厩舎での再会

僕はロイさんを随分悲しませてしまった事に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。今すぐ抱きついて僕がフォルで、ちゃんと生きてるよって言ってあげたかったけれど、それは叶わない。


だから僕は、一歩前へ進み出るとロイさんに挨拶をしたんだ。人間としてもロイさんと仲良くしたかった。



「こんにちは。僕ハルマと言います。僕、森の奥で騎士団に助けてもらったんです。僕も彷徨っていたんですが、無事に森から出て来れたんで、きっとその馬も無事に抜け出せると思いますよ。


…僕、馬が好きなんです。ちょっと見せてもらっても構いませんか?」


ロイさんは、僕を少し驚いた様に見つめると、にっこり笑って言った。



「…あんたはフォルに似ているな。あの黒い瞳を思い出すよ。あまり近づくと蹴られるかもしれないから、遠目に見る分には構わないぜ。さぁ、こっちだ。」


僕たちはロイさんの後をついて行った。ウィリアムは少し悲しげな表情で、馬達を眺めていた。フォルの事、いや、僕の事を思っているのかな。僕はここにいますよ…。



柵の向こうに馬達が思い思いにのんびりと歩き回っていた。僕は柵に寄りかかると、無意識に呼び掛けた。たぶん人間には馬の鳴き真似に聞こえるだろうそれは、放牧されていた馬達の耳をこちらに向けさせた。


『ねぇ、フォルだよ。みんな、心配掛けてごめんね。』


馬達が僕を一斉に見つめながら、微動だにしなかった。それもそうだ。今の僕は人間にしか見えない。しばらく緊張感のある沈黙が続いたけれど、一頭のリーダー格の先輩馬が大きくいなないた。



『フォル⁉︎どう見ても人間だろ⁉︎』


他の馬達がブルルと顔を揺らしながら、そうだそうだと相槌を打っている。僕はクスクス笑いながら、森から僕を乗せてきてくれた同期の新馬、ビッツに話しかけた。


『ねぇ、ビッツ。僕と会った時の事、みんなに話してよ。』


ビッツは後退りながら、気が乗らない様子で話し出した。



『フォルの足跡が無くなった泉に、この人間がいたんだ。素っ裸で。それで俺に自分はフォルだって言ってきて。俺が乗せて帰ってきたんだけど、…この人間はフォルだと思うよ。フォルの気配がしたから。」


ビッツがそう言ってくれたので、僕は後でウィリアムに頼んでビッツに人参をあげようと思った。リーダーや他の馬達は、恐る恐る僕のところに近寄ってくると、順番に顔を差し出して僕におかえりって言ってくれたんだ。



僕は嬉しくてちょっと泣きそうだったけど、後ろにウィリアムとロイさんが居る事をすっかり忘れていたんだよね。あー、どうしよう!

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