第4話 アラフォー、漲る目覚め

「……」

「……」

 なんとも気まずい朝。いや、悪い意味ではないがお互い顔を合わせられない。

「あっ、あのっ、昨日は私も興奮してて」

「わ、私も勢いに任せてしまったよ」

 ちらりとアイナのふとももを見ると紋章が浮かんでいる。眷族化の証だろう。

「す、凄く、良かったです……!」

「私もだ。血が漲る……!」

 処女の血の効果は凄まじいもので朝だと言うのにマイナスステータスを感じない。夜ほどではないが。

「これからDさんと毎日重ねればDさんは元気になるんですよね?」

「ああ。多分」

「だったら私、精一杯ご奉仕しますから!」

「ありがとう。アイナ」

 アイナは気弱だと思っていたが積極的な一面もあるのだと知った。とにかく、アイナの期待に応えられるようにやろう。

 さて、今日も出発だ。


——


「ん? 馬車が止まった?」

 宿場町から出て暫く、馬車がいきなり止まった。もしや……

「この先に魔物がいそうだ。だれか腕の立つ者はいないか?」

 御者がそう告げる。護衛はいるが念のためといったところだろう。あまり時間は食いたくない。幸いにしてアイナのおかげで昼間でもローブさえあれば夜ほどではないにしても動ける。手を挙げて馬車を降りるが護衛の連中は信用ならないという目を向けてくる。それもそうだ。昨日の今日なわけなんだから。

「おっさん、大丈夫なのか?」

「ああ。体調が戻ったんでな」

 とりあえず魔眼で魔物の位置を把握。やはり昼間は精度も範囲も低下するな。

 と、襲撃が始まった。出てくるのはゴブリン、オークなどの低級魔物。前衛は護衛連中に任せ、中遠距離からブラックバレットを撃ち込む。アイナは支援と風による攻撃。なんと言うことはない。迷宮以下だ。

……ん、上空に反応あり。これは?

「……! グリーンワイバーンです!」

 アイナが告げるとそれは咆哮と共に急降下してきた。それに怖気付いたか低級魔物は逃げていく。

「グリーンワイバーンなんて聞いてないぞ!」

「討伐ランクB相手に勝てるわけがない!」

「逃げるぞ!」

 護衛連中も逃げ出してしまった。残ったのは私とアイナだけ。やるしかない、か。

「アイナ、グリーンワイバーンは強いのか?」

「ええ。でもアークドラゴンを倒したDさんの敵ではありませんね」

 なるほど。そういえばアークドラゴンは討伐ランクAだったな。昼間でステータス低下しているとはいえ何とかなるだろう。

「アイナ、『エアロカッター』で足元を崩してくれ」

「はい!」

 風の刃がグリーンワイバーンに向かっていく。低級魔法と彼奴は侮ったか避けようともしない。が、それが命取りだ。

——ズバァン!

 見事に片足を両断。そのまま体勢を崩す。そこに……

「『ブラックマグナム』『ブラックバレット』」

 日中で威力が下がる分、数で補う。その内に沈黙した。


「ふう。ブラックボックスにしまって……御者さん、そろそろ行けるか?」

「あ、ああ。ありがとう」

 その後はなんと言うこともなく進み、事は順調だった。

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