第15話
ちょ、おい門番の人、ヒャッハーなボスをこっちに連れてくるんじゃない。
「ピザート家の方ですよね?こちらは、レントン商会から護衛を任された冒険者のパーシヴァルです。」
いやいやいやいや、突っ込みどころ満載だよっ!
まずは、レントン商会。
どうして、こんなの選んだ?えっ?私に含むところがあるの?屑宝石を貶されて怒ったの?
あとヒャッハーなボスっ!
なんだその名前はっ!聖杯の騎士とおんなじ名前って。
世紀末では、ヒャッハーな奴は、イヌ科の名前って決まってるんだよっ!
それが聖杯の騎士だと。
名前詐欺かっ!
ちなみに全然関係ないけどイヌ科ってネコ目(もく)なんだよね。
「C級冒険者のパーシヴァルさんですか?」
うちの家の兵士な人がそう言った。
「はい。本日はよろしくお願いいたします。」
丁寧な挨拶に、丁寧なお辞儀。
おいっ、ヒャッハーなボス、それやめろっ!
私を笑い殺しに来たのかっ!
ギャ、ギャップが有りすぎる・・・。
「ご高名は予予聞いております。」
兵士な人が丁寧に応対する。
高名って、C級冒険者って言ってなかった?
「所詮、C級程度ですので。」
ヒャッハーなボスが、謙遜する。
やめれ、それ・・・。
中身と入れ物が別物やんけ。
「いえ、パーシヴァルさんは、他の冒険者と違い王都を拠点としている方。遠くへ行かれない分、ランクも早々上がらないでしょう。」
へえ、そういうものなのか。
黄昏のソナタでは、冒険者の出番はそんなにない。というかモブだ。文字で出るくらいじゃね?
だから、この世界の冒険者っていうものが、どういうものなのかは、私はあまり詳しくなかった。
まあ・・・、興味が無かったと言えばそれまでだ。
私たちは、4人でレントン商会へ向かった。
商会へ着くと、店内に入るのは私とリリアーヌだけで、兵士な人とヒャッハーなボスは、別室で待機する事になった。
私は、宝石コーナーにあった一つの展示物に目が留まった。
分厚いガラスケースに覆われたネックレスタイプの胸飾り。
使われている宝石は、一流品とは言い難いが、デザインと細工が一級品。
何だ、これ・・・、宝石が違えば国宝級なんじゃね?
「さすがお嬢様、お目が高い。それに目が留まるとは。」
レントン商会の会頭が、出迎えた。
「ねえ、何でこれ、3級品の宝石を使っているの?」
「お嬢様のお考えの通りです。」
「なるほどね。でもこんな細かい細工が出来る職人が居るなら、宝石の加工も、もっとマシになるんじゃないの?」
「こちらは、ドワーフの職人の手によるものです。うちの専属ではありませんので。」
でた!ドワーフ!
まだ、会ったことないんだよね。
エルフ、ドワーフは異世界の定番。
是非、会ってみたいものだ。
まあエルフは・・・、多分エルフじゃないんだろうかっていう知り合いが居るから、まあいいんだけど。
「ドワーフの知り合いが居るのね。」
「うちの職人がドワーフの弟子でして。」
「へえ、凄いんじゃない?」
「たまたま弟子入り出来ただけで、本人の実力は、まだまだですよ。」
なかなか評価が厳しいな。謙遜してるっていう雰囲気ではないし。
「うちの職人に会われますか?」
「是非。」
ドワーフの事が聞けるなら、是が非でもない。
私とリリアーヌは、職人が居る工房へと案内してもらった。
工房と言っても、個人の部屋っていう感じで、中に居たのはリリアーヌくらいの年齢の女性だった。
「兄さん、そちらのお嬢様が、アウエリア様?」
「ああ、そうだ。粗相がないようにな。」
「会頭の妹さん?」
「お恥ずかしいですが、そうです。」
「何、恥ずかしいって?どういう事?私が師匠に貰った物を堂々と店に飾っておきながら、よく言えたわね。」
「うっ。」
ふむ、妹に頭が上がらない兄パターンか。
私は理解した。
「アウエリア様は私に任せて、兄さんはさっさと店に戻って頂戴。」
「い、いいか、くれぐれも粗相がないようにな。」
何度も念押しをして、会頭は、去っていった。
「さて、お嬢様。こちらの宝石を見てください。」
そう言って、黒い宝石台に乗せた宝石を差し出してきた。私は、ルーペを受け取ると、それらの宝石を見ていった。
「うーん・・・。」
全然だめだ。
「それが王都の、人間種のレベルですよ。」
「なるほど。もっと精度を出すには、ドワーフの力が必要ってわけね。」
「ええ、その通りです。」
「でも、あなたは、そのドワーフの弟子なんでしょう?」
「不肖の弟子なので。」
「ふーん。」
「お嬢様が満足するような宝石となりますと王室御用達の品になるでしょうね。」
「ふむ。まあ実際は、私はどうでもいいのよね。」
「お嬢様、お披露目会の時のアクセサリーです。どうでもいい物では、ありません。」
リリアーヌがキッパリと言い切った。
いやあ、お披露目会って言っても身内だけでしょ?適当でいいんじゃね?
