③機骨と魔術

暁太郎

プロット


◯参考作品

ターミネーターシリーズ


◯コンセプト

 アンドロイドVS魔術、異種格闘技戦的な能力バトルもの。

 人類滅亡後の世界での異世界ファンタジーがお題なので、ポストアポカリプスSFと異世界ライトファンタジーをごちゃまぜした娯楽作品。

 旧人類に製造されるも永い時を地下シェルターで独り過ごしていたアンドロイドが、新人類によって発掘され、やがて成り行きで彼らを守る為に戦う。


 

○世界観

 地球に突如として異世界の惑星がめり込むように転移し、連結した世界が舞台。

 地軸を貫く形で繋がれた二つの惑星が起こす天変地異、その後に起こった双方の人類による戦争の末、両者の共倒れで歴史は一旦幕を閉じた。

 それから一万年後、雪だるま状のまま安定した二つの惑星は地球側を「胴」、異世界側を「頭」と呼称され、エルフや獣人などの新人類が闊歩する世界へと変貌していた。

 二つの星の連結部分は両者を分かつように海となっており、舞台は「胴」側にある港街から始まる。


 基本の世界観は中世的な文明にエルフや獣人、魔法が当たり前になっているスタンダードな異世界ライトファンタジーだが、ダンジョンと呼ばれるものの中に旧人類の遺跡があり、彼らが製造した合金や道具などを収集するトレジャーハンター(冒険者)がいる。

 


 

○用語

・操魔師

 魔法使い。操魔術を使い、超常の現象を起こせる者。魔力を体内に生成する才能と魔力を操る才能を必要とし、自分の術式を得る為に長年の鍛錬を必要とするため、戦力や人材として重宝される。


・機術

 文明崩壊前の戦争において、地球側の旧人類が異世界側の旧人類に対抗する為に作られた、操魔術を再現する兵器。多くは戦争の際に失われたが、一部はまだ現存している。魔力を操る才能さえあれば、操魔師のように自ら魔力を作る必要がなく、訓練もいらない為、多くの人間が狙っている。


・アンドロイド

 かつて地球側の旧人類が戦争の為に製造した人型戦闘機械の総称。

 魔力を動力としたコアに、操魔術を通しにくい合金をボディに使用している。

 多くの個体が戦火により破壊されたが、機動していないものは地下シェルターなどの遺跡で長く眠りについていた。しかし、近年になって世界中に散らばった個体が一斉に起動し、行動を開始している。

 世界の保全、侵略者の排除を第一としてプログラムされており、主が滅びた今となっても、現在の地球で繁栄している新人類を侵略者と定め、一人でも多く殲滅せんと暗躍する。

 それぞれの個体で外見的特徴や振る舞いに違いがあり、感情も豊かに見えるが、あくまで与えられた命令をこなす為の最適化である。情と言えるものは無い。


・ニラネリヤ

 第一巻の舞台。

 地球と異世界の惑星の連結部分、現在は海となっている地帯の「胴(地球)」側にある港街。

 街が面している海域は次元が不安定で航海にはかなりの危険が伴う。先人が見出した航路を渡らなければ反対側の港にはたどり着けない為、交易拠点として重要な意味合いを持つ。

 最近になって参入してきたエッジ商会の暴力的な手口により、その頭たるクローズに乗っ取られつつある。

 観光地としても有名で、海のはるか上空、惑星の連結部分の帯をなぞるように太古の昔から飛行している、旧人類が造った空中要塞「ベルトバード」を見物しようと各地から観光客が集まる。


 

○登場人物

・シング


「良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい? ……あーっ、これ! このセリフ言ってみたかった!」

「良い知らせっていのは、盗まれたモノを取り戻せたってこと。悪い知らせはその良い知らせがウソって事だ」


 主人公。

 埋もれていた旧人類の地下シェルターの中で眠っていたアンドロイド。旧人類の骨格を模したような外見をしている。

 己の意思で動かせるスライムを身に纏っており、それを擬態や武器に使用している。擬態時の姿は二十代前半の旧人類の男性。

 自身がシェルターにいる以前の記録を思い出せず、シェルター内に残っていた映画を見て永い時を過ごしていた。

 唯一の生活習慣であり楽しみでもあった映画の再生機器がある日突然壊れ、起きる意味もないので半永久的に眠っていたところをヒロインのリェーナが襲われていた際に覚醒し、成り行きで彼女を救う。

