2-7. 六十一番の彼女
地図を見ながら慎重に洞窟を進むと、スケルトン、コボルト、トレントなどが次々と出てくるので、丁寧に殺虫剤で駆除していく。
階段に着くころには結構な量の魔石がたまっていた。
「結構魔物多いねぇ」
「そうですねぇ。でもソータ様が瞬殺してくれるので楽々ですぅ!」
エステルがうれしそうに言う。
この辺りだと特に苦労せずに進めるようだが、レベルはあまり上がっていない。やはりもっと奥へと行く必要がありそうだ。
「ちょっと休憩をしよう」
俺はそう言って鏡を出し、一旦自宅へと戻った。
「ふぅ、疲れたですぅ」
エステルはそう言うとベッドにダイブした。もうすっかり俺の部屋になじんでしまっている。
俺はお湯を沸かしてコーヒーを入れた。
「エステルはジュース?」
聞いてみたが返事がない。
どうしたのかと思って見に行くと、スースーと寝息を立てて熟睡している。
こんなに無防備でいいのかね?
俺はコーヒーを飲みながら可愛いエステルの寝顔を眺め、ちょっと心配になる。
その時、エステルのうなじの所に薄く小さな数字が入っている事に気が付いた。
「061? なんだろう……?」
普段は髪の毛に覆われていて気が付かなかったが、明らかに数字である。女の子がこんな所に入れ墨なんて入れるかな? それとも異世界の風習だろうか……?
今度きいてみようか……、いや、聞いちゃマズいのか?
俺はちょっと悩んだが、女の子の身体について何か聞くのは止めておこうと思った。
◇
棚からクッキーを出し、ポリポリとかじりながら地図を眺める。十八階の次は十九階、そして二十階はボス部屋……ガーゴイルが出るらしい。確か、石でできた
まぁ、効かなかったら鏡に逃げればいいか……。
俺も座布団を枕に床にゴロンと転がった。そう言えばしばらくベッドで寝てないじゃないか。寝袋でも買おうかな……。俺はそんな事を考えながら寝入っていった。
◇
「ソータ様! 申し訳ございません!」
耳元で大きな声がする……。
さすがに慣れてきた。
「いいから、寝かせて。眠いの……」
俺は毛布をかぶる。
「ソータ様ぁ……」
エステルが毛布を引っ張る。
「分かったよ」
俺はそう言って身体を起こし、ベッドに転がろうとしたが……、前回、エステルの匂いに包まれて眠れなかったことを思い出した。
お金も稼げるようになったんだし、広い家に移るかなぁ……。
俺はそんなことを思いながら大きくあくびをする。
「あれ? 寝ないですか?」
エステルは俺の顔をのぞきこむ。
「きみはもう少し『自分は可愛い女の子なんだ』という自覚を持つべきだと思うよ」
「か、可愛いだなんて……、そ、そんな……」
赤くなってうつむくエステル。
どうも趣旨が伝わっていないようだが面倒くさくなり、飲みかけの冷たくなったコーヒーをグッとのんだ。
パンとサラダで簡単に昼食を摂ると、エステルは、
「少し寝たからもう元気いっぱいですぅ!」
と、両手のこぶしを握った。
「じゃあ、行くか!」
俺たちは十八階に隠しておいた鏡からそっと辺りをうかがうと、ダンジョンに再エントリーした。
まずは階段で十九階へと降り、地図を見ながらルートを確認する。
二十階への階段を目指して慎重に進んでいくと、向こうの方から戦闘音が聞こえてきた。誰かが戦っているようだ。
邪魔になっても困るし、避けた方が良いかと思っていたら、
「キャ――――!」
という、悲鳴が上がった。
俺はエステルと顔を見合わせ、うなずくと、悲鳴の方へと急いだ。
タッタッタッタ!
駆ける足音が響き、誰かが走ってくる。
誰だと思ったら、朝にエステルを罵倒していた剣士だった。
「あれ? お前、仲間は?」
俺が聞くと、
「うるせぇ!」
と、叫んで駆け抜けて行った。
「おい、待てよ!」
俺が叫ぶのも聞かず、逃げて行ってしまった。
「いやぁぁぁ!」「ぎゃぁぁぁ!」
悲痛な叫びが聞こえてくる。魔術師と僧侶の女の子たちではないだろうか?
孕み袋にされてしまう。俺たちは急いで走った。
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