vamp"D"

物書未満

第一章

第1話 アラフォー、異世界に降り立つ

「ぬ……なんだここは?」

 私は確かネットの情報をもとに半信半疑で「異世界へ通じる穴」とやらに来ていたはずだ。

 もしや本当に?

「あ、あのっ!」

 突如私に声をかけたのは銀髪の少女。何か知っているといいが……

「貴方は来訪者さんですよね? ごめんなさい、他の女神は出払っていて……」

 聞くにここは異世界へ繋がる場所。ここに来た者は女神から何らかのギフトを得て異世界へと旅立つらしい。そのギフトとやらはどれもあり得ない程の力を持ち、ノーリスクなのだという。

 だがこの少女はマイナスステータスを付与しなければギフトを贈れないそうだ。

「本当にごめんなさい。折角ここまでいらして下さったのに……」

「仕方ないさ。どうせ戻れないんだろう。なら君からギフトを貰うとしようか」

 かくして私はマイナスステータスとプラスステータスの交渉へと入った。

——一時間後

「本当にこれでいいんですね?」

「ああ、問題ない。では」

 私の身体が光に包まれる。スタートらしい。


——


「ん……ベッドの上?」

 見知らぬ天井。のそりと起き上がり鏡を見る。黒の手入れされていない片目が隠れる長髪。やつれた顔。まるで病人ではないか。

……と、早速やってきたか。

——

「貧血」

「低血圧」

「肩こり」

——

 ああ、マイナスステータスだ。辛いな。とにかく部屋を物色しよう。


——ガチャ

「貴方も起きていましたか」

 扉を開けて入ってきたのは三人組の女の子。どうやら四人一組でのスタートのようだ。

「さっき部屋を見て回ってたら色々物資をみつけたの。ここは公平に分配しない?」

「……」

 物資の分配か。悪くない。私も見つけた物を出すとしよう。

——

「布の一式防具」×4

「杖」

「弓」

「長剣」

「拳銃」

「10000G」×4

「ライフポーション」×4

「マナポーション」×4

「携帯食料」×4

「キャンプキット」×4

「地図」×4

「通行証」×4

——

「これだけ、か」

「まさに旅立ち、って感じね」

「不安ですぅ」

「なるほどな」

 最低限のアイテムはくれるらしい。確かに超人的な力を持っていたとしても先立つものは必要だ。問題はアイテムの分配だが……

「ここは各自適正にあった武器を選ぼう。私は『剣聖』のスキル持ちだ」

「私は『弓術王』よ」

「『聖女』ですぅ」

 みんな凄いスキルの持ち主だ。かく言う私は何もない。ここはクラスでも言っておこう。

「『ガンナー』だ」

 さてこうなると取る武器は自ずと決まる。各自武器を取り、装備を整えて出発だ。


——


「早速湧いてきたな」

 赤髪の女の子、剣聖アイリがゴブリンを切り倒しながら冷静に状況を判断する。

「一体一体は大した事ないけど数が凄いわ」

 茶髪の女の子、弓術王シルフィは的確にゴブリンの頭を撃ち抜く。

「とにかく支援しますぅ」

 白髪の女の子、聖女セラフ。彼女は戦いこそ苦手だが圧倒的に支援魔法が強い。

 そして私はというと……

「ぐっ……ああ……」

——

「日光耐性×」

——

 このマイナスステータスのせいで動きが鈍い。みんなが10体倒す間に私は1体程度しか倒せていないのだ。

 みんなの目線が痛い。

 そしてその日はある程度進んだところで野営となった。


——


「あの……おじさん。本当にいいんですかぁ?」

「ああ、見張りは任せてくれ」

 昼間のこともあり私は夜の見張りを買って出た。

「負い目を感じているなら申し訳ない。食料まで私達に……」

「いいんだ」

——

「胃痛」

「胸焼け」

「味覚鈍化」

「食欲不振」

——

 このマイナスステータスの関係で食べ物を摂取しようと思わない。

 それに私の本分は夜にある。


——


「夜なら幾分かマシだな」

 焚き火も消え、月明かりもない森の中、一人呟く。

——

「夜行性」

——

 このステータスはマイナスでもプラスでもない。昼間に人間が活動するのを夜に置き換えただけだ。

「数は30程度……囲まれているな」

——

「暗視」

——

 このスキルにより夜や暗所の方がよく見える。また、気配察知ができるようになる。昼間や明所では意味をなさないが。

 しかし、見える、とは言っても。

——

「視力0.01」

——

 このステータスの影響で裸眼ではボヤけにボヤける。だから。

——

「魔眼」

——

 このスキルはカスタムできるステータスだ。今は目を閉じている時に開いている時よりもよく見える、というカスタムをしている。これと「暗視」を組み合わせて索敵レーダーを作っているというわけだ。

 そして……

——

「魔法創造」

——

 これが肝。魔法を創造できる……代わりに既存の魔法は一切使えない、というプラスステータスだ。マイナスステータスを打ち消せないという制約もある。

「早速試すか。『サイレントバレット』」

——

「サイレントバレット」

 消音効果のある闇魔法弾を放つ。

——

——パスパスパスパスッ!

「おお、断末魔もなく敵を葬るか。凄いな」

 拳銃に魔力を込めて撃ち出す。それだけの魔法。消音効果をつけたのは三人を起こさないため、というのもあるが音で敵に感づかれたくないというのがあった。

 順調に敵を消していく。そして最後の仕上げに……

——

「ブラッドドレイン」

——

 これにより倒した敵から血を奪う。私の生命線のスキルの一つだ。そしてこれを行うと……

——

「残機」×30

——

 この様に「残機」、つまり命のストックを得られるのだ。代わりに擦りでもすれば残機が減るというオマケつきだが。

 それから私は血を奪わないと著しく弱体化する。血ならなんでもいいが人間の、特に処女の血が何より効果が高い。と、女神は言っていた。……処女の血など手に入るのだろうか? 今はとにかくあまり旨いとは言えない魔物の血を啜ってはいるが。