 その後、実力を見初めたリェーナが出任せで口走った「助けてくれたら映画を再び見れるよう手伝う」という嘘を本気にして彼女の相棒となる。

 見ていた映画の影響か、ノリが軽く人をからかうような言動を取ったりすることが多い。思考自体はアンドロイドらしく合理的。しかし他のアンドロイドのように決して情がないわけではなく、むしろ映画で見たヒーローのような利他精神に理解を示している。

 戦闘時は本体と変幻自在であるスライムの同時攻撃で敵を圧倒する。

 正体には謎が多く、出自も他のアンドロイドと一線を画しており、謎を巡る話も物語の縦軸の一つ。


 

・リェーナ


「他人に理解してもらえなくても、自分が必死に求めているって事が重要なんじゃないかなって、思います」

「映画、いいですよね、エイガ! ……その、エイのところがエイエイオーって、感じで」

 

 ヒロイン。

 エルフ族の女性で年齢は37歳(エルフの寿命は150~170歳ほど)。東の森一帯を束ねるエルフの族長の次女だったが、魔力を持たない為に不遇に扱いを受け、その影響か旧人類の遺物に興味を持つ。しかし、その趣味がさらに周囲の反発を招いた為、家族に迷惑をかけまいと一人出奔し、冒険者となる。

 冒険者ではあるがもともと育ちが良いため基本的に敬語で物腰も柔らかい。旧人類の史跡や発掘物が関わると我を忘れて没頭しがち。旅の中で様々なコレクションを手に入れており、その用途を推理しては見当違いの答えを導き出している。

 友人であり街の領主でもあるフェイムの依頼で地下シェルターを探索していたが、その途中で同行していた仲間に裏切られる。逃げている所を偶然シングに救われ、その強さを目の当たりにして「自分を助ける代わりに映画を見せる」という約束のもと協力を得る。

 しかし実のところ「映画」というものが何かさっぱりわかっておらず、騙した形となっている状況に罪悪感を抱いている。

 操魔術は使えないが、銃型の機術を護身用として持っている。



・クローズ


「正当な目的は屈強なる信念と力を与えてくれる。鉄人形ごときにはない、尊い力だ」

「……はるか古の格言にこうある。「まずは隗より始めよ」と」

 

 悪役。

 牛獣人の男性。角が頭から生えている。40代後半。

 エッジ商会のトップ。数ヶ月前からニラネリヤに参入している。傘下のギルドによる裏工作や恐喝など、強引な手段で急激に街で勢力を伸ばす。世界各地に散らばる旧人類の遺物に異常な執着を見せ、特にシングに対しては強い殺意を抱いている。

 昔は物同士を接合する操魔術を用いて医者をしていた。妻と息子との旅の途中でアンドロイドと遭遇し、家族を殺され、自身も手足を失う重傷を負う。偶然にも落雷にによりアンドロイドが壊れ、生きる一心でアンドロイドの手足を自分の欠損部分と接合した。

 その際、補った手足から記録の一部が流れ込み、自分を襲った存在がアンドロイドである事、同じような機体が世界中に散らばっている事を知る。

 以来、社会に潜り込み新人類を脅かすアンドロイドを抹殺する事を誓うが、世間はアンドロイドについて全く知らず、王国もその実在を認知しようとしないため、己だけの力で成り上がり、権力を得て王国の上層部に食い込んだ後、アンドロイド撲滅に向けた改革を企んでいる。



・カートゥル


「てめぇ調子こいてんじゃねぇぞ! 七星の剣聖と呼ばれたこの俺様を知らねぇのかァ!?」

「引っかかったな。なに真に受けてんだよォ。方便に決まってるだろ。何だよ、七星って」


 黒幕。

 狼獣人の男性。30代後半。頭部も狼。ギルドや騎士団に所属せず、その時々で雇われる傭兵。一見すると調子に乗った三下のような言動だが、それは相手を油断させる為の振る舞いで、実際の所は視野が広く冷静沈着。物語の二ヶ月ほど前からニラネリヤに流れ着く。

