2-7

 モンスターの同時発生。

 起こりえないことではない。しかし、ルーデは異常事態ではないかと訝しんだ。

 呼び寄せられている気がするのだ。都合のいいことに、モンスターの出現はルーデいる村の近くだった。木こりの集落が襲われたのだ。

 二つの集団は、それぞれは強くはなかった。しかし、対応には手間がかかる。ようやく討伐した時には、皆が疲労困憊になっていた。

 仕事が落ち着いたら、カブレフィドの師匠に会いに行く予定だった。しかしなかなか仕事が途切れない。魔物は休まず湧いてくるのだ。

「まるで、タケノコのように生えてくる」

「しかしタケノコも、無からは生えてきませんね」

「根がある、ということか」

 王城では、モンスターの研究があまり進んでいない。触れるのが汚らわしいと考えられているのである。そのため、長年の討伐の歴史があるにもかかわらず、モンスターのことはよくわかっていないのである。

「一体奴らはどこから来るんだ」

 ルーデは、唇をかんだ。



 土の中から、はい出てくるものがあった。それは、黒い煙のようなものだった。

 いくつもの煙は集まり、一つのかたまりとなってあたりをさまよった。そしてそれは、一本の木を見つけた。

 何百年もそこに立っている木だった。

≪様々なことわりを知るモノではないか≫

 黒い塊は、音を出さずに木に語り掛けた。木は答えなかった。

≪我はお前を解放してやれるぞ。ここで動けぬままの時代はもう終わりだ≫

 煙がどんどんと地上にあふれてくる。それは、大木と同じほどの大きさまでに成長した。

≪幸いにも、どんどんと魔力が解かれていく。三百年……四百年か。お主ならば、このすべてを受け入れられよう≫

 大地が揺れる。

≪そうだ。大きな魂よ。理を、生かそうぞ≫



「うひょーい!」

 叫びながら、スキィアは川の中に飛び込んでいった。

「楽しそうだな」

「男の子はみんな川遊びが好きなんだぜー!」

「そうなのか」

「湖もいいけどねえ。あれは穏やかすぎる」

 そう言うとスキィアは潜ったり泳いだり、とにかく川を楽しんだ。

「人間というのは無邪気なものだ」

「ヒレンソも入れー」

「翼が濡れると飛べないのだ」

「そうなのか。いいこと聞いたぜ、うっひっひ」

「なんだ、私と戦うつもりなのか」

「いや、やらないね。俺より強いもん。お前、もう調子いいだろ?」

「そうだな」

「いつでも俺に勝てるぜ? なぜしない」

「義理というものがある」

「不思議な魔獣だぜえ」

 スキィアの手の中に、銛が現れた。

「それも武器扱いなのか」

「魚にとっちゃな!」

 見事スキィアの一撃は、マスの腹を貫いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る