S級美少女爆誕!? 俺が超絶可愛いセルフ女子高生になっちゃった!!

【ときめぐり愛しトゥルーラブ】伝説のギャルゲー。驚くべきことに俺と幼馴染の美馬茜みまあかねが通う高校の担任であるどっきん真奈美まなみ先生。そのうりふたつの妹、ドーキンズ恵令奈えれなはオタクに優しいギャルという天然記念物ばりの希少種なだけではなく、その伝説ギャルゲーのヘビーゲーマーだったんだ。そして恵令奈の提案する言葉に俺はさらに度肝を抜かれてしまった。


『忘れたの【ときめぐり愛しトゥルーラブ】の主人公の女装モードでしかクリアできない姉ヶ崎沙織ちゃん攻略法を!! 零が女装してむちゃモテコーデすることが今回は絶対に必要なの。私を信じて……』


『あ、あの【ときめぐり愛しトゥルーラブ】最大のヒロイン、姉ヶ崎沙織ちゃん攻略法だって!?』


 平日の月曜日だと言うのに、ショッピングモールの館内はとても混雑していた。ふと中央通路の巨大なポップを見上げると全館リニューアルオープンの文字がおどっている。館内のこの盛況振りも納得出来るな。


 そして女装男子としての第一歩を踏み出した俺こと野獣院零やじゅういんれいだったが、先ほどの決意とは裏腹に恵令奈えれなの後ろに隠れるようにコソコソと歩いていた。


「え、恵令奈、女の子になるってこんなにも大変なんだね……」


 俺は急激に恥ずかしくなってしまったんだ。それは現在身にまとっている格好がめちゃくちゃ不完全だっだからだ……。髪型、メイク、おっぱい、どれも完璧なのにこの地味なグレー色のスウェット上下、まるで寝間着で華やかな場所に迷い込んでしまったみたいだ……。


 男の時はこんな気分は全然感じなかった。この湧き上がるような不思議な感情はいったい何だろう!?


「零、分かった? これが女の子の気持ちなんだよ……。いつもお出かけ前は大変なの、どんな服にしようか悩んじゃう、大好きな人に最高に輝いた自分を見せたいから……」


 恵令奈が俺の手を握りながらにっこりと微笑みかけてくれる。まるで女神みたいだ。


「さっ、真奈美お姉ちゃんとの待ち合わせ場所に急ごっ!!」


 どっきん真奈美先生とは同じフロアにあるフードコートで待ち合わせしていたんだ……。二階にあるフードコートは全国のうまいものが食べられる名店がテナントとして数多く軒を連ねておりリニューアルオーブンの目玉の一つだと恵令奈は教えてくれた。


 流行り物にうとい俺でも知っている有名店も多いな、その中のアイスクリーム店に真奈美先生は居た。何でもジェラードが絶品らしい、美味い物には目がなさそうなイマドギャルの恵令奈らしい選択だな。


「こら、恵令奈、零くん遅いぞ、真奈美お姉ちゃんは待ちくたびれちゃったよ」


「ごめんね、真奈美お姉ちゃん、女の子の下着選びは時間が掛かっちゃうから」


 恵令奈がすかさずフォローしてくれた。二人の軽妙な会話を聞いていると姉妹の仲の良さがこちらまで伝わってくるな。どっきん真奈美先生も教室で見せるお堅いそぶりがまるで嘘みたいだ。年相応の綺麗な明るいお姉ちゃんって感じだな。


 二人の座るボックス席には大量の手提げ袋が積まれている。色とりどりの袋には有名アパレルショップのブランド名が書かれていた。


「ま、まさか、その袋、全部買ったの?」


「「うん、零くん、そのまさかだよ!!」」


 にこやかに仲良くユニゾンで答える美人姉妹に思わず腰砕けになってしまう。


「おいおい、今回のプランは伝説のギャルゲー【ときめぐり愛しトゥルーラブ】の絶対的ヒロインである姉ヶ崎沙織ちゃんの攻略法を再現するためだけだろう。俺の女装用にしちゃあいくら何でも買いすぎじゃないの……」


 そうだ、元々ギャルゲーの攻略法対策にしては、あまりにも洋服が大量過ぎやしないか!?