 正体はアンドロイド。もともとの骨格に擬態のための人工皮膚を覆っている。真の目的はかつて地球側の旧人類が下した「人類を守れ」という命令のもと、異物たる新人類をより多く抹殺する事にある。傭兵という身分で世界を巡りつつ、旧人類が作った大量破壊兵器を探している。

 当初は領主に雇われてシングらに協力していたが、それはアンドロイドの破壊を狙うクローズを始末する為であり、最終的に大量破壊兵器と街の存亡を巡ってシングと対立する。

 新人類に肩入れするシングに興味を持ちつつ、自身に引き入れようと画策している。



・フェイム


「たかが小娘と嘲りたくば、好きなだけほざくがいい! いずれその口から出るのは許しへの懇願だけになるのだからな」


 兎獣人の女性。兎耳が頭から生えている。19歳。舞台となる街の領主の娘であり、リェーナの友人。エッジ商会の下手人により領主であった父を殺され、若い身でありながら臨時として領主を継いでいる。

 凛とした佇まいの女性で、街のトップとして重圧に耐えながらも責務を果たそうとする。街への侵略と言っても良いエッジ商会の拡大に対抗するため、地下シェルターに眠る機術を手に入れようとリェーナに依頼した。

 シングをエッジ商会への切り札として引き入れる。



・フローベル


「どんな物事にもバランス……冷たくも熱くもない適温って奴が必須なのよ」

「あんたのおアツ~い野望に冷や水ぶっかけに参りましたってワケ」

 

 猫獣人の女性。20代後半。猫耳と尻尾がついている。舞台となる街における警備隊長及び王国最高ランクの操魔師。極度の暑がりで、露出の多い黒衣を着ている。

 常に気だるげな表情と砕けた口調をしているせいか誤解されやすいが、仕事にはかなり真剣に取り組む。物事のバランスを取る事を好み、「適温」という比喩をよく使う。

 使う魔術は「氷」。目玉のような紋様がついた四つの氷球を作り出し、氷球が囲んだ領域内の状態を全て把握、氷結させる。

 能力で周囲にいる敵を把握し、凍てつき倒れた敵を自分の目でもう一度見下ろす戦い方から「二俯の魔女」とも呼ばれる。

 幼い頃に同じ操魔師である父から延々と体温が上がり続ける呪いをかけられている。現在も呪いは解除できておらず、氷結魔法で常に身体を冷やす必要がある。

 フェイムの右腕として彼女を支えつつ、エッジ商会打破への一手を探っている。

 シングの出自を疑い、最初は殺そうとするが後に街を守る為に協力し合う。


第一巻 全四章構成 文字数十一万字前後

 第一章

 港街ニラネリヤ。街に臨む海の上を飛行する空中要塞ベルトバードからある日一発のレーザー砲が放たれ、街外れの土地から旧人類の地下シャルターを掘り出した。

 エルフの少女リェーナは友人であり街の領主でもあるフェイムから依頼を受け、二人の仲間と共にシェルターを探索する事になった。

 探索の中で機術を見つけるが、直後に仲間と思っていた二人から攻撃を受ける。二人は街の実権を握ろうと暗躍するエッジ商会の手先で、リェーナは窮地に立たされる。逃げた先で、リェーナは横たわる人骨の形をした鉄のようなものを発見する。

 刺客に追いつかれたリェーナだったが、人骨が突然目覚める。

 驚いた刺客たちは人骨を倒そうとする。しかし、スライムを操る人骨を前に呆気なく倒される。

 その様子を見て茫然とするリェーナだったが、我に返り人骨に銃を向ける。

 突きつけられた銃を見て、突然人骨が「好きな映画で見たもの(リボルバー銃)そっくりだ!」とはしゃぎだす。

 リェーナは相手がアンドロイドと呼ばれるものである事。ずっとシャルターで暮らしていて、映画と呼ばれる何かを見て過ごしていたが、ある日見れなくなり、以来今までずっと眠っていた事を聞く。

