匠は、苦手なんですか?」


 師匠の質問に答えながら、俺はそう聞き返すと。

 師匠は若干、顔を背けて「ちょっと、苦手なんだよな……」と言った。


「まあ、価値観は違いますからね。でも、ビビアンさんは悪い人じゃないですよ?」


「いや、そこは分かってるよ。俺も昔は世話になってたからな、ただなんかこう苦手なんだよな……」


 師匠もビビアンさんが悪い人じゃない事は理解しているみたいだが、それでも苦手意識があるみたいだ。

 だから、さっき採寸に行こうって話になった時、師匠は商会で待っていると言ったのか。

 師匠もなんだかんだ人なんだなと、その話を聞いて俺はそう思い、訓練を再開する事にした。

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