 とりあえず今は魔法創造で色々作ろう。その内朝になるはずだ。


——


 魔法創造に熱中しているうちに気づけば朝になっていた。朝日が痛い。

「あっ、おはようございますぅ」

 最初に起きてきたのは聖女セラフ。早起きらしい。

「もしかして一晩中見張りを?」

「ああ。徹夜は慣れてる」

「ありがとうございますぅ」

 ふむ、感謝されるのは悪くない。その後、アイリ、シルフィも起き出し、キャンプを畳んで出発である。


——


「着いたわね、イレイナの街」

 眼前にあるのは街へ通じる門。通行証を見せ、中に入る。なかなか賑やかな街だ。

 行くべき場所は一つ。そう冒険者ギルドだ。

 と、その前に。

「みんな、ここまでありがとう。私はここでお別れしようと思う。居ても足を引っ張るだけだろうし」

「「「えっ?」」」

「じゃあね」

 驚く三人を尻目に私は雑踏へと消えた。


——


「ああ、もう夜か」

 三人と別れた後、私は宿を取った。昼間は活動がしにくい。私の活動時間は夜である。

 さぁ私もギルドに登録といこうか。


——


「いらっしゃいませー! 冒険者ギルドへようこそ!」

 受付が夜だというのに元気に挨拶をくれる。ギルド内は酒場も併設しているのか賑やかだ。

「冒険者登録をしたいが何をすれば?」

「この用紙に必要事項を記入して下さい。それで完了です!」

「なるほど」

 まず名前……私は元の名前も犠牲にした。確か女神と話した時に決めたな。「D」だ。

 それからクラス。これは「ガンナー」でいいだろう。

 後は色々書いて……完成。

「はい! 確かに受理しました! 冒険者タグをどうぞ!」

 渡されたのはGランクタグ。まぁそんなものだろう。早速適当なクエスト……ああ、ゴブリン退治なんか良さそうだな。

「今から行くんですか? 夜は危険度が増しますが……」

「その分報酬もいいんだろう? なら行くさ」

 夜は危険度が増す。これは間違いない事で魔物の強さが跳ね上がる。だが報酬は10倍だ。しかし……

——

「入手金額1/10」

——

 このマイナスステータスの影響で夜に出ないと火の車なのである。

 では、行くとしよう。


——


 昼間にも通った森。ここに出るゴブリンを狩る。数は指定されていない。つまり狩れるだけ狩ってこい、というわけだ。

——

「ブラックバレット」

 基本となる闇魔力弾。

——

 やはりこの魔法……もとい弾丸は扱いやすい。射程は拳銃程度だが連射が効く。それにゴブリンなら一撃だ。次々湧いてくるゴブリンを撃ち殺し、ブラッドドレインで血を奪う。残機も当然増えていく。割にいい仕事だ。どんどんやっていこう。


——


「ふぅ。一旦は狩り尽くしたか」

 夜が明けるか明けないか、それくらいの時間まで狩りを続けた。ブラッドドレインの感覚でいけば100を超える数を狩った事になる。さて、死体を運ぶとしよう。

——

「ブラックボックス」

 あらゆるものを収納する暗黒空間。

——

 ルービックキューブ程の黒い箱。これに収納していく。我ながら便利な魔法を作ったものだ。

 回収が終わった。朝になる前にギルドへ急ごう。


——


「ええっ!? これを貴方一人で!?」

