45. 予想外の真実
その時だった。
パンパン! と、軽い銃声に続いて、
「ぐぁぁぁ! 何だお前!」
と、魔王の悲鳴が響いた。
英斗は驚いてそっと物置の影から上を眺める。そこには、なんと銃を構えた金髪おかっぱの少女がドヤ顔で倒れた魔王を見下ろしている。
「レ、レヴィアさん!」
英斗はその意外な救世主に目を疑った。
扉の向こうで倒れていたはずのレヴィアが、なぜか観覧室にいる。魔王が設置したセキュリティを苦労して何個も突破したのだろう。レヴィアの執念の勝利だった。
英斗はへなへなと物置にもたれかかり、死の恐怖からの解放に安堵する。
やがてゲートは閉じられ、広間には静けさが戻ってくる。
うぅぅぅ……。
紗雪のむせび泣く声が広間にかすかに響いた。
英斗は紗雪の背中をそっとなでる。
ついに手にした念願の勝利。しかし、大活躍したあの笑顔の幼女はもう居ないのだ。
勝利の感慨よりも、失ったものの大きさに胸が締め付けられる思いで、紗雪の体温をじんわりと感じながら英斗は一緒にほほを濡らした。
◇
観覧室に上がると小太りの中年男は手足を縛られ転がされていた。足からは血が流れ、顔を歪めながら英斗を見上げている。
英斗は無言でニードルガンを魔王の顔に向けた。
「ひっ! や、止めろ! 止めてくれぇ!」
おびえた目で喚く魔王。
「さっき僕が『止めてくれ』って言ったときどうしたっけ?」
英斗はカチャリとニードルガンの安全装置を外す。
「わわわわ、悪かった! 反省する。話し合おう!」
「どうせお前も不老不死なんだろ? 一回死ねよ」
「ひぃぃぃ!」
目をギュッとつぶって顔をそむける魔王。
いたいけな幼女を殺したにっくき敵、魔王。英斗はそっと引き金に力をこめていく。
「それは後にしてくれんか?」
レヴィアがそっと英斗の腕をつかみ、たしなめるように顔をのぞきこむ。
「どうせ生き返るんだから一回
英斗は吹きだしてくる怒りを押さえられず、言い返した。
「五百年……、五百年じゃぞ? 我がコイツにいたぶられ続けたのは! 殺しても殺したりないほどの恨みじゃ。ちょっと待っとけ!」
真紅の瞳に燃え上がる積年の恨み。それは文句を言わせぬ迫力で英斗に迫る。
英斗はふぅと大きく息をつくとうなずき、ニードルガンをおろす。
「まずどっから行くかの?」
レヴィアは魔王を憎々しげににらみながら英斗に聞く。
「じゃあまず、地球にいる魔物を全部消せ! この野郎!」
英斗はそう言うと、流血している足を思い切り蹴った。
ぐはぁ!
魔王はうめき、ギロッと英斗をにらむ。
英斗は眉をピクッとさせると、無言のままニードルガンで足をカッカッカ! と数発撃った。
ぐほっ!
激痛でビクンと跳ねる魔王。
「お前を宇宙に放り出してもいいんだぞ?」
英斗は座った目で淡々と脅した。
少し前の英斗だったらこんな脅しなど到底できなかった。何しろ平凡なただの高校生だったのだ。しかし、何度も死線を超え、タニアを失った今となっては、配慮など度外視したむき出しの怒りの表現ができるようになっていた。それは一皮むけた成長でもあり、また、けがれた大人に一歩近づいてしまったことでもある。
「タブレットメニューのAの3だ……。そこのスイッチを全部オフにすれば魔物たちは行動をやめる」
魔王はほほをピクピクと動かしながら嫌々答えた。
レヴィアは淡々とタブレットを操作し、
「これじゃな。……。よし、とりあえず止めたぞ」
と、英斗にサムアップする。
英斗はうなずくと、魔王をにらみ、聞いた。
「お前が殺した人類を復活させるには女神に頼るしかないのか?」
「女神でなくても
魔王は淡々と答える。
英斗は
「そもそも
そう聞く英斗を、魔王は鼻で笑うと、
「君はここが何でできているか分かってないのかね?」
と、偉そうに言った。
英斗はじっと魔王をにらみ、大きく息をつくと、無言でカッカッカ! とニードルガンを魔王の太ももに数発打ち込んだ。
ふぐぅ!
魔王は激痛に悶える。
「質問にはちゃんと答えようよ」
英斗は無表情で諭しながら見下ろす。残酷なことをやっている自覚はあるが、パパもママも友達も、みんなの命運がかかっているのだ。奴にペースを握らせてはならないと、本能の導くままに引き金を引く。
「くっ! ……。世界はコンピューターで作られてる。
魔王は吐き捨てるように言う。
英斗は魔王が何を言っているのか分からず、ポカンとした顔で言葉を失った。
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