【書籍版・第34話】次なる目的地
ダンジョンで入手した魔物の肉によるサイコロステーキをメインディッシュにした晩御飯を、俺たちは心行くまで堪能した。
晩御飯のあと、俺は風呂に入った。
風呂からあがると、居間ではリュイアが既に眠っていた。
少女に寄りそうようにして横になっていたヴァンに、俺は尋ねた。
「少し出てきてもいいかな」
今まで男の一人暮らしだったところに、二人の客人が現れた。
野菜室や冷凍庫のストックもそろそろ尽きてきたし、二人が休んでいる間に買い出しに行っておきたかった。
「わかった」と、ヴァンは低い声で言った。
「ありがとう」
俺は頷き、支度を始めた。
財布、スマホと、とりあえず必要なものを鞄に入れながら、何を買おうかと考える。
「ケィタ」
「ん?」
「私たちがここにいることは、迷惑になっていないか」
顔を上げると、ヴァンは気遣わしげな目でこちらを見ていた。
俺はもふもふさんに近づき、その白い毛を撫でた。
「なってないよ、何も」
魔族の少女、白いもふもふとともに、ダンジョンに潜り、魔法石をかき集める日常。
まだ3日目に過ぎないけれど、俺は俺なりに、新しい日々を満喫していた。
もふもふワンコさんは俺に撫でられながら、思慮深い瞳でじっと俺の顔を見た。
それからふぅーっと、安心したように息をはいた。
「……そうか」
「うん。じゃ、行ってくるね」
「ああ。行ってらっしゃい、ケィタ」
俺は近くのスーパーに駆け込むと、日用品やすぐに食べられる食事などを買い込んだ。
次の日の朝。
「ケィタ……?」
俺がキッチンに立っていると、居間で眠っているリュイアが起きた。
「あっ、ごめんね。起こしちゃった?」
「ううん。いつも朝になったら、起きるの」とリュイアは寝ぼけまなこで言った。
「そっか。おはよう、リュイア」
「えへへ……おはよう、ケィタ」照れたように笑うリュイア。それからキッチンの方を見て、「ごはんつくってるの?」という。
「うん。もう出来るよ。食べる?」
「うん! さきに、服を着替えてくるね!」とリュイアは言って、洗面所へと向かった。
その後にヴァンが起きてきて、三人で朝食を食べることにした。
「わぁー!」
テーブルに並ぶ料理に、リュイアが歓声をあげる。
昨日、スーパーで購入した食材を使って、用意した朝食。
卵焼き、ひじきの煮物、白身魚のハーブ焼き、味噌汁。
大した料理ではないけれど、俺ひとりだったらここまではしないだろうなぁ……という感じのメニュー。
それでも、俺が作った料理に目を輝かせてくれる一人と一頭を前にすると、『今度は何を作ろうかなぁ……』と自然に思ってしまう。
「すごいね……」
寝ぐせでぴょんと髪が跳ねている少女は、食い入るように料理を見つめ、呟いた。
「ああ」
その隣で、ヴァンも低く唸った。
「食べられないものとかありそう?」
俺が尋ねると、リュイアがぱっと顔をあげる。「たしかめてもいい?」
「うん。お願いします」
「あい!」
リュイアは料理を見ながら、唇を尖らせ、何か呟いている。
ヴァンはダンジョンを探すときのように、真剣に料理をくんくんと嗅いでいた。
それからしばらくして、リュイアがにこりと笑い、ヴァンが頷く。
「食べれます!」
魔族の少女は両手をあげて言った。
一人と一頭は、あっという間に朝食を平らげた。
朝食を終えると、ヴァンが言った。
「ケィタ、提案があるんだ」
「なに?」
「今日なんだが」とヴァンは言った。
「うん」
「ダンジョン街へ行くのはどうだろうか」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【作者より、読者の皆様へ】
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
現在公開しているこちらのエピソードは、「書籍版」の最新話です。
次のページからは「Web版」(別の物語)となっておりますので、間違えて進まれぬよう、ご注意いただければと思います。
本文中の作者メッセージ、大変失礼いたしました。
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