 ギルドの裏庭。そこに大量のゴブリンの死体を出したら驚かれた。やりすぎたか? いやでもこうでもしなければ資金が足りない。

「まぁ、夜目が効くんでな。報酬は?」

「基本報酬が1000G、討伐数報酬は……今は正確には言えませんが10000G程になるかと」

 ふむ。ということは手取り1100Gだな。宿代としては上等。そうだ、今ある資金で日除けのローブでも買おう。日差しが辛い。

「ではまた受け取りに来る」

 道具屋に行こう。


——


「いらっしゃい! 何をお探しで?」

「日除けになるローブがほしい」

「それでしたら!」

 道具屋で様々なローブを見せてもらう。どれも手持ちで買えないわけではないが大きな出費になる。慎重に……ん?

「店長さん。あの黒いローブは?」

「ああ……アレかい。アレは曰く付きでね……どこに捨ててもここに戻ってくるんだ……薄気味悪いモンだよ」

「そうか。ちなみにいくらだ?」

「あんなのタダだよ。金払ってでも引き取ってもらいたいくらいさ」

 これは好都合。金を貰いたいとまでは言わないがタダなら貰ってしまえ。

「ならそれを貰おうか」

「いいのかい? うちとしちゃありがたいが」

 よし、ローブが手に入った。ついでにマナポーションも買っておこう。夜になるまで宿屋で休憩だ。


——


「ぐぬ……あまり眠れなかった」

 寝起きはなんとも悪い。というのも……

——

「不眠症」

——

 このマイナスステータスの影響だ。

 とにかくギルドに行ってクエストを受けるとしよう。


——


「いらっしゃいませ! あ、Dさん。今夜もですか?」

「ああ。何か割に良いものはないか?」

「それですと……」

 提示されたのは迷宮探索。特に指定はないが強い魔物を狩ればそれだけ良い報酬が得られるという。

「無理はなさらないように……」

「分かった。やれるだけやろう」

 いざ迷宮へ。


——


「ふむ……迷宮も深度が浅いと大した魔物はでないんだな」

 迷宮で狩りを始めて一時間、特に強い魔物はいなかった。更に時間帯が時間帯なだけに他の冒険者に出会うこともない。時間帯による魔物の強さの変化は迷宮でも適用されるようだ。

 と、宝箱を発見。開けてみよう。

「……? アタッシュケース?」

 中にあったのはいかにもなアタッシュケース。これも開けるとしよう。

「ほう……リボルバーか」

 中身は大型のリボルバー式拳銃。熊でも殺せそうだ。……思いついたぞ、魔法を。

——

「ブラックマグナム」

 拳銃型としては大威力。

 6発毎にリロードが必要。

——

 大型の魔物が出た時に使えるだろう。ストッピングパワーもありそうだ。連射がブラックバレットよりも効きにくい欠点はあるが。

 よし、2丁スタイルでいこう。狩りの速度も上がるはず。


——


 なんだかんだと第二層最奥付近まできた。しかしそろそろ帰らないことには夜が明けてしまうだろう。最奥まで攻略したかったが仕方あるまい。成果もそれなりにあった。今回はこれで満足だ。

「ん……?」

 元きた道から何やら声がする。魔眼で見てみるか。

……ほう、大きめのドラゴンに三人パーティが苦戦しているようだ。しかしどこから湧いた? 撃ち漏らしがあったのか?

