ダンボール無双~実家を追放されたホームレスの俺が、後輩属性のダンボールの妖精に導かれて転生しました。前世知識を使って鬼畜ゲーム世界で英雄やってるけど質問ある?~
第38話ホームレスと皇帝が世界の今後を語り合う
第38話ホームレスと皇帝が世界の今後を語り合う
「それでは乾杯!」
「乾杯」
さわやかなカクテルが俺の口に広がる。ハーブの味によってさわやかなものになったそのカクテルは、強い度数と共に俺を心地よい気分にさせてくれる。
「良い飲みっぷりだ」
「両国の今後の友好を願ってですからね。陛下」
「それでこそ、異界の英雄だ」
だが、あまり酔いつぶれてはいけない。俺は試されているのだからな。
「それでは陛下。本題と行きましょう」
「うむ」
「さきほどの質問はあくまで会話のきっかけに過ぎないものでしょう。陛下の中では答えが出ているように聞こえました」
そう問い詰めると彼はふふっと笑う。
「ああ、私はニコライの状況分析を信頼している。キミは間違いなく異世界から来た男だろう」
「では、何を聞きたいのですか?」
「おそらく、お主はニコライをキミしか知り得ない知識と工夫によって破ったのだろう。ローザンブルクの最高傑作をまさか失うとは私も思っていなかった」
その言葉には悔恨がにじんでいる。
ああ、そうだ。前世知識がなければ、あんな怪物と正面からは戦えなかったはずだ。もちろん、妖精の加護も大きいんだが。
「そして、これからヴォルフスブルクはキミの知識を使って大きな発展を遂げるだろう。キミの頭脳はおそらく200年から300年以上先の未来を生きているのだからね。ローゼンブルクとしてはこれ以上、無理に争いたくはないよ」
よし、大陸最強の陸軍はこれで敵に回ることはなくなった。これは大きい前進だ。
「その言葉を聞けただけで、光栄に思います」
「これで東側の安全は確保されたというわけだな。ヴォルフスブルクは、覇権を目指して動き始めるのかな?」
「我が国は、国際秩序の安定を第一に考えております。覇権などは考えておりません」
「キミは教科書通りのコメントがうまい。実に素晴らしいキレモノだ」
「ありがたき幸せ」
「しかし、キミは大事なことを忘れているのではないかな?」
「大事なことですか?」
「まだ、思いつかないならいい。だが、キミの持つ知性は
「ご忠告ありがとうございます。気をつけます」
実際、キレモノが原因で破滅した国家は多い。気をつけなくてはいけないな。
「うむ。だが、キミのカクテルの注文でやりたいことはわかるよ。次は、南方のマッシリアを狙うのだろう。キミの手腕に期待しているよ」
※
そして、俺たちは王都へと
列の中盤で、俺はアルフレッドと女王陛下と一緒に豪華な場所に乗って移動していた。
王都の門には民衆が待ち構えていた。
『女王陛下が帰還されたぞ!!』
王都はお祭り騒ぎだった。人々は戦争の勝利に歓喜している。それも勝ったのは、列強国のひとつ・ローゼンブルク帝国だ。
いままで外交力だけでなんとか抑えていた大国を下したことで、積み重なった不満は一気に解消されたんだろう。
昼間なのにビールを片手にみんなが躍っていた。
『英雄たちの帰還だ!! みんな喜べ!』
『女王陛下は完全な勝利をもたらした!! まさに勝利の女神だ』
『それにアルフレッド将軍の指揮もすごかったよな。ワル―シャ攻防戦は歴史に残るぞ』
『でも、今回の最大の功労者はあの人だろう?』
『ほんとかな? あんな功績をひとりで作ったなんて!?』
『ニコライ=ローザンブルク中将を一騎討ちの末、討ち取った救国の英雄だぞ!? 失礼だろ!!』
『だってさ、すべての作戦をひとりで立案して、戦いが始まったら最前線で敵国の将軍を討ってくるなんて物語の世界の話じゃんか!』
『たぶん、王国首脳部が隠していた切り札だよ。歴史上最高クラスの魔導士だ。どこからともなく、オーラを感じるだろう?』
『ああ、きっと戦場ではもっとすごいんだろうな。俺たちみたいな能力も力もないやつなんて、目を合わせる前に吹き飛ばされてるぞ!?』
いつの間にか俺のうわさが広まっているような。
どんな怪物になっているんだろう……ちょっと不安だ。
「クニカズ? 皆があなたを見ていますよ。手くらい振ってあげなさい」
ウィリーは俺をからかうように笑う。
「こうか?」
テレビで見たことがある王族のように民衆に手を振った。
「ぎこちないな」
アルフレッドは脇で笑いをこらえていた。
「うるせぇ」
だが、観衆はそうは思わなかったようだ。
『おい、クニカズ中佐が笑いながら手を振ってくれたぞ!!』
『なんだ意外と気さくじゃねぇか』
『すげぇ優しそうな笑顔で、私ファンになっちゃうかも!!」
『あれですごい魔導士なのよね? もっと怖い人だと思ってたわ』
なんか芸能人みたいになってしまってすごく恥ずかしいです。
「ところで、俺の新しい役職なんだけど具体的に何をすればいいんだ?」
たしか、女王直属の軍事参議官室室長だったよな?
「そう、気取らなくても大丈夫よ。私のアドバイザーになって欲しいだけ。軍事参議官っていうのは引退した軍の長老たちが就任する役職で、女王を助言する仕事よ。ただ、必要あるときだけ招集するから滅多に長老たちは来ないし。事実上、クニカズだけが常駐している部屋の長ね。適宜、私に助言をくれればいいわ。あなたの持つ知性は軍事だけじゃなくて、いろんな分野に応用したいからね」
女王陛下は少しだけ顔を赤らめて笑う。アルフレッドはちょっとだけ苦笑していた。
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