【書籍版・第20話】行き止まり

たどり着いた場所は……行き止まりだった。


それ以上先に道が続いていない。


そして目の前には。


今までに魔物を倒したときのような小さな魔法石ではなく、大きな輝く石があった。



「これは……?」


「ダンジョンコアだ」ワンコさんが興奮気味に語る。「このダンジョンのマナの源だ。つまり我々は、ダンジョンの最奥部までたどり着いたということだ」


「おお……」

つまり、ゴールしたってことか。

魔物は何体も倒したけれど、意外と長くはなかった気がする。


「ケィタ、本当によくやってくれた。最初は魔法石を集めるだけでもと思ったんだが、まさか最後までたどり着けてしまうとは」

ワンコさんの声が弾んでいる。


「良かったです。力になれて」

魔物を倒した甲斐があった。もちろん、二人から受け取った魔力あってのことだけど。


「きれーい……」リュイアはコアを見入ったまま、囁くように言った。


「これを壊すんですか?」


「ああ、そうだ。破壊すれば、このダンジョンは崩壊する。それで我々は役目を果たしたということになる」


おぉ……! 

『めでたし、めでたし。』ってことだな。


「それじゃあ、壊したいのだが……ケィタ」


「はい」


「このコアだが、我々のどちらかで、破壊しても構わないか?」


「えっと……俺は構わないですけど、何かあるんですか?」


「いや。ここまで来られたのは、間違いなくケィタのおかげだからな。本来ならば、ケィタがこれを破壊するのが筋だと思う。だが……正直に言えば、我々は今、喉から手が出るほど、魔力が欲しい。ケィタに渡した分で、自分たちの力が落ちてしまっているからだ」


ああ、なるほど。

「このコアを破壊すれば、魔力が増えるんですね?」


「そうだな。コアを破壊した者は、大量の魔力を獲得することができる。だが、コアを破壊することができるのは一人だけなんだ。だが、ケィタの力なくしては我々はここまで来ることができなかった。だから最終的にはケィタが判断して欲しい」


「じゃあ、二人のどちらかが破壊してください」


俺が即答すると、ワンコさんが呆然と言った。「……いいのか?」


「もちろん。俺は二人からもらった魔力を返せないみたいですしね。リュイアとワンコさんのためになるようにしてください」


「……かたじけない」


「いえいえ」


「どうする、リュイア」とワンコさんが話を振った。「リュイア?」


ダンジョンコアの光に魅了されていたリュイアが、はっと顔をあげた。「ヴァン、なにか言った?」


「ケィタがダンジョンコアを譲ってくれた。リュイアと私のどちらかで破壊してもいいって」


「ケィタ、いいの!?」リュイアが目を丸くする。


魔族の彼らにとって、ダンジョンコアを壊すのって、そんなに魅力的なものなのだろうか。


「うん。どうぞ、どうぞ」


「ほんとに……ほんとにいいの?」

リュイアはなおも、尋ねて来る。


「いいよ。リュイアとワンコさんのどっちかで壊して」


「ケィタ、いい人……! ありがとう……!!」


「あはは。どういたしまして」


「どうする、リュイア。どちらが破壊する?」


「うーん、ヴァン、破壊したい?」


「そりゃあまぁ……」


「ケィタ、どっちが破壊したらいいと思う?」


「うーん、どっちだろう……?」


よく分からない……

とりあえずこの石を破壊すれば彼らの任務は完了なんだろうし、どっちが破壊してもいいとは思うんだけど。


沈黙。


俺は仕方なく、提案した。


「じゃあ……」

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