第2話 アラフォー、次の都市へ

——一週間後

「ふぅ。今日も大漁でしたね」

「ああ。だがここの迷宮は攻略し尽くしてしまったな」

 毎日毎日潜り続け、ついに最深、第七層を攻略してしまった。資金も装備も何もかもが序盤でいい感じに揃っている。

「でもあの迷宮って最深でもBランク装備しか出ないんですね」

 この世界には装備にランクがある。FからA、次にS、SS、SSS、最後にP。

 それを考えるとあの迷宮はあまり美味しくない迷宮ということになる。

「でもDさんの装備はランクが不明なんですよね……」

 アイナは「鑑定」のスキルを持つ。私の武器……ハンドガンとリボルバーを鑑定してもらったが不明だそうだ。

「とにかく、この街にいる旨みはなくなったし次の街へ行こうか」

「次の街……街というよりは都市というべきですね」

 目指すは鉄工都市メタラシア。珍妙な武器があると噂で聞いた。もしかすると私に合う武器かもしれない。

 メタラシアまでは馬車を乗り継いで3日。昼間の移動になる。できれば夜に行きたいところだが危険なために馬車が出ていない。

 ギルドへ行き、リィンに挨拶してイレイナの街を出た。


——


「かっ……はぁ……」

「Dさん、大丈夫ですか……?」

 馬車で移動中、いくら幌がついているとはいえ昼間は辛い。夕方になり小さな宿場町で宿を取ったが息切れが激しい。同乗者にも可哀想な老人を見るような目で見られてしまった。

「さながら私はおじいちゃんを介護する孫みたいに見えたでしょうね」

「ああ……そうかもな。すまない」

 マイナスステータスの影響で昼間はまるでやつれた老人に見えている。しかも死にかけの。街で多少買い物する分にはいいが長距離移動はやはり辛かった。

 とにかく完全に日が暮れるまではおとなしくしていよう。

——夜

「Dさん。落ち着いてきましたね」

「ああ。やはり夜がいい」

「でも昼間は本当に辛そうです……なにか解決策はないんですか?」

「む……ある事にはある。だが永続的な解決ではないし、何より手に入れ難い」

「そうですか……私に何か協力できることがあれば……言って下さい。力になりたい……! あんな辛そうなDさん、見ていられない……」

……くっ、いい子だな。だが余計に言いづらい。しかし言わねば引き下がらないだろう。言うしかない。


「……処女の血とその処女を奪い眷族にすることだ」

「えっ……」


 言ってしまった。だがどうしようもない。これは事実だ。


「……嘘を言っている目ではありませんね」

「ああ。薄気味悪いなら……」


「どうして早く言ってくれなかったんですか!!」

「は?」


 アイナの剣幕に呆気を取られる。んん?


「あのドラゴンから私を助けてくれた時から私は……私は……貴方のことがっ!」

——ドサッ!

「アイナ、一体なにを……!」

 思い切りベッドに押し倒されてしまう。アイナ、なかなかにパワーが……とそれどころではない。状況が混乱している。

「アイナ、落ち着いて……」

 アイナの頬が赤くなっている。興奮状態? いや、ちょっと待て。私もこの滑らかな首筋を見せられて興奮しかけている。おかしい。私は……

——

「ED」

——

 このマイナスステータスにより性的な興奮はしないはずだ。だが今感じているそれは性的であり、かつ食欲的だ。まるで性欲と食欲をごった煮にしたような感覚。

 ダメだ。抑えきれない……!

「アイナ、これ以上は私が……」

「いいんです……早く噛み付いて……!」

 もう、戻れない……!

——ガブッ……

 う、うおお! 血だ、人間、それも処女の血だ。なんて美味さ。数滴で身体が満たされてゆく。枯れ果てた大地に恵みの雨! とうに機能を失ったと思えたそれが完全に復活する。

——ドサッ!

「アイナ、もう……」

「来て、Dさん……」

 私はアイナを押し倒して激しく求めた。

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