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青白いシールドを纏ったリバーシスの正面を、オレンジ色の眩い光が導くように順に点滅している。
設置は成功した。リバーシスのコンピュータに救難信号をシンクロさせたため、シールドを張っていても、モニター上では信号の光が無事に映っている。
あとは数秒、あるいは数時間後に光が吸い込まれるだけ。
船の装甲越しにスロウストの濃度を感じる。覚悟のときが近づいている。
神妙なコルトを前に、ミィミィは不安げに声をかける。
「その、光が消えたらっていうのは理解できるけど、転移のタイミングはボクの判断でいいの? 地平面に入る前にやるかもしれないよ」
「ああ、わかってる」
コルトはミィミィを操縦席のそばに呼び寄せると、
「!」
彼女の手を取った。一瞬、声を漏らすミィミィだが、
「言葉なら迷うから強く握ったほうがわかりやすい。タイミングだってわかるし」
「あ……うん……ていうか、心のなかで言ってくれればいいのに」
ミィミィはしおれた返事をすると、帽子を深くかぶった。
「だとしても、不安でしょ。ちなみに俺は不安」
大気圏突入や離脱とはわけが違う。相手は未知なる存在で、成功するかどうかの確証もない。唯一の前例はコルトたちの両親だが、それさえ憶測だ。
「ひ、一つだけ言っておきたいことがあるの」
ミィミィがペンダントを握る手をもじもじ動かした。
「なに?」
「男の子に触れるの初めてだから……」
「いまこのタイミングで言う!?」
こっちは緊張で喉から心臓がでそうかもしれないのに!
「仕方ないじゃん、巫女は異性との触れ合いを禁じられてきたんだから」
自分より年上なのに、随分と
「うぅ、バカにして! コルトはどうなの」
「俺は――」
――不意に先頭の救難信号が途絶えた。流れるように二個目三個目も闇に消える。
一瞬ミィミィと目が合うが、瞬時に操縦席から見えるバリアを凝視。
その間、わずか一秒。
見えない壁が迫っているのが肌でわかる。
球体のシールドが剥がれる――それを瞳に移した瞬間、コルトの肩から指先にかけてシナプスが走る。指先は筋肉の刺激を受けてミィミィの細い指先を包み、きつく縛る。
ここだ。
心の声を聞いたミィミィが瞼を瞬時に閉じて、手の中に包んでいたペンダントに集中した。
リバーシスのシールドはみるみる剥がれ落ち、先頭にあったレーザー発射口が黒い壁に飲み込まれる。すぐさま前方の装甲が包みこまれ、軋んだ音を立てた。機械が放電するような怪しい音が聞こえた瞬間――
ミィミィの身体から放つ光に包まれた。
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