 静かになった事で再び眠りにつこうとするアンドロイドだったが、リェーナは彼こそ街を救う一手になるのではないかと引き止めようとする。「映画について知っているので、再び見れるように手伝うから自分に協力してほしい」と咄嗟に口に出したところ、アンドロイドは大変食いつき二つ返事で承諾した。

 思わぬ戦力を得る一方、映画とは一体何なのかさっぱりわかっておらず、嘘をついた事にリェーナは内心焦りを感じる。

 シェルターの出口へ向かう道中、リェーナはアンドロイドに外の世界について説明をする。それから、名のないアンドロイドに「名前を考えてみては」と提案する。アンドロイドは少し考えた後、自らを「シング」と名乗った。それから元の人骨のような格好のまま人前に出れば確実に騒ぎになるので、スライムを纏って擬態する事にした。

 シャルターから出た瞬間、シングの身体が纏ったスライムごと凍りだす。街の警備隊長であり操魔師であるフローベルの攻撃だった。自身の魔術でシャルター周辺を監視していたが、把握していない正体不明の人間がいきなりシャルターから出てきた為、牽制をかけていた。

 慌ててリェーナが事情を説明するが、旧人類の遺物に懐疑的な見方をするフローベルはさらに疑念を深め、目的を吐かせようとさらに氷結魔法を強くする。

 シングは命乞いをするフリをして虚をつき、まだ凍っていないスライムをフローベルの顔にへばりつかせる。

 気管を塞がれ呼吸ができなくなり、シングに停戦を提案されてもなお攻撃の手を緩めないフローベルだったが、何者かに魔術展開の要であった氷球を壊され、張り付いていたスライムも取り除かれる。

 戦いを止めたのはカートゥルという傭兵だった。雇い主であるフェイムも後から現れる。

 リェーナがフェイムに探索の報告をする。エッジ商会、それを率いるクローズの手があらゆる所に伸びているのを訴え、シングを仲間に加える事を提案した。

 正体不明、しかも旧人類の兵器を身内に受け入れる事にフェイムは逡巡する。フローベルは相変わらずシングへの敵愾心を引っ込めようとせず、フェイムに反意を示す。

 カートゥルはフローベルの危惧に「害意があるならば、とっくに外に出て活動している」と反論する。リェーナもその意見に同調し「自分が使っている武器も旧人類のもの」とフォローするのを見て、フェイムは監視付きの条件で受け入れる事にした。


 第二章

 一行が街に帰る。

 シングは昼間なのに街の人気が少ない事を指摘する。

 エッジ商会の暗躍により治安が悪化し、殆どの民が家に引きこもるように生活するようになったせいだとフェイムは説明した。

 フェイムの家、領主の館に招かれたシング達は、改めて説明を受ける。

 街がエッジ商会とその傘下のギルドの活動により内部より侵略されつつある事。強引な手段で他の商店や組合を吸収し、逆らう者は裏で脅しを受けたり始末されてしまう事。街の警備隊も暗殺や恐喝などの妨害工作で数を減らし、有力な操魔師もフローベルしかいない事。

 目下の課題は警備隊の再建、ひいてはクローズが地下シェルターから機術を奪う前に、回収し、戦力として確保する事だった。

 シングはそれを「回り道すぎる」と断ずる。

 手っ取り早くエッジ商会のトップであるクローズを始末すればいいとシングは言う。擬態能力のあるシングならば、クローズの居場所さえわかれば実行可能だった。

 敵と同じような手段を取る事にフェイムは難色を示す。リェーナは「殺さなくても逮捕という形にすれば良いのでは」と提案する。クローズの逮捕を皮切りに一気にエッジ商会を取り締まる作戦だ。

 フローベルはシングの策に気乗りはしないが、自分の魔術でクローズを探す事は出来るかもしれない、と理を認める。

 カートゥルは「反対する理由はなさそうだが出番がなさそうなのが気に入らない」とおどけて言った。

 フェイムは話を取りまとめ、早速準備をして翌日から行動しようと指示を出す。

 その日の夜、館の外で夜空を見上げるシングにリェーナが話かける。シングは夜空なんて映画でいつも見ていたのに、実際見ると不思議な気分になると言う。夜空の向こうには宇宙があって、宇宙が舞台になる映画もあった。新しい映画は早く見たいが、いつか宇宙もこの目で確かめたいと話す。

