飯屋の娘に転生した現代人が、ただ特別な日をお祝いしたいだけのお話。
第1話 異世界のクリスマス
「「「お誕生日、おめでとう~」」」
みなさんどうも、前世は日本人、今世は二つの三つ編みお下げな栗色の髪と、好奇心に輝く飴色の瞳を持つ飯屋の娘、デリシャです。料理人を目指している八歳の女の子です(ぺこり)。
今日は十二月二十五日、同い年の従姉妹、シーちゃんことシエスタちゃんの九歳の誕生日なのです。
前世の世界では十二月二十五日といえばクリスマスですね。メリクリで〜す♪(雑なあいさつ)
実はですね、こちらの異世界でもなんと『
星夜祭について簡単に説明しますと、期間は前夜祭と後夜祭を含めた二十四日から二十六日までの三日間で、本祭である二十五日は成人(この国では十五歳です)済みの未婚の男女が、意中のお相手に告白したりプロポーズしたりする日で、星の綺麗な夜に想いが通じたカップルは幸せになれる、という言い伝えのある伝統行事です。ちなみに本日は雲一つない、とても綺麗な星空です。
で、です。それ以外の夫婦だったり未成年の子どもたちだったりは、家族で過ごしたりお友達同士でお祭りを楽しんだりするという…………うん? 現代日本のクリスマスと大差ないですね……。おかしい……世界は違うし起源も違うのに、行き着くところは同じという…………不思議ですね!(雑な感想)
それよりも今日はわたしの従姉妹、背中まである長い焦げ茶色の髪を一本の三つ編みにし、同じ色の優しそうな瞳をしたがんばり屋さんな女の子、シーちゃんの誕生日ということで、彼女のお家でお誕生会なのです!
……とはいいましても彼女のお家は『
特に年に一度の星夜祭ということで、普段の無色透明な灯りとは違い、赤や緑や白色に瞬く街灯(魔力灯といって電気ではなく魔力を動力とした照明で、使う魔力の属性によって簡単に色が変わります)によって、カラフルに彩られたお祭りムード全開のこの街は、どこのお店も繁忙期で大忙しです。
ですのでお誕生会といっても、お祝いをしていつもよりちょっと豪華な晩ごはんを食べるだけのささやかなものです。まあ、この世界の下町の子の誕生日なんてみんなこんな感じで、むしろお祝いしてもらえるだけで御の字なのが普通みたいなのですが。
わたしも昼間は魔法を習っている先生のお屋敷で授業の合間に家事をしていたので、いつもの紺色のメイド服風ワンピースとエプロン姿ですし、シーちゃんも若草色のワンピースにエプロンという普段のお手伝いの格好です。通常営業です。
わたしとシーちゃんは子どもなので本日はすでに終業しておりますが、彼女の両親である大将さんと女将さんも最初にお祝いしたあとは、普通に仕事に戻ってたまにここ(従業員用の食堂兼休憩室)に顔を出して会話して料理を摘まんでまた仕事に……っていう感じですし。
この宿木亭の料理長であるわたしのお父さんも、誕生会用の料理を並べたあとは宿屋の食堂も兼ねているお店の厨房に戻って、いつも通り絶賛お仕事中です。……完全にブラックです、本当にありがとうございました。……いえ、繁盛しているのは喜ばしいのですが、ブラックなのはよろしくないと思うのです……。
……ちなみに見た目高校生くらいの美少女で、おそらくは成人済みの独身で貴族であるのはずのわたしの先生は、今日もお屋敷に籠ってウッキウキで魔法の研究に没頭してました……(遠い目)。
確か貴族は貴族で家族でパーティーしたり夜会か何かでパーティーしたりするはずですが……よかったのでしょうか……?
ま、そんなこんなでこれがこの世界の普通なのはわかるのですが、現代日本の知識のあるわたしとしては、もうちょっと、こう……なんとかしたいな~、と思いまして。
というわけでわたしにできることといえばそう! 料理! を! がんばりました! …………料理長の、お父さんが!(知ってた)
……いや、だって、わたしも手伝いたかったんですよ! でもわたし基本
……ええ、それはわかります。その理屈はわかるのですが、それで納得するわたしではありません。
わたしだってシーちゃんに何かしてあげたい。お祝いしたい! だから考えました! 交渉しました! その結果が、こちらです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます