①病院ビルの九尾ククリの棲家

子鹿白介

プロット

①病院ビルの九尾ククリの棲家(びょういんびるのくびくくりのいえ)


◯参考作品

中村 恵里加『ダブルブリッド』

水木しげる ゲゲゲの鬼太郎(原作漫画)より『朧車』

内藤泰弘『血界戦線』シリーズ

タツノコプロ『鴉 -KARAS-』

上海アリス幻樂団『東方Project』シリーズ



◯世界観

 舞台は現代日本。東京都ニシタマ市(西多摩地区をモチーフとする架空の市)全域は、妖気を帯びた雲≪怪奇雲≫に覆われていた。

 二年前に突如発生した怪奇雲はいまなお拡大を続け、その影響下では超常現象が発生し、魑魅魍魎が跋扈する。多くの市民が脱出していった。

 現代社会において存在が薄まっていた妖怪たちは怪奇雲のもとで力を取り戻し、街の主導権を乗っ取って独自の生活圏を形成していた。

 怪奇雲を操る妖狐≪九尾ククリ≫を打倒するため、日本政府と在日米軍は協力して〝ヨコタ基地奪還作戦〟を発動。吸血鬼でありクリーチャーハンターの≪エズラ・トゥエルヴ≫を送り込むのだった。



◯主要キャラクター

・九尾ククリ(くび・くくり)

 復活した大妖怪・九尾の狐。

 普段は亜人形態をとっており、外見は二十歳代後半。腰に一本の尾、頭には狐耳。口元からは鋭い犬歯が覗く。いつも赤い芋ジャージを着用し、腰丈の銀髪は寝癖つき放題。高身長で細マッチョ。性格は自分本位かつ姐御肌。声はハスキー。一人称は「あたし」。

 自らの妖術である≪怪奇雲≫を拡大し、全国を領地にすることを目的とする。反抗勢力は格闘と妖術でねじ伏せる。得物は自身と同じ名前のククリナイフ。ふかふかの尻尾から生成して、斬ってもよし投げてもよしの万能ナイフ。

 怪奇雲以外にも多彩な妖術を駆使する。姿を変える≪変化≫、人間の生命力を一部利用して怪奇雲を広げる≪狐憑き≫、妖気の炎を操る≪狐火≫、狐火を応用した防御技≪反応防御(リアクティブアーマー)≫や攻撃技≪狐狗狸の偽太陽(コックリサンファイア)≫など。

 ニシタマ市中心部にある白山ビルを根城にしている。白山ビルは医療テナントを集めたクリニックビルだったが、オーナーが敷地内の祠を壊し、封印されていたククリを解き放ってしまい乗っ取られた。

 大きな妖力を発揮する際、ククリは獣人形態や妖獣形態になる。隠していた尻尾もそれにより姿を現し、白銀の九尾をたなびかせる姿は禍々しくも神々しい。

 かつて人間とのあいだに子を成し育てたことがある。怪奇雲を拡大する本当の理由は、九尾の血をひく子孫を探すためだ。人間に情があるため人を殺しはしないが、ほかの物は平気で奪う。

 好きな食べ物は揚げ出し豆腐と餅巾着。


「あたしゃ骨のあるヤツが好きだよ。長く遊べるからね」

「奮え蛮刀! 我が力と名のもとに!」

「あの子が待ってる。……助けになってやろう」

「おまえは強い。忘れるんじゃないよ。自分がどれだけ速く走れて、高く跳べて、硬いものを噛み砕けて、遠くまで声が届くのかをさ」



・尾瀬瞳美(おぜ・ひとみ)

 十九歳の女性。高卒の非正規労働者。

 髪型は切りそろえたショート。身長は平均的だが頼りなげな体格。消極的な性格と、陰気っぽい印象のジト目が特徴。高校時代はクラスメイトに〝ジトミ〟とあだ名をつけてからかわれた。アクション映画が好き。一人称は「わたし」。

 ニシタマ市で生まれ育ったが、怪奇雲の発生により家族とともに埼玉県へ避難した。進学も決まらないまま混乱のなかで高校を卒業し、小さな不動産会社でアルバイトをする日々。将来の不安と、ぱっとしない自分への不満をいだいている。

 物語冒頭、怪奇雲の周辺で流行する〝九日咳ここのかぜき〟(ククリの妖術≪狐憑き≫の感染症状)に悩まされており、妖怪の血筋を引くことをククリに見出され、獣人〝ワーハイエナ〟として覚醒する。

