046 三人での探索
さて仕切り直しだ。
この階層はラムリスが言ったように様々なゴーレムが多く出現する。そしてボスもゴーレムだ。
こいつ等は基本的に石や金属などの個体が多いため武器を痛めやすく、ソードブレイカーとも呼ばれる。
攻撃魔法で最もポピュラーな炎の攻撃も効きにくく、俺の雷属性の魔法もそのまま地面に流れてしまって恐らく効かないだろう。
こいつ等を攻略して前に進んで行けるかが、中層冒険者となれるかの境目とも言われている。
ゴーレムには核とよばれる宝石のような石が表に組み込まれているため、こいつを破壊すると倒す事ができる。
そのため、核を確実に狙える技術が要求されてくる。ラムリスが前衛が多い方が良いと言ったのはこのためだ。
だが、最も安全な攻略法は弓などにより核を打ち抜く遠距離物理攻撃だったりする。
だから今回は、俺もリンメイも投擲をメインにして進んで行こうと思っている。ラキちゃんも投げる気満々だ。
嬉しい事に先日マジックバッグのウエストポーチを手に入れたので、アイアンニードルの針は山のように購入して持ってきている。
「とりあえずさっきの階段で休憩しながらマップの確認して、進む道決めようぜ」
「分かった」 「はーい」
今は
「結構深い所までマップができてんな」
「そうだな。えーっと、ここがこう行って……戻ってきて……残念、十四層に向かう階段までは流石に無いか」
「十三層のこの辺が怪しそうだな」
リンメイはおやつに持ってきたドーナツをモグモグしながら、十三層の空白の部分を指さした。
「それだと十二層のこの辺りに階段が無いと行けないね」
ラキちゃんもドーナツをモグモグしながら指差す。
「そうだね。じゃ、ひとまずここから十二層に降りたら、そっちに向かってみようか」
俺もドーナツの欠片を口に放り込み、結論を出す。
「「おっけー」」
十二層に降りると、まずはラキちゃんに魔法を使って迷路の構造を確認してもらう事に。
振動魔法の応用で分かるんだそうな。潜水艦のソナーみたいだね。
ただ、全方位に魔法を放つと情報量が多すぎて大変なので、その階層ごとに平面に限定して魔法を使う事にしている。
しかも方角を限定して、更に情報量を減らして負荷を減らすんだとか。
これは余りにもチートな気がするので、他の冒険者が居たら使わない事にしている。俺達だけの秘密だ。
まぁラキちゃんの存在そのものがチートなんだけどね。
ラキちゃんは早速魔法を発動すると、 カカカカッ と物凄い勢いでペンを走らせ、マップの空白部分を埋めて行く。
俺達にも分かるようにしてくれるためだ。
「うーん、こんな感じかな?」
「すげーな! サンキュー!」
「おぉー、凄い! ありがとう!」
「うふふ、どういたしましてっ」
早速ラキちゃんが埋めてくれた空白部分を確認し、進んで行く事にする。
先程の休憩中にラキちゃんが示した辺りに、やはり階段らしき物が確認されたから。
それと、短い行き止まりは宝箱があるかもしれないので覗いて行く事に。
壁や床がペリペリッと剥がれてゴーレムになったり、土魔法が発動した時のように土や砂、中には泥が固まってゴーレムになったりして襲い掛かってくる。
恰好は人型が多いが、たまにスライムのような液体っぽい奴だったり、四つ足の俊敏なタイプも現れる。
俺達は現れる度に投擲で核を狙い、打ち抜いて行っている。正直、投擲術の練習に持って来いな階層だった。
ドロップ品は魔石以外には、たまに鉱石の塊や宝石の原石を落とし、極稀に魔導石も落とす時がある。
普通だったら重くて嵩張るため持ち帰る品を厳選しないといけないが、今日は俺達だけなのでラキちゃんの亜空間収納に次々と入れさせてもらっている。
「こっちが短い距離で行き止まりのはずだから、ちょっと見に行ってみようぜ」
「了解だ」 「はーい」
少し進むと直ぐにゴーレムが現れたが、手堅く仕留めて進んで行く。
その先には……。
「あっ! 宝箱!」
「おおっ! やったな!」
「いいねいいね! んじゃ、あたいとおっさんで周囲の警戒するから、ラキ開けてくれるか?」
「はーい」
ラキちゃんが鍵を使って箱を開けると、中にはサークレットが入っていた。
ラキちゃんがしている認識阻害用の物と同様、それほど派手じゃないが、おしゃれなサークレットだっだ。
「おっ! ラキちゃんのサークレットに似た感じのだね」
「ラキのは極上品だから比べちゃダメだが、これもそこそこ良いな」
「ならリンメイ使うか?」
「いいのか?」
「「いいよー」」
「やった! ありがとっ!」
リンメイは早速宝箱から取り出し、自分のサイズに変化したサークレットを身に付けた。
「似合ってる似合ってる」
「リンメイお姉ちゃんステキだよー」
「そっ、そうか? へへっ」
