幼馴染と一緒の入学初日。
名は体を表すと言うが俺、
と言われ続けてきた。
小、中、高と出来の良い幼馴染み、
関係している。
コミュ症な俺と違って茜は誰にでも好かれる性格で友達も多い、
クラスカースト最上位に位置してもおかしくない存在で、幼馴染みでなければ、
陰キャの俺が一緒にいるどころか会話すら交わせない高嶺の花だ……。
男女の違いが曖昧な小学校低学年位はあまり気にしなかったが、地元の中学に入学した俺を待っていたのは、周りの友達からの好奇な視線だった。
*******
「野獣院って名前、凄くね……」
「あの目つきの悪さは尋常じゃないよ、絶対に一人くらい殺してる目だよな」
「噂だと小学校の卒業式が終わったあとで、校長と教頭をお礼参りで半殺しの目にあわせたらしいぜ……」
「本当かよ!! 俺が聞いた話だと街で軽トラックをパクって無免許なのに乗り回したあげく、やるマン通りで女子高生を無理矢理に拉致したって先輩が噂してたぜ。野獣院にだけは近寄るなって……」
………どんだけ凶悪な小学生なんだよ、俺は。
入学初日、同じクラスになった男子達の話題は俺のデタラメな武勇伝で持ちきりだった。
あっ、やるマン通りとは駅前にある商店街ストリートの名前で、正式名称はハルマン通りなんだ。やるマン通りと影で呼ばれる
自慢の改造車で乗りつけた馬鹿な若者が、女の子に声を掛ける列でナンパ渋滞になるんだ。
野獣院零 こんな名前のお陰で俺がどれだけ嫌な目にあったことか……。
だけど一番ショックだったのは、偶然耳にした茜とクラスの女の子の会話だ。
俺達の中学は近隣の二つの小学校から進学するので俺と茜の幼馴染みの関係性は約半分のクラスメートが知らないんだ。
「ねえねえ美馬さん、野獣院くんと一緒に登校していたけど、もしかして二人は小学校の頃から付き合ってたりするの!! 彼氏彼女の関係とか」
えっ、茜と俺が付き合ってるって!? 思わず耳が瞬時に反応してしまった……。
さっそく茜と仲良くなって会話している女の子は、
「ち、違うよ、零はお隣さんで幼馴染みだから、ただ通学も一緒なだけだから」
茜が慌てて否定するのを聞いて、俺は最初から答えは分かっていたが何故か胸が激しく痛んだ。
「そうだよね、美馬さんと野獣院くんだとちょっと不釣り合いだもんね。美馬さんってすっごく可愛いし、もし二人が付き合っていたら、さしずめ美少女と野獣ってとこかな……」
……グサッと来た。
俺の繊細なラブコメハートに深々と言葉のナイフが突き刺さった瞬間だ。
「駄目だよ凛子ちゃん、野獣院くんに聞こえちゃうから……」
もう一人の女の子、
その言葉以上に傷ついたのは俺のせいで茜に迷惑を掛けていることだ。
茜は困ったような表情を浮かべて他の女の子の会話を黙って聞いている。
俺みたいな男が幼馴染みなんて迷惑でしかないんじゃないのか?
俺は入学早々、考えこんでしまった。
次の瞬間、動揺のあまり自分の肘が当たって机の上に置いてあった筆箱が床に落ちた。うわっヤバい、よりによって筆箱が凛子ちゃんの机の下に転がってしまったぞ。
愛菜ちゃんとの会話に夢中で凛子ちゃんはまったく気が付いていない。
俺は、そ~っと屈み込んで凛子ちゃんの机の下に手を伸ばした
ぐりっ!!
うがああっ、彼女の上靴が思いっきり俺の手を踏みつけている!!
激しい痛みで絶叫しそうになるが、ここで叫べば大変なことになってしまう。
俺は凛子ちゃんの机の下に頭を突っ込んだ状況だ。椅子に座った彼女の、
日に焼けた生足が目の前に
今回ばかりは自分のラッキースケベ体質を呪ってしまう。
俺が慌てて手を動かせば凛子ちゃんに気付かれるし、一体どうすればいいんだ!?