 危険なクリーチャーとして警察に捕縛されかけたところをククリに助けられ、二年振りにニシタマ市へ舞い戻る。妖力を制御して人間の姿に戻る術を伝授してもらうことを交換条件に、ククリと敵の戦いに協力する羽目となる。

 獣人形態はブチハイエナとヒトの中間のような姿であり、強靭な手脚と顎を備える。独特な目つき、丸い耳、前に突き出したマズル、全身の被毛に加えてたてがみと尻尾がある。

 独りよがりで強引なククリに抵抗を感じるが、非日常の戦いを経て彼女に惹かれていく。

 好きな食べ物はボリューミーなハンバーガーやホットドッグ。


「困ります困ります! 元の体に戻してください!」

「戦ったことなんて、わたしありません……!」

「その子のために、ククリさんは戦ってるの……?」

「――逃げません。あなたを手伝います。がうーッ!」



・木児ムナシ(きじ・むなし)

 沖縄から米軍機でやってきた妖怪・キジムナー。九尾ククリの一番弟子。

 見かけは人間の子供で十代半ば、性別不詳。身長は瞳美より少し低い。褐色の肌、赤茶色のぼさぼさ頭。服装は大きめサイズのオーバーオール。さらしを胸から腹にかけて巻いている。一人称は「おれ」。

 ケンカっ早いが素直な性格。怪奇雲の騒ぎが勃発した当初、ヨコタ基地行きの米軍機に忍び込んでニシタマ市を訪れ、ククリに弟子入りした。ずぼらなククリの身の回りの世話を焼く。

 主な得物は米軍から盗み、改造した装備品。最も愛用するのは二挺の銃剣付き短銃身セミオートショットガン≪タクティカル双天≫。ガンベルトの左右腰ホルスターに一挺ずつ提げ、散弾やスラグ弾を使い分けて使用する。他、各種銃火器の使用にも精通する。

 突然連れて来られた瞳美のことは戦力として疑問視するが、街に残る住人たちと交流して不足しがちな物資を入手したり、根気強く修行して能力を開花させる彼女を見て「使えるヤツ」と認め、打ち解けていく。

 ニシタマ市内に残された野良猫の面倒を見ている。

 好きな食べ物は麺類。白山ビルでは鍋焼きうどんなどを好んでつくる。


「ワーハイエナ〜……? 犬コロだったらお断りだぜ、新入りちゃん」

「ああーもう! 血まみれのジャージで布団に入るなし!」

「夢に出てきたひいひいひいひい孫だかを、ククリは助けてやりたいんだってよ。馬っ鹿みたいだよなぁ」

「銀の弾なんてここにゃあないんだ! あんたがトドメを刺すんだよ!」



・エズラ・トゥエルヴ

 米軍に使役されるクリーチャーハンターであり、戦闘に長けた吸血鬼。

 身長が非常に高く筋肉量も多い。短く刈った髪は土色、肌は渇いて灰色ががっている。眼だけが赤橙色に爛々と光る風貌は、見る者に恐怖を与える。焦茶の鍔付き帽とショートコート、銀製の吸血抑止マスクを身につけている。マスクのせいで、くぐもった低い声でしゃべる。

 性格は執着的かつ好戦的。寡黙で言葉は少ないが日本語を勉強したこともある。一人称は『俺』。

 得物はコートの両手首から射出するアンカー付きチェーン、およびアンダーバレル式大型リボルバー拳銃。チェーンリールを両腰に、銃のホルスターをコートの内側に吊ってある。自らの血を染み込ませた金属を物理的に操る能力を有し、近距離・遠距離の自在な攻撃を可能とする。

 クリーチャーハンターは人間の頃からの職であり、過去の事件で吸血鬼化した後も同じ役目を続けている。それは彼自身の義務感であり、拒めば軍に処分される他ないからでもある。

 物語中盤でククリとの交戦により吸血抑止マスクが破損し、エズラは自制が利かずにニシタマ市民の血を吸い、自身の眷属に変えて利用してしまう。

 好きな食べ物はラムチョップ。ビールも浴びるように飲むが、肉体はアルコールの影響を受けない。


『――死ね。俺は貴様を捕まえた』

『目標を視認した。殺して報告する』

「……ははははっ。仕留めるぞ、何を使ってでも」

「これで最後だ……塵と還れ!」



・紫電ウミ(しでん・うみ)

 怪奇雲に棲む雷獣。自称〝進撃の雷獣娘〟。

 雲の中を泳いでは、絶えず稲光を発している。基本はテンに似た妖獣形態をとっているが、人前では人間の姿となる。一人称は「ボク」。

 外見はローティーンのようで小柄。鮮やかな青紫色の髪に一筋の白いメッシュカラー。後ろはボリューミーなポニーテールに結ってある。服装はスポーティな長袖Tシャツにハーフパンツ、ごつい厚底スニーカー。