 あ、男二人が逃げた。残りは女性が一人。少なくとも前衛ではないだろう。このままでは倒されるだけだ。ふむ……

——

「シャドウステップ」

 影の中を高速で移動する魔法。

 影から影へ飛び移ることもできる。

——

 助けるとしよう。見てしまった以上、死なれては寝覚めが悪い。シャドウステップなら充分に間に合う。

 女の子に向かって爪が振り下ろされる直前。私はドラゴンの前に立っていた。

——ザシュッ!

「かっ、くあっ……」

 まともに一撃食らってしまった。死んだな。だが……

 私にとってはあまり関係のない事である。たかだか残機が1減っただけだ。

「死ね。羽根付きトカゲ」

——ドンッ!

 ドラゴンの眉間に1発。ブラックマグナムを撃ち込む。6発分を凝縮した1発だ。当然……

——ズズン……

 ドラゴンは沈黙した。


「君、大丈夫かな?」

「え、あ、はい……」

 小刻みに震える。よほど怖かったのだろう。とにかくドラゴンの死体を回収して迷宮から脱出だ。


——



「ふぅ。ギルドに到着。君、歩けるかい?」

「はい……大丈夫です」

 この女の子、アイナを背負ってギルドまで来た。なにやらギルド内が騒がしい。明け方だというのになんだろうか?