これまで頭部の装備を何も付けていなかったリンメイはおしゃれなサークレットを装備してご満悦のようだ。
「そのサークレットはどんな効果が付いてるんだ?」
「えーっと、頭部全体を革の兜程度の保護してくれる」
「へぇー。そのサークレットが革の兜と同じって地味に凄いな」
「だろ?」
ダンジョンでもおしゃれに気を配りたい女性冒険者に人気そうな装備だなーと感心してしまった。
俺達は引き返し、階段へ向かって再び進んで行く。
それから二回ほど短い行き止まりを覗いたが、残念ながら宝箱は無かった。
一時間以上掛かっただろうか。漸く十三層へ下る階段へと辿り着いた。
「結構掛ったなー」
「かなり魔物と遭遇したからなあ。――どうだろう? ここで昼食にしないか?」
「「さんせー」」
早速俺達は階段付近でお昼の休憩をする事にした。
「投擲が結構ハマってるなー。なんかそのままボス行ってもいいんじゃないかって感じ」
「リンメイの氷魔法はこういう相手に相性ピッタリだったな。可動域を凍らせて手足の動きを止めてくれるから、核を狙い易かったよ」
「うんうん、四つ足のすばしっこいのも転んじゃってたもんね」
「あれ笑っちゃったな!」
俺の雷属性はイマイチだったが、リンメイの氷属性は今回とても効果的だった。
攻略の難易度が属性の違いだけでもこんなに変わってくるんだなと、今回つくづく思った。
一頻り休憩した後、再び探索を開始だ。
十三層に降りたら再びラキちゃんにマップの補完をお願いする。
「あっ、やっぱりこの階段から来ないと進めねーようになってたな」
「あー、ホントだ」
見ると、売られていたマップに記されていた幾つかの階段からは、今いる区間へはどこも繋がっていなかった。
「てことは、これだと十四層への階段までは結構近いな。早速行ってみようぜ」
「おう」 「いこいこー」
敵を倒しつつ暫く進んだら、リンメイの言う通り下り階段が見えてきた。
階段の辺りまで来たら、リンメイがスンスンと鼻を鳴らす。どうやら何かに気が付いたようだ。
「……ここにさっきまで、かなりの人数がいたっぽいな」
「そうなのか?」
「うん、五パーティ位はいたはずだ」
「そんなに!?」
あっ、たしかに俺の鼻でも薄っすらと煙草の残り香を感じ取る事ができた。
どうやらここで大所帯が休憩してたようだな。
「こいつらの匂い追ってけば、意外とあっさりボス部屋まで行けるかもしれねーな」
「でも沢山の人がいるなら、また順番待ちしそうだね」
「あー、そうだね」
「んー……待つのだりぃなあ。ちょっと寄り道していいか?」
「いいけど、どこへ?」
「丁度この階段のある部屋の裏側。そこの横道からぐるっと回れば、すぐ行き止まりなんだよ」
「宝箱か!」
「そそ。そっちに連中が行った形跡無いからさ、もしかしたら見落としてるかもなーと思って」
「「行こう行こう」」
俺達はいそいそと階段の部屋の裏手にある行き止まりに向かった。
なんとリンメイの読みは的中し、宝箱があるじゃないですか!
「ひゅー! やりぃ!」
「リンメイお姉ちゃんすごーい!」
「やったな!」
俺とリンメイは再び周囲の警戒に当たる。
「ラキ頼むぜっ!」
「りょーかーい!」
ラキちゃんが宝箱を開けると、今度はブーツだった。
俺の今使っているブーツは液面歩行の効果が付いていたから、これも何かしらあるのかと期待してしまう。
「……マジかよ……これ空中歩行が二歩ずつのレア品だ! ――あのさ……、続けてで悪いんだけど、このブーツもあたいが使っていいかな?」
「いいよー」
「いいぞー。前は俺がブーツ譲ってもらったしな。ラキちゃんは飛べるし、リンメイが活用するといいよ」
「うんうん」
「ありがとう!」
早速リンメイは宝箱から取り出し、履き替えてしまう。
そのブーツには刺繍のように羽根の意匠がされていて、女の子が履いても十分におしゃれなデザインだった。
リンメイはトントンと履き心地を確認した後ブーツに
まるでパントマイムを見ているようだ。
「「すごい!」」
「おもしれー!」
一旦着地し、数秒のクールタイムを待ったようだ。
今度は何も無い空間を壁があるかの如く蹴って跳躍し、クルクルッとバク転してみせた。
「「おおー!」」
リンメイの軽業に、思わずラキちゃんと二人でパチパチと拍手を送る。
凄いなこのブーツ。空中で方向転換できるって事じゃないか。
リンメイの才能と合わせれば、グンと戦闘の幅が広がる気がした。
寄り道して正解だったな。仲間が強化されていくのは自分の事のように嬉しい。
宝箱の中身に満足した俺達は再び階段の部屋まで戻り、十四層へ降りて行った。
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