ウィリアムside矛盾するハルマ
好奇心を滲ませた顔で王都の街をそぞろ歩くハルマは、可愛らしかった。その印象的な風貌は街行く人の注目を集めていたけれど、ハルマ自身は見られている事よりも周囲を楽しむ事に忙しいようだった。
サラリと揺れる艶のある黒髪は見た事の無いデザインで整えられていて、ハルマのこの国には見られない透明感のあるクリーム色の肌の色と、目が合うと離せなくなるあのもの言いたげな黒い瞳を引き立てていた。
ハルマを泉から連れ戻った日、私は心持ちウキウキしながら、約束通り夕食に連れ出しに部屋へ行ったんだ。すると廊下をこちらに向かって、ハルマと友人のケインが歩いて来た。
明らかにケインはハルマをターゲットにしたのが判って、私は胸の奥がザワつくのを感じた。友人ながらケインは普段から遊び人で知られていて、私はハルマをケインから引き剥がしたいと思った。
そんな風に思う自分にも戸惑ったけれど、その前にハルマが私の側に来てくれた。そんなハルマにすっかり気分は上昇した。ハルマは私が泉から連れてきた関係で、副指揮官に面倒を見るように任されていたんだ。
私はそれを理由に、ハルマの様子を見るために毎日夕食を一緒に摂っていた。ハルマは私にいつもキラキラした眼差しを向けてくれて、すっかり懐いてくれた。
周囲の騎士たちがその事で私にやっかみを言うほど、実はハルマは人気があった。観察していると、ハルマはあからさまな誘いにもキョトンとして、鈍感だった。
それか、あまりその手のことに経験が無くてどうしていいのか分からないのかもしれなかった。私を慕ってくれる、19歳という割にこなれていない可愛いハルマと過ごすうちに、どんどん彼に惹かれていったんだ。
その週末、私はハルマと連れ立って騎士団の制服を仕立てる為に王都にいた。思わず似合いそうな服を贈ってしまったけれど、遠慮がちなハルマに、私にはますます好感を持った。
でも、楽しげに街歩きを楽しむハルマから、明らかなお誘いを受けた時は驚きと一緒に、私が受けた純情そうな印象とのギャップになぜか腹立ちを感じた。
私はハルマのしなやかな腕を掴むと、路地の有名な連れ込み街へ足を踏み入れた。ここは何度か利用した事があった。私は自分でも分からない腹立ちに任せて、シャツのボタンを外して私を誘うハルマを、何も言わずに抱き寄せると乱暴に口づけた。
ハルマが息を呑んで、私の口づけに素直に従っていたけれど、直ぐにハルマがほとんど経験がない事が分かってしまった。私がその事をハルマに告げると、ハルマは潤んだ黒い瞳を私に向けて言った。
「やめないで…。」
誘惑をしてきた、こなれたハルマと、口づけに慣れていないウブなハルマ。どちらが本当の君なのか…。
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