 未知への憧れを話すシングにリェーナは共感し、自分の身の上を話す。

 生まれ故郷で魔力が無く蔑まれて過ごし、行商人から外のものや旧人類の遺物を密かに買うのが趣味だった。その趣味も周りにバレていよいよ居場所がなくなり、里を出た。冒険者となったものの、世間知らずで何度も危ない目に遭い、死にかけていた所をフェイムに助けられた事を話す。恩を返す為に何としても作戦は成功させたいと意気込む。

 シングは「それも映画でよく見た。利他精神というものだ」と言った。

 そして次にシングに映画の話題を振られ、リェーナは動揺する。

 しどろもどろで誤魔化していると、会話を聞いていたカートゥルがやってきて「映画ってなんだ」と訊いてくる。

 会話が逸れた事に安堵するリェーナはシングが再び空を見上げている事に気づく。

 しかし、見上げているのは空ではなく、いつの間にか頭上を埋め尽くしている無数のシャボン玉だった。

 シャボン玉は突然発火し、隕石のように館に降り注いだ。

 エッジ商会の刺客が攻めてきた。


 第三章

 シャボン玉の攻撃を合図とし、エッジ商会の刺客が続々と攻めてくる。その中には操魔師や機術使いもいた。

 シング、リェーナ、フローベル、カートゥルはフェイムを守る為に応戦するが、狙いはフェイムだけではなく、シングの破壊にあるようだった。

 戦いのさなか、フローベルは重傷を負わせられてしまう。

 辛くも刺客たちに勝利するシングだったが、隙を狙ったクローズにフェイムを連れ攫われてしまう。クローズはシングに地下シェルターまで来いと誘う。

 シングとリェーナ、カートゥルはクローズを追って地下シャルターに再び入る。シェルターの防衛装置が三人に襲いかかる。クローズは何故かシェルターから敵と認識されていないようだった。なんとか攻撃を掻い潜る三人だったが、途中で罠にかかりカートゥルと別れてしまう。

 最深部にまでたどり着くと、そこは兵器工場だった。巨大な倉庫の棚には沢山のドローンが配置されている。

 さらに奥に進むと、フェイムを人質にとったクローズが待ち構えており、背後には巨大ロボットが佇んでいた。

 「これを見せたかった」とクローズは言い、自身が家族をアンドロイドに殺され重傷を負った事と、そのアンドロイドの身体を使って自分の失った手足を戻したと明かす。

 偶然にもサイボーグに近い存在となったカートゥルは、地下シェルターにはアンドロイドと誤認されているので攻撃されなかったようだ。

 クローズは旧人類が造った兵器の危険性を訴え、アンドロイドひいてはシング含めて全て滅ぼすべきだと主張する。

 そして、旧人類の兵器と同調できる自分こそ、新しい救済者にふさわしいと語る。

 クローズはフェイムを盾にしてシングの殺害を迫った。シングはリェーナが自分を裏切る覚悟を決めていた。リェーナが映画を知っていると嘘を付いていた事を察していた。

 「俺は所詮『シング(物)』だからな」と、シングはリェーナに撃つ事を促す。しかし、リェーナはクローズを拒絶する。自分の意見だけで完結しようとするクローズを非難した。

 クローズは巨大ロボットで三人をまとめて始末しようとするが、ロボットに乗り込む直前に潜んでいたカートゥルによって殺される。

 無事と再開を喜ぶリェーナだったが、カートゥルはリェーナに突然斬りかかる。



 第四章

 シングがリェーナを守り事なきを得るが、カートゥルの行動の意味がわからず、問いただす。

 カートゥルは突然、「ロッキーは名作だったな!」とシングに語りかけ、自分の正体がアンドロイドであると明かした。真の目的は一人でも多くの新人類を抹殺する事だった。アンドロイド撲滅を誓うクローズはカートゥルにとって厄介な存在であり、クローズを殺す機会を伺っていた。

