第6話 アラフォー、奇妙な店へ


「おはよう、アイナ」

「おはようございます」

 昨晩はだいぶと乱れた。シーツもグシャグシャである。アイナの首筋には噛み跡が、そしてお返しと言わんばかりに私はキスマークをつけられている。アイナは処女ではなくなってしまったが私が奪ったため、その血は処女のそれと同じだけの効果がある。

 さぁ準備をしてギルドに向かおう。


——


「何!? もう戻ってきたのかい!?」

「ああ。原因はシャドウメタルリザード、討伐も済ませてある」

 ギルド長ヘンリーは驚愕を隠せていない。確かに何人もの冒険者を返り討ちにしてきたのをたった一晩で解決したのだから。

「何なら証拠もある」

 ブラックボックスからシャドウメタルリザードの顔だけ出して確認を取る。

「二人で鉱山の悪魔と呼ばれるシャドウメタルリザードを討伐するとは」

「報酬はアイナの口座へ振り込んでくれ。それからこの都市に珍妙な武器があると聞いた。何か知らないか?」

「ああ、それなら……」

 ヘンリーが言うにこの都市の南の端、そこの裏通りに奇妙な武器屋が昔からあるのだという。行くだけの価値はありそうだ。

「ああ、待って。貴方がたの冒険者タグをランクアップさせたんだ。これを」

 受け取ったのはCランクの冒険者タグ。かなりジャンプアップしたが我々の実績を考えればこれが妥当、むしろ足りないくらいだそうだ。

 とにかくある程度のランクは得られた。身分証明にでも使えるだろう。

 さて、奇妙な武器屋に行ってみるか。


——


「う、薄暗い……」

 開口一番アイナが言う。確かにこの裏路地は薄暗い。だが……

「怖いか?」

「いえ……逆に安心するというか」

 私もアイナも闇や夜、暗さというものに安心感を覚える体質になっている。それ故に一般人なら怯えてしまうような路地でも気にならない。

「ここだな」

 路地の先にあったのは奇妙な作りの扉。入ってみるとしよう。

「いらっしゃい。お客とは珍しい」

 店の奥に構えていたのは長身の女性。見た目は20代だが……

 店内には杖や剣などが雑多に置かれている。特段珍妙な武器というのはなさそうだ。

「特殊な武器を売っていると聞いたが?」

「貴方も噂を嗅ぎつけてここへ? だったら諦めて。あの子たちを使いこなせるとは思わないわ」

「むぅ……Dさんを試してもないのにそんなこと」

「あら、子猫ちゃんが言うわね。いいわ、貴方、武器を見せなさい」

「む……」

 言われた通り、ハンドガンとリボルバーを見せる。こんなの見たって何になる?

 と、店主の様子がおかしい。

「あ、貴方これをどこで……!?」

「ハンドガンは最初から持っていた。リボルバーはイレイナ迷宮の宝箱からだ」

「まさか、この2丁を拝めるなんて! ごめんなさい、さっきの言葉は訂正するわ。私は魔界のガンスミス『ロディア』よ」

 ロディアの話によれば私の持っているハンドガンは「パニッシュメント」、リボルバーは「キャノン666」というらしい。この2丁は魔界でも失われた武器の一片だそうだ。

「その銃は持ち主を選ぶの。貴方よく2丁も支配できてるわね」

「まぁ言うこと聞いてくれてるのは事実だが」

「弾は?」

「ああ。魔法で作ってる」

「どうりで認められるわけね。いいわ、この店にある武器を譲りましょう」

——パチンッ

 指鳴らしでロディアの後ろにある壁が動く。そこには……

「おお……」

 大量の銃がかけられている。さながらガンショップだ。

「この子たちは私が作った数打ちだけど……このケースの中の子は凄いわよ」

 出てきたのはアタッシュケース。早速開けると……

「ほほう、アサルトライフルか」

「その子は『ヘルケイラー』というの。じゃじゃ馬だけど貴方なら使いこなせるわ」

 重量はそれなり、取り回しは良好。良いものだ。複数の敵を相手取るのに有利か?

「それから……子猫ちゃんにもプレゼントよ」

「私にですか? わわっ、変わった杖ですね」

「それは『ガンロッド』よ。試作の段階だけど杖と銃、両方として使えるわ」

 なかなかどうして良いものを作っているではないか。色々と説明を受けるが面白い。まずこの世界には魔界の名工たちが作った銃が各地に眠っているということ、ロディアは魔界の素材を元に銃火器を作れるということ、そしてロディアがその名工たちの銃に目がないということ。様々だ。

 とりあえずシャドウテレポートのマークをしておいて何か武器が手に入るか、素材を入手したら訪れることにした。

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