ラチオの輝石

立花戦

記録1―平穏と冒険そして邂逅―

この日を境に人類は魔法を手に入れた。

環境問題が看過できないほどに追い詰まり直視しなくてはならない西暦2300年。

日本列島の最南端に位置する沖ノ鳥島おきのとりしまがある。

そこはサンゴしょうからなる島。

そこへ向かわんとする銀色の物体が空を切るようにして飛んでいた。

抜けるような青空の中を泳ぐようにして進んでいた物体の正体は、軍用航空機だ。


「これこそ日々是好日にちにちこれこうじつ

パイロットだからこそ何事もなく飛行していると変わらぬ平穏な一日はなんて幸福だ」


コクピット内で操作をしていた戦闘機の若きパイロットは緊張の色どころか口笛を吹くような気楽さで飛行することを心から楽しんでいた。

それもそのはず。

新しく開発された新型の試運転に選ばれて弾んでいた。飛行訓練で彼は空を見上げて絶句した。


「な、なんだアレはッ!?」


沖ノ鳥島の近海に向かって遥か上空から眩い緑色の塊が落ちてきた。ズバーンと海に落下して大きな水柱が上がる。


「こ、このままだと、風力で飛ばられちまうッ!」


落下地点から近くで飛行していたパイロットは落下した余波に巻き込まれないよう退避しようと行動をとる。

なんとか余波から避けて暫くして余波が収まり。事なきを得たパイロットは落下した巨大なエメラルドストーンに接近を試みた。

――おっと、忘れてた。

パイロットは思い出す。無線で報告することを失念していたことを思い出す。


「日本列島から南に。み、未知の宝石が落下ッ!

これが何なのか早速これに接近して確認します」


〖ま、待って!?

もう少し詳しく状況を報告をしろ、

それにだ、宝石が落下したなんて荒唐無稽にもほどがある。

まるで意味が分からんぞ〗


パニックしていたパイロット。

その反面この出来事に高揚していた。

突然のエメラルド宝石の塊が落ちてきた。その高さはスカイツリーなどの高さを優に超えているだけではなく面積も広大。


「落下した隕石。

あまりにも心を奪われるほどの鮮緑せんりょく

途轍とてつもないスケール……どれも俺の心を刺激させてくれる。

これには高揚感で駆らてしまう魔力がある!」


海流の流れを我関せずと揺れることなく不動にしてそびえ立つエメラルドの山。

何かに取りつかれたようにパイロットは一直線に駆られるまま近づく。

逸る気持ちが抑えられず目は血走せていた。

滑走路なんてあるはずがなくこのままだと謎の物体に激突して爆破するだろう。だがパイロットは持ち前の操縦技術だけで着陸することに成功した。


「おいおい。あまりにも奇妙だ。

どうしたんだ俺は……いったいどうしてこんな無茶なことをしたというんだ?」


上な指示を仰ぐ前に行動したことにパイロットは自らの行動を省みて驚愕する。

比較考慮する対象がつけずパイロットは分からないまま戦闘機を降りて宝石の上に立つ。周囲を見渡して感嘆の息を吐く。


「はは、はっははは。スゴいぞどんな見た宝石よりもこんな美しい物は見たことがない」


歓喜する若きパイロット。

その場でジャンプを始めた。その次に何を思ったのか四つん這いとなり感触を全体に味わっていた。さらに宝石を舐めて味わったりもした。


「味は美味しくない。だがなんだ?一度だけ食べたことある懐石料理かいせきりょうりよりも満たされるぞ」


若きパイロットは明らかに狂乱していた。

浮かれていた熱が冷めていき、わずかの平常心が戻ると遅れて心を奪われて変調をきたす恐怖におぼえた。落下した隕石は平常心を奪ってしまう美しさを放つ。

こんな不気味なところ去るべきだと心の警鐘が鳴り踵を返そうとした。


「……なるほど、そういうことか。

どうして滑走路がない隕石なんかの上で降りることが出来たか?それが怪訝だったが平面の場所に降りたからか」


そんな抱いていた疑問を解消したことの特有の心地よいで戦闘機に向かうとしたら頭痛が起きた。


「いたっ」


ハンマーで叩かれたような激痛が走り、視界も歪む。そして身体のバランス感覚もあやふやとなっていく。


「い、今すぐ離れないと……ここはヤバい。

あっ!」


足を滑らせてしまい転倒、若きパイロットは斜面に転んでいき勢いよく回る。

横に回りながら止まる方法を探っている途中で隕石の上から離れたとパイロットはそう思った。だが、それは飛び出してしまったこと事態と遅れて理解するのだった。


「うわああぁぁーーッ!」


落下している。

このままでは海に落ちて溺死できしするだろうとパイロットは焦りとは別に判断した。

確実な死が迫っていることに男は時間が経つにつれて冷静となる。こんなの騒ぐほどでは無いじゃないか。今すぐ飛行を起動、、、、、すればいいのだから。


「ハアッ!」


両手を下に向けると意気軒昂の掛け声。

それだけで若きパイロットは落下していく速度が収まる。魔法で滞空たいくう状態にとさせることに成功した。


「お、俺……空を飛んでいる。

これって魔法なのか」


取り乱した若きパイロットはひどく驚いた。

未知なはずの魔法が身近で親しみのある既知にと認識していたのだ。在るはずのない魔法を。

死が近づいてくる慌てて狭める思考の中で飛行するための方法を知っていたこと。

知っている知識として行使した。

この事実についてこれず現実味の無さに戸惑いながらもパイロットは上昇して落ちた高さのところで着地する。


「……とりあえず。

この貴重な石を持って帰還しよう」


若きパイロットはそう判断すると隕石の一部を回収しようと光の剣、、、を生成して斬る。

そのあと欠片を解析して分かったことは、その石に触れた生命体は、あらゆる超常現象を故意に引き起こす事を可能とする結果発表だった。

より謎の物質を精密に調べていき研究されたことで次々と判明されていく。

発現するのはあくまで人であり隕石の欠片かけらは発動するための過程の情報を保管されたものであると報告がされた。

完全な情報を知ることの出来る記録媒体ばいたい

これには天地がひっくり返る発見だった。

前触れもなくと落下してきた巨石きょいしを後に〖ラチオ碧落石へきらくせき〗と命名され人類はそう呼ぶのだった。

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