我が家の総統閣下
ナナミン・ビューティー(七七七@男姉)
総統閣下の悪いクセ…?
19歳の彼、
実は宇宙人。なれど、訳あって昨年の春頃から、このマンションの一室に居候。コスモを始め、その父、母、姉の4人と生活を共にしているのです。
さて、ただいま夕食時。ここダイニングに家族が集う中、居候の割には、ひときわ威厳のあるチェアでテーブルに着く、その精悍な面立ちの青〜中年こそが、かの総統閣下に他なりません。
ある星間戦争に敗れ、自国は崩壊。正確に言えば、すでに総統の地位にはなくも、いまだ当時の軍服風やマントを着用。だけに彼は、ごく一般的な当椚家においては、なおさら浮いた印象の御仁です。
でも、浮いているだけならまだしも、そんな総統閣下には、
それは、ぼちぼち夕食も終わるかといった時のこと。
「…いや〜、総統閣下も
会話の最中、大変ベタなダジャレをコスモの父ヒロシが挟むや否や、
「ヒロシくん…君は死刑だ」
あまりにも唐突に総統閣下は、そう彼に宣告したのです。
なぜなら、そのヒロシのダジャレが大層お気に召さなかった為ですが…
「ほらまた始まった〜。総統閣下ったら〜」
との、コスモの姉イオの
「あいや、これは失礼した。つい、かつてのクセで…な」
やあ、総統閣下ってば、もう〜…と、いや増して和む椚家の食卓。
そう、なにかにつけ些細な理由で『死刑宣告』をするのが、この総統閣下の悪いクセなのです。
また、これはクセではないのですが…
「あ、総統閣下。お風呂、空きましたよ」
「うむ…っととと、うわおーっ…」
すっぽんぽんでリビングに出てくるイオもイオですが、この総統閣下の驚きようも、ずいぶんと大袈裟に見えます。イイ歳こいて、初めて見た訳じゃないでしょ、うっふん。
だがしかし、これは無理もないことなのです。なにせ総統閣下は、えらく女性の裸が苦手ときていますのでね。なんて、もったいない。
かつては、そんなこともなかったのですが、なにやら『全裸でもって星に祈る若き女性』の不思議な力によって、自国を滅ぼされて以来、すっかり苦手になってしまったのだそうです。
ちなみに、女性の裸が苦手だからといって、決して男性の裸が得意な訳ではありません。念のため。
ともあれ、さらに加えて翌日の昼食後、あらたに総統閣下の苦手が見つかってしまったようです。
「…コスモ、な、なにか急に身体が痒いんだがね」
リビングのソファの上、にわかに総統閣下が、首筋やら何やら掻きむしり始めました。
「どうしたんです、総統閣下」
見れば、その彼の首筋や手の甲あたりに、じんましんが出ています。
「これは、病院に行った方がいいかも知れませんよ」
という訳で、コスモの付き添いの下、さっそく総統閣下は最寄りの救急病院へ。
そして、診察の結果…
「きゅうりアレルギーですね」
だそうです。
以上。これぞ、あらたに見つかった総統閣下の苦手であります。
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