第132話 真の英雄、世界を救った勇者ナツキ(何故かベッドでつよつよ、皇帝娘たちから求婚されまくり)

 気を失っていたアリーナが目を覚ました。まるで何もかも夢だったかのように。


「んぁ……ううぅ~ん。ここは……はっ! そ、そうですわ、国賓こくひんの姫巫女様が! って、そ、そう夢ですよね。まさかそんな、ヤマトミコで半神半人と呼ばれている姫巫女様に暴挙を働く者などいるはずがありません。疲れているのかしら……」


 起き上がって周囲を見たアリーナの目に飛び込んできたのは、その姫巫女がナツキの膝の上で腹ばいになり、高く尻を上げている光景だった。


「って、あ、ああ、あわわわわっ! いっやぁああああああああ! 夢じゃなかったぁああああ!」


 現実は無情である。まさか国賓の皇帝に等しき女性が恥ずかしい目に遭っているとは思うまい。


 いつも冷静沈着で才女のアリーナが、これ以上ないほど取り乱している。こんなのナツキに尻を打ってもらおうとする時くらいだ。



 そのナツキだが、相手が誰であろうと態度を変えるわけでもなく、ただ本人は無意識にエッチなことをしてしまう困ったちゃんだ。まあ、普段通りなのだが。


「あの、姫巫女さん、ごめんなさい。ボク、またやっちゃいましたか? 帝国式の伝統文化のつもりだったのですが……」


 そう話しかけるナツキだが、右手で彼女を抱き寄せながら左手で腰回りを撫でている。


「くはぁ♡ や、やめよ。無礼者がぁ♡ 撫でるなぁ! こ、こんな不埒な男は初めてじゃ」


 ナツキの膝の上で文句を言っている姫巫女だが、一向に離れようとしない。


「あっ、またやっちゃいました。グイグイくる女性には強気に攻めろってミアが」


「ミアとは誰じゃ」


「あのっ、幼馴染です。あと、お姉さんたちがお尻ペンペンやお腹ポンポンは帝国伝統文化だと教えてくれて」


「そ、そんな話は聞いたことがないぞ。お、恐ろしい。やはり帝国は恐ろしい国じゃ」


「確かに……。でも安心してください。これからは格差や差別も解消され住みやすい国になるはずです。アンナ様やアリーナさんが改革を進めていますからね」


 尚もナツキの手が姫巫女の尻を触っている。姉に躾けられた帝国文化は、そうそう治るものではない。


「はぁあああぁ~ん♡ 良いこと言ってるのにぃ! 良い話なのにぃ、その手が破廉恥過ぎて台無しじゃぁ! 嫌なのにぃ、無礼な男なのに離れられなぃい! 何なのじゃこの男はぁ!」



 アリーナが前後不覚になり、トゥルーデはアンナの目と耳を両手で塞ぎながらチラ見する。そして姫巫女はナツキのペンペンやナデナデで陥落してしまった。


 もう外交問題必至だろう――――


 ◆ ◇ ◆




いふぁい痛いいふぁいれす痛いですおふぇえさまお姉様


 ナツキがマミカにお仕置きされている。ほっぺを摘まんで引っ張られていた。


「ナツキぃ! あんたまた他の女に! もう、今日と言う今日は許さないんだしぃ!」



 やっと正気になったアリーナが皆を呼び、無事に姫巫女は救出された。ただ、ナツキから離される時の彼女は名残惜しそうな表情だったのだが。


 そして、いつもの如く嫉妬に狂った姉たちからナツキが攻められているところである。



「ナツキ様、いくら何でも国賓の姫君に手を出されるのは……」


 ワンレンボブの髪をかき上げながらアリーナが言う。いつもの冷静なアリーナに戻ったようだが、まだ顔が赤い。


「ごめんなさ――」

「よ、良い。許すぞ」


 ナツキが謝ろうとしたところに、姫巫女が割って入ってきた。


「待て、カトレア殿よ。此度こたび、顔を見られ結婚することになったは朕も不本意であるが、その恐れを知らぬ勇者の貫禄はあっぱれじゃ。うむ、男子おのこたるもの、そのくらいスケベでなくてはな」