俺はラブコメ脳をフル回転させて
……慌てない、慌てない、脳内の一休さんも一緒に協力してくれるぞ!!
ポクポク零チーン、
俺は唇を尖らせて、タコの口みたいな変顔モードに素早く移行した。
そして凛子ちゃんのスカート越しの股間に目掛けて、ふうふうと熱い息を送ったんだ。
名付けて人間ふいごだ、キャンプで火を起こすときに風を送る棒があるだろ、
アレを口だけでやるイメージだ。股間に生暖かい風を感じれば、
凛子ちゃんもきっと足を動かすだろう。そうしたら筆箱ごと自分の手を抜けばいい。グッドアイディア過ぎるぞ、零ちん!!
「あれっ、何かスカートに風が来るんだけど、教室の窓でも開いているのかな?」
凛子ちゃんが周りをキョロキョロし始めた。よしっ、早く足を開くんだ!!
ぱかっ♡
おわあっ!! 目の前の生足が一気にご開帳しちゃったぞ。
制服のスカートのその奥には!?
……ゴクリ、しましまのおぱんちゅだぁ、こ、校則に引っ掛かるんじゃないのか!?
女子中学生が柄物の下着を着けるのは素晴ら、ケフン、ケフン、もといけしからん!! 今すぐ自分の胸ポケットにある生徒手帳をめくって校則を確認したいところだが、今は無理だ。
日に焼けた健康的な太ももと、おぱんつのしましまのコントラストが素晴らしい……
茜が呼ばれて席を立ったぞ、今がチャンスだ、凛子ちゃん早く足をどけてくれ。
よし、人間ふいご全開モードだ!!
おふううう!! 俺は北風と太陽の童話みたいに全力で風を送り続けた
「なに、何っ、この風は!? 凛子のスカートがめくれちゃうよぉ!!」
凛子ちゃんが慌ててスカートを両手で押さえるのが俺の視界に映る。
さあ、早く俺の手を踏んでいる足をどけるんだ!!
彼女の身体の動きに合わせて上履きが浮いてきた、今だ!!
俺は勢いよく筆箱を握りしめた手を引いた、
「きゃああああっ!!」
凛子ちゃんが黄色い声を上げながら椅子から一気にずり落ちてきた。
「おわああああっ!!」
どしん!! ばたん!! むにゅう♡
凛子ちゃんのしましまぱんつの可愛いお尻が俺の手に乗っかってきた。
や、柔らかい!! そしてあったかくて丸いお尻、手の甲なのがすごく残念だ……。
「す、凄え、さすが野獣院!! 俺達の出来ないことを軽々とやってのけるぅ、そこにシベリア超特急、あこがれるぅ……」
周りの男子が
野獣院零、ヤベー奴だって……。
これがラッキースケベの引きの強さを再確認した出来事だった。
*******
総合病院に向かう路線バスの車窓を眺めながら、俺は過去のことを思い出していた。
思えばあの頃から自分の理想とかけ離れていた気がする。
俺がやりたかった青春はラブコメなんだ。それもど直球な、いちゃいちゃラブが最高だ、出会ったときからヒロインの好感度MAXで登場する女の子全部、主人公に惚れている甘々展開がいい。
NTRはあんまり好みじゃない。ヒロインを寝取る胸糞キャラが野獣院を名乗ってそうなこともあるが、俺の理想は可愛いヒロイン達と妄想の中だけはラブラブちゅっちゅっしたいんだ……。
路線バスの座席で悶々と妄想をしていると上着のポケットが振動するのを感じた。
スマホの着信か、この振動の短さはメールだ、また茜からかな?
取り出して見ると着信は茜からではなかった。
「誰だ、このメール?」
普通のメールではなく、ショートメールだった。
この電話番号は確か!? 慌てて胸ポケットの紙片を取り出す。
「……番号は同じだ、メールの差出人は香坂の妹、
そのメールの短い文面は……。
(誰か私をここから救い出して、やっぱり私は寂しいの。
乙歌の想いをあの人に気付いて欲しい……)
次回、清楚系美少女と病院のベッドで課外授業。に続く!!
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