 さらに、カートゥルはこの地下シェルターを掘り起こしたベルトバードのレーザー砲の原因を作ったのは自分だと言う。ベルトバードは接近する飛行物体を自動で迎撃するシステムがあり、カートゥルはドラゴンを用いてわざとレーザーを撃たせたのだった。

 全ては地下シェルターに残された兵器を使い、ニラネリヤに住む人間を皆殺しにする為だった。

 そして、カートゥルはシングに同じアンドロイドとして協力する事を訴え、作戦成功の暁にはシングが求める新しい映画を見せると語りかける。

 シングは映画ロッキーを4だけしか見たことがなく、他にも沢山のシリーズがある事に興奮する。カートゥルに同調し、ついていくそぶりを見せたシングだったが、カートゥルに不意打ちを与える。

 シングの攻撃を直前で防いだカートゥルは「何故だ」とシングに問う。

「映画で色んなものを見た。外に出て初めて夜空を見た。そうしたら宇宙も見たいと思った。利他だって同じ事だ」と、リェーナへの恩義を返そうとする。

 シングはカートゥルと戦い、勝利する。

 しかし、それはカートゥルは自分のデータを巨大ロボットに移す時間稼ぎだった。ロボットは発進口から外に出る。

 同時に、多数のドローンがロボットの後を追い、空に向かって飛んでいった。

 シングはカートゥルの計画の全容を推理し突き止める。ドローン達をベルトバードに向けて飛ばし、ドローン迎撃のレーザー砲を街に浴びせる作戦だった。ロボットはドローンの司令塔兼護衛として利用していた。

 シングとリェーナはフェイムを引き連れて急いで街に戻る。ロボットは先んじて街に騒ぎを起こさない為、街を迂回してドローンを追うようだった。

 街に着くと、フローベルが待っていた。フェイムの無事に安堵し、今までの経過を聞く。

 住民を非難させるべきだとフローベルが部下に指示を出そうとするが、間に合うかわからない。フェイムは街を守る方法はないかと考える。

 そこにシングが先ほど戦った機術使いを連れてこいと言う。

 スマートウォッチを使っていた機術使いに会うと、シングはリェーナに術をかけろと命令する。リェーナの銃による弾丸精製能力を加速して、魔力を含んだ弾丸を大量に生み出し一気にスライムに取り込む為だった。

 膨大な魔力を得てスライムは巨大になり、やがてリェーナの里で崇められている木人の精霊の姿になった。シングは海へと駈けていき、街をスライムの膜で包み込んだ。ベルトバードの砲撃が始まるが、スライムのバリアがレーザーを吸収していく。

 シングにカートゥルのデータが転送されたロボットが襲いかかる。

 海上でロボットと精霊が殴り合う。

 シングを助ける為にフローベルが海上から氷結魔法でロボットの動きを止める。しかし、振り払われ、ロボットの一撃を受けてフローベルは海に沈む。

 ロボットは特殊合金に覆われて攻撃を通さなかったが、シングは目(カメラ)の部分が脆い事を見出し、スライムを囮に本体で捨て身の攻撃を行い、内部から破壊する。

 カートゥルは倒れ海に沈み、ドローンも停止して海に落ちていく。

 街は守られ、戦いは終わった。


 エピローグ

 フローベルの病室にリェーナとフェイムが見舞いにやってきた。フローベルは海で漂っていたが、何者かに助けられて海岸まで運ばれたと話す。

 シングが生きていて、フローベルを助けたのだとリェーナは直感する。何も言わず去っていったシングを思い、寂しさを覚えた。

 その様子を見て、フェイムが言葉をかけ背中を押す。

 リェーナはシングを探す決心を固め、その後を追った。

 所変わって、ベルトバード内のコンピューター、そのモニターにシングのデータが表示されている。「データ送信完了、稼働中の全アンドロイドに危険度Sの対象として認識済み」とホップアップし、モニターの画面がシャットダウンする。


 

 二巻以降

 シングは映画を求めて旅をするうち、機術やアンドロイドを巡っての国家間の陰謀に巻き込まれながら、アンドロイド達と戦い、やがて自身の正体に迫っていく。

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