第2話 密室の出来事
は? はあああぁぁぁぁぁぁっっっっっっーー!?(大事なことなので二回言いました)
な、なんで!? ゆ、床で寝て……るわけないですよね!? え、ま、な……なんで!?
確かに今までも椅子で毛布にくるまって寝てたりソファーで毛布にくるまって寝てたりほんとに貴族のお嬢様なんですか? という感じの姿勢で寝てましたけど、床で毛布なしとか初めてですよね!? え!? た、倒れ!? い、今って冬ですよ!? だ、大丈夫ですか!?
とにもかくにも先生に駆け寄って床に手をつき声を掛けながら顔を覗き込むと、弱々しくも反応がありました。
ええっと確かこういうときは下手に動かさずにまずは意識があるかどうか確認……!
「せ、先生! デリシャです!」
「うぅ…………り、リーシャ?」
「せ、先生!? ど、どうしたんですか!? だ、大丈夫ですか!?」
その可愛らしい顔を苦痛に歪め、青い顔をして弱々しく呟く先生。
どこか怪我してる⁉ それとも何か病気とか⁉ あとは……まさか毒とか暗殺⁉ いやでも先生は凄腕の魔法使いですから、毒を盛るにしろ暗殺するにしろそう簡単にはいかないはず……そもそもこの《
「うぅぅ……」
っ! いや、今はそれよりも……!
「先生! とりあえず
この国では高貴な身分の方に許可なく
まずは先生の全身を確認します。着ているローブに裂けている部分はなさそうですし、血の匂いもしない……。ほんとはローブを脱がして外傷がないか確認したいけど、下手に動かすのも危ないし……。なら、目に魔力を込めて《魔力眼》で身体の魔力の流れを確認! 毒以外にも呪いのような、任意の相手を蝕む魔法もあると聞きましたが…………特に異常はなさそうです……!
次にローブの袖を少しめくって右手で脈を取ると、空いた左手で先生のおでこや頬にそっと触れる。
冷たいっ……! 顔色も普段よりは青白いし……脈拍もちょっと弱い……?
素人判断なので怪我か病気かはわかりませんが、とりあえず身体を温めて……もしも毒なら胃の中を空にしたり大量に水分を摂らせたりしたほうがいいはずですが、まずは主治医の方に連絡ですね!
そうと決まれば書斎なのになぜか常備されている毛布はどこかと周囲を探ると──執務机の前、部屋の中央に置かれている来客用のテーブルの上にティーポットとティーカップ、それと大皿が置かれていました。誰か来てた……? いや、今はそれよりも──来客用のテーブルを挟むように配置されているソファーの片隅に、いつもの毛布が置かれているのが目に映りました。
あった、毛布!
反射的に立ち上がって毛布を取りに走り出──そうとした瞬間、わたしの脳裏に、ある考えが
それでもまずは急いで毛布を取りに行ってから、静かに先生の側に膝を着き、落ち着いた声音で話しかけます。
「先生、とりあえず身体を温めましょう。毛布を掛けますよ? いいですね?」
少しだけ先生が頷いたような気がしますが、許可の返事を待たずに優しく毛布を掛けます。
「……先生。ひとつお聞きしたいのですが、どこか痛かったり違和感があったりしますか?」
「………………うぅ……、……お……お腹……が………………」
毛布の下でもぞもぞと先生の手がお腹を押さえるように動き、その美しく整った眉をハの字にして、儚げに、弱々しくか細い声で呟く美少女先生。
状況だけ見れば非常に危険な状態の可能性が高く、一刻も早く主治医の方に看ていただかなければならない状況です。にも関わらず、わたしの直感は、あることを告げています。このことを確認するのは、主治医さんにとっても有益なはずです。
不安と焦燥にかられる気持ちを強引に落ち着け、意を決して────先生に、この質問をします。
「……では、もうひとつお聞きします。昨日、夕食のデザートにとご用意させていただいた苺のケーキは────今、どこにありますか……?」
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