旧連載版(注:書籍・コミカライズ版とは内容が大きく異なります!)
(旧連載版 第1話)
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読者の皆様へ
本作に興味を持ってくださり、誠にありがとうございます!
こちらは、書籍化以前にカクヨム上で連載しておりました旧連載版の一話です。
本作品は「新連載版」と「旧Web連載版」の2パターンをカクヨム上に掲載しており、内容が大きく異なっております。
(※それぞれの詳しいあらすじは、作品説明欄に書かせていただきました)
新連載版を楽しまれたい方は、お手数ですが目次より「書籍版(新連載版)」の第一話に飛んでいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします!
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以下、「旧Web連載版」の第一話です。
注:書籍・コミカライズ版に見られるもふもふとちびっこ魔族は出てきません。
注:新連載版を読まれたい方は、目次からご移動をお願いします。
度重なるご案内、大変失礼いたしました。
それでは、よろしくお願いいたします。
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「やった……!!」
月曜日の朝。俺は自宅の裏庭で、思わずそう呟いた。
理由は簡単だ。その裏庭に、昨日まではなかった穴がぽっかりと空いていたからだ。
思い当たる可能性は一つ。そう……ダンジョンだ。
40年ほど前に突如として世界中で現れ、しかし今ではすっかり人々に受け入れられている不思議な穴。
穴の中は、ダンジョン
だが、そんなことはどうだっていい。
重要なのはこの穴に……お宝が眠っているかもしれないということ。
ダンジョン資源――通称
日本にも急速に法整備が進み、政府公認の「D資源取引所」が開設され、個人での売買が簡単になった。
今のところD資源で得た売却益は雑所得に分類されるため、比較的高い税金がかけられてしまうというのが難点ではあるが。
それでも、自分の所有する土地に突然現れたダンジョンを探索し、億単位の利益を得た人もいるという。
夢のある話であることは間違いない。
俺みたいな小市民的な人間が興奮するのも、無理のないことだ。
さて。
「ダンジョンが見つかったってことは、とりあえず役所に届出しないといけないんだよな……」
ダンジョンの中には大抵の場合、D資源があるだけではなく、ダンジョン内生物(
彼らはダンジョンから出てくることこそほとんどないが、とても危険な生物であるらしい。
そのためダンジョンを見つけた市民には、役所に届出する義務が課されていた。
俺はスマホで「ダンジョン 見つけた後」と検索し、情報を調べる。
「へぇ……届出の前に、穴が本当にダンジョンであることかどうかの判定をしてもらわないといけないのか。……そうだ」
俺は庭から家の中に戻って、書類を入れている引き出しを漁る。
「あった」
見つけたのは、ラミネート加工が施された名刺サイズのカード。
そのカードには、【お持ちの土地にダンジョンが発生したら! 24時間、いつでもお電話ください!】と書かれている。
「水」や「鍵」のトラブルに応じてくれる業者のカードと一緒に、引き出しの中に常備していたのだ。
そこに書かれたフリーダイヤルに連絡を入れる。
プツッ。
「お電話ありがとうございます。24時間出張調査、『まちのダンジョン調査屋さん』でございます」
「あっ、すみません。今朝起きたらですね、自宅の庭に穴が……」
「ダンジョンじゃない……ってことですか?」
「ええ、まぁ、調べさせていただいた限りは」
調査を終え、穴から出て来た男の言葉を聞き、俺は愕然とした。
電話してから30分ほどでやってきた業者の男は、手持ちの計測器のようなものを庭の穴に向けて使用するなり、首を傾げた。
それから躊躇なく穴の中に入っていくから、「えっ、魔物とかいるかもしれないのに……大丈夫なのか?」と不安に思っていたら、すぐに戻ってきて。
「この穴はダンジョンではありません」と言い放ち、ダンジョンの成立条件について説明し始めたのだった。
業者の男いわく、ダンジョンが成立するには最低でも3つの条件がある。
一つ、穴などの閉鎖空間であること。
二つ、その空間から、一定以上の濃度のD
三つ、D資源やD生物が存在すること。
「こちらの穴なんですけどね、条件の1しか満たしていないんですよ。
まぁ要するに、ただの穴ですね」
「で、でも、今朝起きたら急にこの穴が出来てて……」
すると業者の男は薄笑いを浮かべて言った。
「最近多いんですよね、こういうケース。『庭に大きな穴があいていた、ダンジョンじゃないか調査してくれ』って問い合わせが入って、実際に行ってみたら、ほんとにただの穴でしかないっていうケースが」
呆れたように、男は言葉を続ける。
「まぁ、『ダンジョン詐欺』なんてものも、巷では流行ってますし、ね」
ダンジョン詐欺。
ダンジョンの話題に疎い俺でも、その単語くらいはネットニュースで目にしたことがある。
所有する土地に自分で穴を掘り、「ダンジョンだ」と偽って他者に売ろうとする詐欺行為だ。
つまり俺は今……自作自演を疑われている、ということか。
「いや、まぁお客さんの場合はおそらく違うと思いますよ?きっと……そうですね、まぁ誰かが悪戯で掘ったのかもしれませんね」と男は、へらへらと笑った。
「はあ……」
塀を乗り越えて他人の庭に入り、穴を掘る。しかもそこそこの深さの穴を。
面白がってやるにしても、手間のかかり過ぎる悪戯だ。現実的じゃない。
やっぱりこの男は、俺が嘘をついていると思っているのだろう。
『まぁ月曜日の朝っていうタイミングもタイミングだしな。無職の人間が金策に困ってやったと思われても……仕方ない、か』
「じゃあ、調査は以上でよろしかったでしょうか?」
「ええ……そうですね、すみません」
「はいはい」
男は小馬鹿にするように、手をひらひらと振った。
裏庭から家の横を通り、玄関の前まで来ると。
男は口を開いた。
「じゃあ、調査費で3万5千円ほどお願いします」
「え」
「はい?」
さ、3万5千円……?
「あの、見積もりは無料って……」
「そうですね、見積もりは。でも、もう調査させていただきましたので」
『え……』
俺は頭の中で考える。
どこかのタイミングで「見積りはこれくらいになります」という話が出ただろうか。
出ていない、はず。いや、絶対にそんな話はされていない。
「申し訳ないですけど、ここまで来させていただいた出張費などもありますし」と業者の男が、家の前の方を指差す。
家の前には、男が乗ってきた車、『まちのダンジョン調査屋さん』と車体にでかでかと印刷された白いバンが停まっている。
そのガソリン代と手間賃くらいは払え、ということだろうか。
それにしても、3万5千円はぼったくられている気が……。
「わー!」
すると話していた業者の車の方から、騒がしい声が。
そしてうちの門扉が勢いよく開くと、一人の美少女が、家の敷地の中に飛び込んできた。
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