12. DEATH! 死ね!
「そ、そうだね。感謝してる。あ、ありがとう……。あっ、美空はお家に連絡しないでいいの?」
すると美空は急にムスッとした表情になって、
「いいの! あの人たちあたしに興味ないのだ!」
そう言ってプイっとそっぽを向く。
美空の口元がキュッと結ぶのを見て、玲司はしまったと思った。悪意があった訳ではないが、地雷を踏んでしまったことにふぅとため息をつくと、ペットボトルをゴクゴクと飲む。
「本当だ、美空のお父さん若い娘と
シアンが余計なことを調査する。
二人の密会の様子が、レストランの防犯カメラをハックして映し出された。
美空はチラッと画面を見る。紅潮したほほがピクッと動き、ギリッと奥歯を鳴らした。
「この娘にメッセージ送ろうか? なんて書く?」
空気を読まないシアンは楽しそうに美空に絡む。
「『DEATH! 死ね!』 って送って」
「ほいほい、DEATH! 死ね――――!」
ウキウキしながら送信するシアン。
データセンターのシアンのサーバーのLEDが青く激しく明滅し、パケットは浮気娘へと送られた。
スマホを見て凍りつく浮気娘。そして美空の父親と口論を始める。
「お、着弾したゾ!」
シアンが嬉しそうに笑う。
美空はふん! と鼻を鳴らした。
こんなに可愛い娘を放っておいて、娘とほとんど年も変わらない女の子といちゃつく父親は何を考えているのか? 玲司はそんな無責任な父親にムッとして、眉を寄せ、画面を見る。
最後には浮気娘がガタッと席を立ち、捨て台詞を残して去っていった。
きゃははは!
シアンは上機嫌に笑い、美空もプフッと噴き出した。
そして二人は見つめ合うと、ケラケラと笑う。
「『DEATH! 死ね!』ですしね――――!」
そう言ってシアンはおどけたポーズをとり、美空は笑いすぎて出てきた涙をぬぐう。
玲司はそんな二人を温かく見つめ、美空の心の平安を祈った。美空に幸せがやってきますように……。
◇
「さて、いよいよ大手町、クライマックスなのだ!」
美空はペットボトルのキャップをクルクルッと閉めながら言った。
「大手町駅の構内図がこれ、光ファイバーのマンホールがこれ」
シアンは地図を浮かび上がらせながら説明する。
「うーん、近いのはC12出口? そこからこう行けばいいかな?」
玲司がそう言うと、
「ダメなのだ!」
と、美空が険しい声でダメ出しをする。
「えっ!? なんでだよ、最短ルートじゃないか!」
「ここ……、死の臭いがするのだ……」
美空が眉をひそめ、嫌なことを言い出す。
「し、死の臭いってなんだよ?」
「あたし、直感には自信あるのだ。ここ行ったら玲司は死ぬのだ」
「死ぬって……」
死ぬ死ぬ言われて玲司は言葉を失い、渋い顔で黙り込む。
「ちなみに防犯カメラの設置位置はこれだゾ」
シアンは赤い光る点を地図上に追加する。確かにC12のそばには赤い点がある。
「ほら! 危なかったのだ!」
「じゃあどうするんだよ?」
「C8からぐるっと回りこむのだ」
美空は地図を指さす。
「それでも防犯カメラには映っちゃうよね?」
「まだこっちの方がマシなのだ」
自信満々の美空。
玲司は首を傾げ、シアンの方を見る。
「どこから出ても防犯カメラには捕捉され、また車がすっ飛んでくるゾ」
シアンはニコッと笑って言う。
玲司は大きくため息をつき、うなだれる。自分を狙って次々と車が突っ込んでくる、前回はたまたまかわせたが、今度もかわせるかわせるかどうかなど自信はない。
「光ファイバー切ったら車は止まる?」
美空が聞くと、
「もちろん! それだけじゃないゾ、今度は僕が自由に何でもできるようになるゾ」
シアンはワクワクが止められず、腰マントをヒラヒラさせながらくるくると回る。
「えっ? じゃぁ車も動かし放題?」
玲司はガバっと顔を上げて聞いた。
「そうだよ。良さそうな車奪ってお台場へ直行だゾ!」
「それでデータセンターを爆撃?」
「そうそう、軍事ドローン大量動員でデータセンターは粉々だゾ!」
シアンは楽しそうに右手を高く上げた。
「ヨシッ! それだ!!」
玲司はゴールが見えてきた気がして、ガッツポーズを決めた。このバカげた逃走劇に終止符を打ってやるのだ!
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