邂逅

1

 本題に入る前に、彼らが我々と異なる文化圏であることを明記しておく。

 何分、広大な宇宙だ。何億光年離れた世界を理解するには、申し訳ないがわずかの時間を割いてもらいたい。


 プレデュードは地球からおよそ一八メガパーセク(五九〇〇万光年)、おとめ座銀河団の中心である楕円銀河のM87。貴星ではウルトラマンで有名なこの銀河だが、その中心に太陽質量の六五億倍ある巨大ブラックホールが存在し、それは銀河全体を動かしていた。

 そこから一〇万光年離れた宙域。人類が誕生した星の一つである惑星シーズは、地球の二倍の面積をもちながら大陸は7%しかなかった(地球の大陸は30%である)。

大・中それぞれ一つの陸地をもつシーズは、基本的に島国気質で、陸地内での争いは少なく、大陸同士や小さな島々で協力し合った。四方海に囲まれた彼らは、地平線の向こう側を夢見ており、古くから船旅が盛んであった。

 そしてシーズ人は世界地図を形成。

だが、陸地や豊富な資源を夢見ていた彼らは、海しかない世界に絶望した。

このままで水に囲まれた生活で終わるのか。

否!!

いまだ冷めない夢をもつ彼らは、空の向こう――宇宙にある大陸を目指した。


 宇宙進出にあたり、最大の障壁となったのは資源だ。

 ただでさえ少ない陸地のため、建築用の資材は地表で使われることが多く、化石燃料も限られた。だが、ある科学者が水の底から鉄資源やエネルギー発掘。なかでもメタンハイドレートをはじめ、ガスエネルギーが豊富だと知り、潜水艇の技術が驀進し、それと並行してロケット開発も進化した。

 幾度の実験を終え、宇宙に出たシーズ人は、幸運にも近隣に二つの無人惑星を発見する。

 一つは鉄資源が豊富なタイル。もう一つがガス惑星スーズー。

 母星での資源採掘に難度のあるシーズ人は、両惑星での採掘のほうが早いと判断し、宇宙開発は加速した。鉄惑星タイルの植民地化と、ガス惑星スーズー用の外部コロニーの建設が行われ、それぞれ資源を手にした。


 かくしてシーズ人は、水・鉄・ガス(エネルギー)に特化し、各星から代表を選出。戦争が起きないよう三星協定を結び、持ち前の航海気質でさらに宇宙開拓を進めた。

 その後、シーズ人は自分たちの太陽以外に二つの太陽圏を発見するも、そこに人類の形跡はなかった。しかし、四つ目の、最も大きな太陽圏を探索したとき、歴史が大きく転換する。

 発見したのは、母星と相反する性質の惑星リリ。

 シーズの1,5倍の面積をもつリリ星は、太陽光に触れる面積が多く、七割が大陸であった。海面は星の南北に集中し、それ以外の水は地下から湧き出ていた。

だが、何より大事なのは、この星が有人惑星だったのである。

 リリ星は惑星コアが大きく(地球の五倍比)、地底からのエネルギーで植物などが育った。鉱石が豊富なのはもちろん、惑星コアが放出する核融合も影響もあって、リリ星人はそれを利用し地中で快適な生活を送っていた。彼らは宇宙に出て新たな生息地を探すより、星の恩恵を敬う原住民ネイチャーであった。

 外に希望を見出すシーズ人と、内にこもるリリ人の邂逅は、一触即発を予感させた。だが、惑星コアのエネルギーに常時触れているリリ人は、特別な能力を有し、シーズ人の願望を瞬時に理解、すぐに技術提供をはじめた。


 ――そして現在。

 宇宙国家が誕生して三〇〇年が経過し、混血のユユリタ三世が統治している。宇宙に住む大半はシーズ人だが、稀に研究のためリリ星からやって来ており、両者の垣根は少ない。食料は農業コロニーによって恒久的に収穫でき、資源による争いの火種はなかった。

 M87の銀河人は宇宙生活を謳歌していた。

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