 姫巫女がアリーナに説明する。あくまで結婚するのは変わらないらしい。


「しかし、ナツキよ……。その手つき、凄くエッチじゃな。そなたと結婚したら、毎晩寝所で鳴かされそうじゃ。フフっ♡ 怖い怖い」


 そんな姫巫女の目が妖しい。長いまつ毛が色っぽく影を落とし、流し目でナツキを見つめている。



 そんな姫巫女を見たアンナが不思議な顔をする。


「な、何があったのじゃ。余は目隠しされていて見えなかったのじゃ」


 そう呟くアンナだが、すぐにトゥルーデがフォローした。


「アンナ様は知らなくて良いんですよ。もう少し大人に成ってからで」

「こら、トゥルーデとやら、余を子供扱いするでない」

「ふふっ、アンナ様は可愛いですね」


 あんなに仲が悪かったのに、いつの間にか打ち解けている。小さなアンナにトゥルーデの母性本能のようなものが揺り動かされたのかもしれない。




 ドォォォォーン!

「姫巫女様、遅くなって申し訳ない!」


 勢いよくドアを開けて入ってきたのはヤマトミコ征夷大将軍の織田揚羽だ。

 入ってくるなりナツキの横で艶っぽい目つきの姫巫女を見て、彼女らしくない仕草でガックリと肩を落とす。


「ってぇええ! お、遅かったか……」


 うなだれる揚羽に姫巫女が声をかける。


「遅いではないか揚羽よ。何処を歩いておったのじゃ?」

「遅いのはそういう意味ではない。な、ナツキが……」

「おお、朕の婿が決まったのじゃ」

「やはり遅かったか……」


 ちゃっかりナツキを手に入れようと企んでいた揚羽だが、姫巫女の婿にされては取り返すのも難しいのだろう。



 そんなやり取りを見ていたアンナがナツキの近くに行く。


「さ、さっきから何を言っておるのじゃ。ナツキは余のお婿さんなのじゃぞぉ」


 そう言いながらアンナがナツキに抱きついた。


「アンナ様、甘えん坊ですね」

「えへへぇ♡ ナツキぃ、もっとギュッてして欲しいのじゃぁ」

「こうですか? ぎゅっぎゅぅー」

「きゃはぁ♡ 幸せなのじゃぁ」


 ナツキに抱っこされたアンナが甘えまくる。幼女の特権とばかりに。

 これには婿にしようとしているトゥルーデと姫巫女も黙ってはいない。


「ナツキさん! 私は抱っこしてくれないのにアンナ様は良いんですか?」

「えっ、トゥルーデさんは大きいじゃないですか」


 そう言ったナツキの視線が一瞬だけトゥルーデの胸に止まる。


「ナツキよ、朕も抱っこを所望じゃ」

 姫巫女が両手を広げる。ハグを要求しているのだろう。


「姫巫女さんも大きいからダメです」


 今度はナツキの視線が姫巫女のつま先から頭まで移動し、何とも言えない色っぽい彼女の顔で止まる。


「ナツキさぁーん! 大きいのが好みじゃないんですか?」

「朕は何故ダメなのじゃ! 納得いかぬぞ」


「ボクは大切な彼女がいますから、他の女性とハグはできません。アンナ様は子供だから特別です」


 ナツキがハッキリと伝えた。ハグは恋人だけだと。

 ただ、ペンペンやマリーアタックは良いのかと疑問が残るところだが。


「そうじゃ、ハグは恋人だけじゃぞぉ」


 ついでにアンナも恋人アピールだ。子供扱いされるのを嫌がっていたはずなのに、ちゃっかり子供の特権で抱っこは快諾するのだった。



「ボクはお姉さんたちと一緒に旅をしたり戦ったりして、これまで心を通じ合わせたりベッドを共にしてきました――」


 突然ナツキが姉妹シスターズとの惚気話のろけばなし……馴れ初めを話し始めた。


「時には一緒に抱き合って眠り、時にはフレイアさんの大きなお尻に躾けのペンペンを打ち込み――」


「ちょ、ちょっとナツキ! 人前で変なこと言うんじゃないわよ!」


 フレイアが恥ずかしい秘密を暴露され止めに入るが、勿論ナツキが止まるはずもなく……。


「最初は強気なのに、すぐ何でも言うこと聞きますと素直になるマミカお姉様とか、何度も腋を舐めろとワガママ言うシラユキお姉ちゃんとか――」