私はそう思っているのだが・・・。
「アウエリア様、もしよろしければ宝石(いし)拾いに一緒に行きませんか?」
「石拾い?」
石拾って、何が楽しいんだ?
子供の遊びやんっ。
って、私は子供だった・・・。
「いしと言っても宝石の事です。」
「えっ、宝石って拾うの?採掘するんじゃないの?」
「宝石の採掘は禁止されています。採掘されるのは、鉄鉱石や金や銀ですね。」
「ふーん、で、何処で拾うの?」
「国が管理している鉱山で拾います。」
「鉱山に入って拾うだけ?」
「はい、落ちている物を拾うだけです。採掘道具は使えません。」
「へえ。」
面白そうではあるけど。
「私の師匠が採掘で、鉱山に入りますので、同じ宿をとる予定です。」
なんだとっ!
ドワーフに会えるっ!!
「行くわっ!」
私は即答した。
「駄目です。」
即座にリリアーヌに否定された・・・。
「な、なんで?」
「奥様から許可が出るとでも?」
「うっ・・・。」
「鉱山と言っても場所は王都内です。入鉱料を払って入りますから、ある程度の整備はされています。」
そう、丁寧に説明はしてくれたが。
お母様の説得か・・・、難問だ。
石拾いもやってみたいし、ドワーフにも会ってみたい。
しかしなあ・・・。
「いつ行くの?」
「2週間後になります。」
「わかったわ、家の許可が出れば、同行するわ。」
「楽しみにお待ちしております。」
私は、難問を抱えたまま、レントン商会を後にした。
「さて、メイン通りでも行ってみますか?」
ヒャッハーなボスが私に提案してきた。
「特に用はないんだけど?」
「屋台も出ていて楽しいですよ?」
「お金も無いし、普段からメイン通りは避けてるわ。」
「お嬢様、お金でしたらリリアーヌが持っていますよ?」
兵士な人が言った。
「えっ?」
「側仕えなら当然ですよ。だろ?リリアーヌ。」
「ええ、お金なら持っています。」
「ちょっ、今まで、そんな事言わなかったでしょ?」
「お嬢様、太りたいのですか?」
「うっ・・・。」
「教会でおやつを食べて、更に買い食いまでしたいと?」
「い、いえ・・・。」
私はリリアーヌに何も言えなくなった。
「今日は教会に行ったわけでないし、いいんじゃないか?」
兵士な人がリリアーヌに提案してくれた。
「まあ、いいでしょう。」
という事で、メイン通りに行く事になった。
一度、チラ見はした事はあったが、金がないと思っていたし、目の毒だからと近づかないようにしていた。
メイン通りには多くの人が居た。
まるで、祭りの様だ。
屋台も凄く出ている。
異世界で料理の道を極めるなら、ここに屋台を出せば儲かりそうだ。
「凄い人ね。何か催し物でもあるの?」
「いえ、これが王都の街の日常です。」
ヒャッハーなボスが答えてくれた。
すげえな、王都。
「お嬢様、何か買われますか?」
リリアーヌが聞いてきた。
「そうねえ、何かお薦めはあるかしら?」
ヒャッハーなボスに聞いてみた。
「そうですねえ、最近、人気なのはタコ焼きですかね。」
な、なんですとっ!
た、たこ焼きっ!!
まさか、異世界に存在するのか?まじでっ!?
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