第42話 【学園へ・2】


 試験開始から数分が経ち、俺は順調に問題を解き進めている。

 エルドさん達に言われていたように、俺の学力だとこの試験は簡単で特に苦戦する所は無く。

 一つ一つ丁寧に説き進めて行った。


「……」


 そんな俺を、エリナさんは驚い表情で見つめていた。

 それから約20分程で全ての問題を解き終えた俺は、書き間違えやミスが無いか確認をして「終わりました」とエリナさんに伝えた。


「解く速さもそうだけど、確認もちゃんとしてこの時間で終わるなんて、エルド様が信頼してるだけの力はありそうね」


 エリナさんはそう言いながら解答用紙を回収して、一度エルドさん達が待っている部屋に戻る事になった。


「おっ、アルフ。戻って来たか、どうだった筆記試験の方は?」


「全部、問題は解いたので多分大丈夫だとは思います。もしかしたら、ミスってるかも知れませんけど」


 師匠の言葉に俺はそう返すと、今度は実技試験の為にエルドさん達も一緒に試験場所に向かった。

 試験は学園にある訓練場で行うみたいだ。

 今回、俺が受ける事になった実技試験は魔法試験となっている。


「魔法試験は、あっちに見える的に向かって魔法を放ち。威力、速度、精度を測る試験となっているわ。得意な魔法を使っていいわよ」


「分かりました」


 エリナさんからの説明を聞いた俺は、的から少し離れた所に立ち魔法の構築を始めた。

 そして指示をされた的に向かって、俺は一番得意な【属性魔法】である【水属性魔法】を放った。

 レベル上げ期間を経て、更にスキルレベルが上がり使いやすくなったその魔法は的に向かって一直線に向かい。

 的のど真ん中に着弾すると、大きな音と共に的を破壊した。


「……エルド様、アルフレッド君の実力は相当高いみたいですね」


「ここまで成長しておるとは、儂も知らなかったな。アレン、今のアルフの強さはどのくらいなんだ?」


「レベルだけで言えば、まだ駆け出し冒険者レベルですね。ただアルフの場合は、スキルの実力が高すぎるのでそれ込みで考えると、もうほぼ上級の冒険者と同等レベルの力を持ってますね」


 師匠の言葉を聞いたエルドさんは、「もうそんなに成長しているのか……」と驚いた顔をしていた。


「アルフは能力もそうですが、努力する力も持ってますからね。集中力も高いので、数年経てば俺を超える存在になりますよ」


「ほ~、アレンがそこまで言う程か」


「いやいや、師匠を超えるなんて俺には無理ですよ?」


 師匠の本当の実力は知らないが、魔法に対しての知識の量やフェルガ達と昔から知り合いという時点で実力がヤバい事は理解している。

 そんな人相手に数年で実力が追い付くなんて、現実的に無理だろう。


「アルフは自信が足りない所を治すべきだな。アルフの能力は、それを可能にする力があるのに自分で否定してたら駄目だろ? まあ、学園に通って周りの人間を見れば少しは自信が付くだろうけど」


 その後、魔法試験を終えた俺は師匠達とエレナさんに別れの挨拶を言って、学園から出る事にした。

 試験結果は後日、配達されるらしい。

 ただ今回の試験管は学園長であるエリナさんだった為、俺の試験を一通り見て「不合格になる方がおかしいレベルです」と言っていた。


「まあ、ほぼ入学は確定したと思えばいいな。よくやったな、アルフ」


「はい。これでエルドさんの頼みであるアリスと学園に通う事が出来そうです」


「うむ。アリスもこの事を報告したら、喜ぶだろうな」


 その後、学園から商会へと戻って来た俺は師匠達とは別れ、寮の訓練場へとやって来た。

 師匠からは試験結果が届くまでは、休んでいても良いと言われている。

 だけど、体を動かしたいと思った俺は訓練場で準備運動をした後、訓練用の木の剣を手に取り【剣術】の訓練を行う事にした。


「アルフ。一応、あの言葉は疲れてるだろうから休めって意味で言ったんだが……」


「えっ、そうだったんですか? 休んでいても良いって言われたので、じゃあ体動かそうかなと……」


 訓練を一通り行い夕食時に食堂に行くと、俺の訓練を見ていたのか師匠からそんな事を言われた。


「まあ、アルフが訓練馬鹿って事は薄々気付いていたが、試験を受けた日まで訓練をするとは思わなかったよ」


「中途半端に体を動かしていたので、しっかりと動かそうかなと……」


「まあ、悪い事じゃないから良いけど……。取り合えず、アルフにははっきりと言わないと伝わらないと思うから言うが。明日は訓練禁止でしっかりと休む事、体を休めるのも大事だからな」


 そう俺は師匠から言われて、明日一日は訓練禁止日となってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る