「迷宮二層にアークドラゴンが出た! 緊急討伐クエストを設置!」

 やーやーと騒いでいる。アークドラゴンとはなんだ? まさか……

「受付さん、アークドラゴンってのはこれか?」

「ええええ!? Dさん単独で倒したんですか?」

 ブラックボックスからドラゴンの首だけ出して見せると辺りがサッと静まりかえった。これは面倒なことになる。まぁ、仕方ない。


——


「あ、あの、Dさん。本当に私なんかで良かったんですか?」

「ん、ああ。まあな」

 あの後ギルドで勧誘合戦。アークドラゴンを倒したとなればパーティの勧誘は必至だそうだ。

 そこでアイナがすでにパーティメンバーであると言って逃げ出してきたわけである。

「あいにく私は日中大きな活動ができない。動くなら夜だが」

「それはいいんですが……Dさん、大丈夫ですか? 息も荒いし……」

——

「動悸」

「息切れ」

——

 これもマイナスステータスだ。夜になると問題ないが日中、特に正午あたりは辛いものがある。

「持病みたいなものさ。夜になれば良くなる。アイナは今からどうする? 夜に集合でも構わないが」

「Dさんの近くにいます。放っておけないというか……」

「そうか」

 それきり特に何か話すでもなく時間は過ぎていった。


——夕暮れ

「よし、行こうか。アイナ」

「ええ」

 今日も今日とて迷宮探索。割にいいのはそれくらいしかない。

「アイナ、君は何を得意と?」

「私は支援魔法と風魔法がメインです。それから『精霊契約』を持っているんですが……まだ使いこなせなくて」

 ほほう、ギフト持ちか。確かに使いこなせなければギフトは何の意味もない。その点あの三人は凄かったのだろう。

 まぁとにかく二人で迷宮探索だ。


——



「ふむ……やはり二人の方が効率はいいな」

 アイナと迷宮に潜り一時間、倍以上の速度で攻略し、第二層最奥まできた。この調子なら第三層も攻略できるだろう。

「夜は入ってくる経験値が凄いですね……」

「アイナもやるじゃないか。支援は素直にありがたい」

 倒す、ドレイン、収納。これの繰り返し。時々見つかるお宝も収納。

 この迷宮は入るたびに形が変わるというもので飽きがこない。もちろん魔物自体は階層によって強さがほとんど決まっているが。

 それに早く進めているのはアイナの風魔法が大きい。彼女は風の流れを読み、次の階層への階段を見つけることができるのだ。

「おっ、アイナ。宝箱だ」

 第二層最奥の広間には宝箱が大量にあった。片っ端から開けていこう。

 良さげな装備、消耗品、お金、装飾品。第二層最奥の広間でこれだけ良いものがあるのだ。深くなればもっといいものがあるだろう。

「どうだ、アイナ? 良いもの見つけたか?」

「はい。魔法を強化してくれる腕輪を見つけました!」

 幸先ヨシ。このまま第三層も攻略だ。


——


「第三層もあまり強い魔物はいないな」

 多少大型も出るし、小型も強化されているがあまり苦にはならない。大型はブラックマグナムで、小型はブラックバレットで仕留められるし、アイナの風魔法が魔物を足止めしてくれるのも大きい。第二層と同じくガンガン進めて……ん?

「アイナ? どうした?」

「いえ……ちょっと疲れてしまって……」

 確かに魔法と動きのキレが悪い。私のペースに合わせて動けばそうもなるだろう。配慮が足りなかった。

「休むか?」

「ええ。そうして頂けると」

 ならば先程敵を排除した一室で小休止だ。

——

「ダークエリア」

 一定範囲に闇結界を張る。

——

 よし、魔物も入ってこないだろう。一息つこうか。ブラックボックスから茶器を取り出し、「ダークファイア」で火を起こして湯を沸かす。ちょっとしたお茶会としよう。

——

「ダークファイア」

 基本的な闇炎魔法。

——

「ふう……」

「まさか迷宮でお茶するなんて思いませんでした」

「普通はそうだろうな」

 こんな危険と隣り合わせな空間で呑気にお茶など出来ようはずもない。それは一般的なパーティなら、の話ではあるが。

 と、アイナがうつらうつらしている。それもそうか。私と違い、夜行性ではないのだから。

「アイナ、ここなら安全だ。一眠りするかい? 私は狩りに出るが」

「ふぇっ! でも……そんな」

「大丈夫。帰る時間になれば迎えにくるから」


 さて、単騎でどこまでいけるかな?


——


「ふぅ。こんなものか」

 結局、第三層の最奥手前でタイムアップ。隅から隅まで見て回っていたら単騎だとこうなるか。アイナと合流してギルドへ向かおう。

——

「シャドウテレポート」

 非戦闘時に予めマークした影へ転移する。

——

 試しに使ったが上手くいった。アイナはまだ眠っている。起こすのも可哀想だ。抱き抱えて街までシャドウテレポートしよう。


「アイナ? アイナ?」

「ん……あれ? ここは?」

「街の入り口付近だよ。迷宮から帰ってきたんだ」

 もうすぐ夜が明けようとしている。早くギルドへ向かわねば。


——


「あっ、Dさん。今日も大漁ですか?」

「ああ、まあな」

 私の帰還に目を輝かせる受付……リィンとか言ったな。

「先日の報酬が出ていますが受け取りますか?」

「ん。受け……はっ!」

 突如閃く。私が受け取れば1/10だ。だがパーティメンバーのアイナが受け取れば……あるいは!

「受取人はアイナでも問題ないか?」

「ええ、ギルドは構いませんが」

「なぜ私が?」

「頼む。試してみたいんだ」

「は、はぁ……」

「では、ゴブリン退治の報酬11000Gと迷宮探索の討伐報酬100万Gになります」

 さぁ、どうなる?

——チャリーン

「101万1000G」入手。

 やはり正解だ! 私が受け取らなければいいのだ。

「わぁ……凄い金額……ギルド金庫に大半は預けても?」

「ああ。アイナのいいように頼む。このパーティの金庫番はアイナだな」

 資金問題解消。後は今回の収穫を裏庭で出して撤収。

 宿も良いものにしようとアイナから提案がありそれに従う事に。

「日の出ている間に買い出しなんかは私がしますね。Dさんは眠っていて下さい」

「すまないな」

「いえいえ」

 異世界生活。上手くいきそうだ。

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