 いたずら好きな性格で、気になる相手には雷を落とす。騒ぎを見つけては干渉してくる。妖気に満ちた怪奇雲は彼女にとって居心地よいが、ククリの仲間というわけではない。

 物語終盤、ウミのちょっかい(落雷)のせいで瞳美が人間に捕らえられたため、ククリとムナシに責め立てられて瞳美の救出にしぶしぶ加勢する羽目となる。

 徒手空拳と自由自在な電撃で戦い、普通の相手であればまず負けることはない力量の持ち主。しかし作中ではククリの主義に従って殺傷を避けるため、エズラや元ニシタマ市民の眷属に苦闘を強いられる。

 好きな食べ物はホッピングシャワーアイス、ねるねるねるね。


「呼ばれて登場! 進撃の雷獣娘、紫電ウミちゃんでぇーッす!」

「どうしたんだい? 悲しい顔してさぁ! 飴ちゃん食べるかい?!」

「ういー! 悪気はないんだから許してよぉ!」

「やだー! しつこいー! キリがないー! みんな焼き殺して帰ろうよぅー!!」



◯物語構成

全6章+エピローグ (合計約110000文字)


・1章 九尾の狐とハイエナ娘 (約10000文字)

 埼玉県内でアルバイトとして働いている尾瀬瞳美は、流行の九日咳が長引いて不安な気持ちだった。残業の合間に会社の屋上で休憩をとっていると、約十キロメートル先の怪奇雲から飛来した、光り輝く九尾の狐を目撃する。九尾の狐=九尾ククリが発する妖力の波動を受けた瞳美は、獣人の妖怪・ワーハイエナへと変化してしまった。

 考えてもみない事態のせいでパニックに陥り、会社を抜け出す瞳美。自宅へ逃げ帰る途中で人々に獣人姿を目撃されてしまったところを、ククリに助けられる。

 ホームグラウンドの怪奇雲から離れたククリを捕縛しようと米軍に所属するクリーチャーハンターの吸血鬼、エズラ・トゥエルヴが襲来する。ククリとエズラが交戦する一方、ククリの仲間と認識された瞳美も警官隊に取り囲まれる。ククリは辛くもエズラを撃退し、瞳美も捕まらずに凌ぎ切った。ふたりはククリの力で怪奇雲のあるニシタマ市へと逃げ延びるのだった。

 途中、ククリはワーハイエナが瞳美の本来の姿であり、自分が瞳美の存在を感知して迎えに来たことを明かす。人間の姿に戻るためには妖力の制御を修得しなくてはならず、それと引き換えにククリの全国制覇の野望に加担するよう要求され、瞳美は悲痛な叫びを上げるのだった。


・2章 怪奇雲の空と病院ビル (約25000字)

 生まれ育ったニシタマ市へ舞い戻った瞳美は、ククリの根城・通称〝病院ビル〟に連れ込まれる。妖怪の血筋が混じっていると教えられ戸惑うが、ククリに協力することを渋々約束する。

 瞳美はククリに稽古をつけられ、ワーハイエナとして修行を積む。自らの妖力を制御して身体の動かし方を覚えるごとに行動範囲が広がり、街を跳び回ることに喜びを見出すのだった。ククリと瞳美の間には、師弟の絆が芽生えつつあった。

 一方、沖縄生まれのキジムナーで兄弟子の木児ムナシからは冷たい態度を向けられてしまっていた。戦力外と言われたことに反発し、柄にもなく負けん気を発揮する瞳美はムナシと修行の成果を競い合う。

 また怪奇雲の内部に残って生活している人々とも瞳美は交流し、なにげない助け合いから信頼関係を築いていった。食料や日用品の入手経路を開拓する瞳美を認め、ムナシも歩み寄り始めるのだった。

 病院ビルでの生活が板についてきたころ、怪奇雲の中にまでエズラの再襲撃がなされる。ククリやムナシとともに、瞳美も応戦することになる。


・3章 血と葛藤と落雷と (約25000文字)

 能力の使用制限が緩和されたエズラとの戦闘は凄まじく、ニシタマ市内の破壊規模は大きかった。勝負を再びエズラとの相打ちに持ち込みつつ、瞳美をかばってククリは深い傷を負った。

 社会の悪となって周囲をも巻き込み、我を張って戦うククリに違和感を覚える瞳美。怪我を癒すククリと口論になって病院ビルを飛び出し、追ってきたムナシからククリの本当の動機を教えられる。