「ぎゃぁあああーっ! アタシの秘密をバラすなぁああ!」

「くふっ♡ ナツキの羞恥プレイ至福……」


 マミカが絶叫しシラユキが変な笑いを浮かべるが、当然ナツキは止まらない。


「すぐ人前で裸になりたがるクレアちゃんとか、何故か足の臭いを嗅がせようとするネルねぇとか――」


「ま、待ってくださいまし! なっくん、それは秘密ですわよぉ」

「ぐひゃぁああぁ! その黒歴史は忘れて欲しいんだナ」


 恥ずかしい性癖を暴露され顔を真っ赤にするクレアとネルネルだが、やっぱりナツキは止まらない。


「体は大きいのにワンコのように甘えてくるロゼッタ姉さんとか、レジーナは……まあ置いておくとして――」


「やめてぇ! 恥ずかしいのバラさないでぇ!」

「何で私だけスルーでありますかぁああ!」


 やっぱり恥ずかしい秘密をバラされるロゼッタと、あえて放置プレイされるレジーナだ。


「つまり……あれっ、何を言おうとしてたんだっけ? あっ、そうだ、大将軍のお姉さんたち七人は、ボクの大切な彼女なんです。大好きな彼女を一生守ると決めたんです。だから他の人と結婚はできません」


 ナツキが堂々と皆に宣言した。この七人が彼女なのだと。皇帝少女たちと結婚はできないのだと。


 紹介された姉妹シスターズだが、恥ずかしい秘密まで暴露され真っ赤な顔でフニャフニャになってしまった。無意識に羞恥プレイをして姉を堕とすとか、さすがナツキである。



「さっ、行きましょう。お姉ちゃんたち。今日は忙しいですよ」


 ナツキが七人の彼女を連れ部屋を出て行く。今日は叙任式や三か国君主会議など予定はぎっしりなのだ。


 惚れた弱みなのか、ナツキに肩を抱かれ連れていかれる彼女たちが言いなりだ。もう何度も何度も躾けられ完堕ち状態なのかもしれない。




 バタンッ!

 ドアが閉まり部屋が静寂に包まれたところで、アンナが口を開いた。


「まだ諦めていないのじゃ。余も、あと何年かすれば大きくなるのじゃ。バィンバィンになって必ずナツキを婿にしてみせるのじゃぁ」


 ナツキにフラれてしまった三人の皇帝娘だが、落ち込むどころが更に闘志を燃やしていた。


「そうです、アンナ様。私も負けません。ナツキさんはおっぱい大好きなんです。えへっ♡ 私の胸で堕としてみせますとも」


「そうじゃな。あのような豪胆な男は他にはおらぬ。必ず手に入れてみせるぞ。朕の婿として子をつくるのじゃ」


 トゥルーデも姫巫女も当然諦めていない。余計にやる気になってしまったようだ。むしろ、今でも体の奥に火を点けたお仕置きペンペンが忘れられない。


 ◆ ◇ ◆




 その日、ナツキは最高位である大公の爵位を受け、最大の名誉と広大な領地を手に入れた。真に世界に名を馳せる大英雄となったのだ。


 これだけの栄光を手に入れたのに、ナツキは驕りも偉ぶることもしない。いつも通り無意識に姉を堕としているだけだ。


 カリンダノール・ガザリンツク・ミーアオストク及び極東ルーテシア大公ナツキ。広大な領地を持ち莫大な報酬と貿易収益を受けながらも、決して贅沢はせず常に民の為に尽くした本物の勇者となる男。


 後世に偉大な勇者として名を残す彼の伝説は始まったばかりである。






 ――――――――――――――――


 お読みいただき誠にありがとうございます。


 これで『第3章 世界を救う奇跡の勇者』は終了になり、引き続き第4章に続きます。

 カリンダノールに戻ったナツキが領地経営を成功させたり、グロリアにお仕置きしたり。カレールーを販売したりお姉さんにお仕置きしたり……。


 お仕置きは程々にして、各ヒロインの個別イチャラブエンドを書く予定です。お楽しみに。



 もしちょっとでも面白いとか気に入ったと思いましたら、よろしければフォローや★を頂けるとモチベアップになって嬉しいです。コメントやレビューもお気軽にどうぞ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る