「おい、零、お前、何か勝手に早合点して勘違いしていないか?

 恵令奈は何も今日だけ女装しろとは言ってないよ」


 いつもの厳しい口調に戻った恵令奈が俺に言い放った。


 ええっ!? 何だか話が違わないか……。


 慌てて抗議しようとして言葉を発しかけた俺を制するように恵令奈が大きな紙袋を押し付けて来た。


「まあ、めんどくさい話は後でいいじゃん。とりま美味しいジェラードを食べながらゆっくり話そっ!! とにかく零はこの服にそこのトイレで着替えてきてよ」


「後で必ず理由わけを聞かせてもらうぞ。恵令奈!!」


 渋々俺は恵令奈から紙袋を受け取り、彼女の指示通り隣にある多目的トイレに入った、なぜ多目的トイレで着替えをするのかというと、いくら完璧な女装でものこのこ女子トイレに入って着替えるのは一歩間違えば即逮捕案件になるからだ……。


 余談だか女性が男子トイレに入っても、あまり大事件にならない気がする。良く行楽の観光地で女子トイレが一杯の時、おばちゃんが平気で男子トイレに入ってくるのは良く見かける光景だ。それは通用しても逆はあり得ない……。男が女子トイレに入ったら間違えましたでは済まされないだろう。



 *******



 多目的トイレは本来、身体の不自由な人を最優先だから、順番待ちの人がいないのを良く確認して短時間で着替えるとしよう。俺は恵令奈に手渡された紙袋の中身を多目的トイレの荷物置きに広げた。


「なんじゃこりゃ!?」


 折りたたまれた服の中にメッセージカードが入っていた。


ちゃんへ、これは恵令奈からおすすめのむちゃモテコーデだよ。頑張って元の生活に戻れるようにしようね。その第一歩であるファーストコーデは……』


「恵令奈の奴、めちゃくちゃ気をまわしやがって、きっと真奈美先生から俺の境遇を聞いたに違いないな」



 *******



 しばらくしてトイレでの着替えから戻ってきた俺に恵令奈たちが声を掛けてくれた。


「零!! 早くぅ、むちゃモテコーデを見せて、見せて!!」

 

「ええっ!? 何アレ、似合い過ぎじゃない!」


 真奈美先生も俺の姿をみて興奮を隠しきれない様子だ……。


「ファーストコーデは私が選びました、バッチリですわ、ロリィタ系コーデ!」

 やっぱり、むちゃモテコーデ第一弾は恵令奈が選んでくれたのか……。


【ときめぐり愛しトゥルーラブ】のゲーム内に重要アイテムとして登場するロリィタ系ファッションアイテムそっくりだから聞かなくても分かったけどさ。


 ゴスロリ系のワンピース、そして白基調のシャツの襟元には控え目なフリルがあしらわれている。超絶美人のドーキンズ姉妹と並んでも違和感のない可愛い女装の仕上がりだ、あまり店内で浮かないようシックな色調でまとめられている。頭に巨大なボンネットは装着していないかわりに大きめのリボンが彩られ、とってもキュートな印象だ。


 まるで俺はゲームの中で最強のSランク装備をした勇者の気分になっていた。身も心も晴れやかだ、可愛い洋服がこんなにもパワーを与えてくれるなんて全然知らなかった……。


 「二人とも、こんな素敵な洋服を俺に選んでくれて本当にありがとうな!!」


 俺たちの座るボックス席が一気に活気に包まれる。


「あれっ!? もしかして恵令奈ちゃんじゃない!!」


 突然、背後から声を掛けられた。この涼やかな可愛い声にはむちゃくちゃ聞き覚えがあるぞ……!?


 ま、まさか、こんなタイミングでと出くわすなんて嘘だろ!!


 今の俺はバリバリの女装だ。そんな男のモードを目撃されるなんて激ヤバすぎるうぅ!! 絶体絶命とは正にこのことだ……。



 次回、修羅場回? に続くっ!!




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