 子孫を探していること。たとえ半妖でも人間は殺さないと決めていること。

「ほんと人間にとっては迷惑すぎだけど、お互いさまじゃね?」とムナシが笑い、ククリの行為を許容することができるか、瞳美は自分の心に問いかける。

 そのとき突如、吸血鬼化した人間たちがふたりを襲った。戦闘で吸血抑止マスクを失ったエズラは自制できずに住民たちの血を吸い、使役できる眷属へと変貌させたのだ。

 住民たちとの戦闘を避けて逃走する瞳美とムナシ。負傷しているククリの元へエズラを導くわけにはいかず、身を隠して時間を稼ぐのだった。

 しかしニシタマ市の外れ近くまで逃げてきたとき、激しい落雷に襲われてふたりははぐれ、瞳美は気を失うのだった。


・4章 ウソ、わたしの生還率低すぎ……?! (約25000文字)

 意識が戻ると瞳美は、廃棄されたはずのヨコタ基地内に囚われていた。獣人化した半妖として身元がバレており、在日米軍と自衛隊の指揮官に尋問される。妖怪、そして怪奇雲の研究に協力すれば元に戻ることができると交渉を持ちかけられたが、それが人体実験を意味していることは明らかだった。

 一方、ククリとムナシは落雷の原因である雷獣・紫電ウミにお灸を据えていた。瞳美が隊員たちにさらわれるのを目撃したとウミは吐き、瞳美を巻き込んだことの是非をククリは自問する。ククリとムナシはウミを連れて瞳美救出に乗り出す。

 不安な気持ちのまま監禁されていた瞳美は、殴り込みに来たククリの波動を感じる。鉄格子を食い破って逃げ出し、さらには重ねた修行の成果で人間の姿へと戻ることに成功し、隊員にまぎれて基地を脱出するのだった。

 瞳美は隊員たちと激しく交戦する三人に合流した。安堵で泣き出す瞳美を、ククリは抱き締めて安心させる。瞳美が妖力の制御を会得したことに驚きつつも、それをククリは歓迎した。共犯関係は終わったのだと。

 そしてククリは、家に帰るよう瞳美の背中を押す。

 瞳美は言われるまま、戦火のニシタマ市を後にするのだった。


・5章 吸血鬼と断罪 (約20000文字)

 在日米軍と自衛隊の合同部隊を片付けたククリたち。司令官を詰問しているとき、負傷を完治させたエズラが現れる。ニシタマ市の人間たちに加えて隊員たちを眷属化させ、襲い来る。

 多数の人間の血を吸ったエズラはベストコンディションだが、ククリは対照的に最悪の状態だ。ムナシは奥の手を使えとククリに迫るが、ククリは拒む。人も殺すなとムナシとウミに命じるのだった。

 ククリの波動が弱まるのを、怪奇雲の外から瞳美は感じ取る。迷う思いを振り切ろうとするが、瞳美は引き返すことに決めた。我を通し、出せる力を振り絞るのだ。

 絶体絶命のククリへとどめを刺そうとするエズラに、渾身の不意打ちを与える瞳美。なぜ戻ってきたとククリが責める。

 瞳美はムナシから聞いた、ククリの子孫のことを言及する。人間として、その子を一緒に探すのだと。

 ククリは根負けし、エズラを倒すため、最後の手段の実行を決意する。

 怪奇雲の妖気を身体に集め、一時的に能力を最大限強化するオーバーブーストを発動するククリ。持てる全ての能力をぶつけ合い、エズラと決着をつける。

 吸血鬼も元は人間だったと、ククリはエズラに情けをかける。二度目はないと言い放ち、エズラを見逃すのだった。


・エピローグ (約5000文字)

 オーバーブーストで妖気は尽きてしまい、怪奇雲は晴れた。ニシタマ市には次第に人が戻ってきている。

 今もまだ病院ビルに棲み、ククリは風邪のような諸症状に震えていた。オーバーブーストの反動であり、平常運転の妖力を取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。ムナシは彼女を看病している。

 仕事帰りの瞳美が立ち寄って、ククリに見舞いのおでんをつくってやった。彼女の好物の餅巾着をたっぷり入れて。

 あの子を探しに行かなくちゃな、とククリ。悪事は抜きで協力することを、瞳美は笑って誓うのだった。


⇒2巻に続きます。

新たな手がかりを元に旅をしてククリの子孫を見つけるが、おてんば半妖少女で、土地神とのトラブルを起こしており……といった具合。

今後、瞳美のワーハイエナの血筋のルーツを探る冒険も控えています。

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