◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(ああ、うるさい───)


 勝手に人の頭の中でごちゃごちゃと。


 ───……を、探せ


 はじめは不明瞭だった声が、日増しに強く訴えてくる。


 ───……を、探せ、探せ探せ探せ探せ探せ探せ探せ


 手に入れろ、と。


 ヒトに指図をされるのを好きではない。

 自身が望むこと以外を強制される覚えはなく、従う謂われもない。


 ───ハジめノ……ハ、南南西ニ、墜チる


(声の思惑は知ったことではないが、南南西、ね)


 昼夜問わず響いてくる声に辟易するが、情報は有用だ。

 頭の中の騒音に眠れずに明けゆく空を眺めながら、頬杖をついた男は僅かに笑った。


(まずはお手並み拝見しようか)


 違わずに南南西に向かった一行に、男が教えることは、何もない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ティアちゃーん!見えるー??」


 ファウストが、わたくしの愛用の手鏡にビデオ通話ができる映写機カメラを装着して旅立った当日の午後。

 楕円の鏡を取り囲む銀細工の枠は薔薇の蔦を描いていて、蝶の形を施したカメラがまるで花にとまるように付いているのを、(これを一週間で作るのが匠の技ですのね)と感心して眺めておりましたら、蝶の羽にはめ込まれた魔石が順に光って、次いでセーラ様のお顔が手鏡に映りこみました。


「まあ、セーラ様っ」


 ニコニコと手を振っていらっしゃる鏡の向こうの巫女様に、わたくしも控えめに手を振り返します。


「良かった~。ファウスト君、ちゃんとティアちゃんとお話しできるよ~」


 小さな鏡にはセーラ様しか写ってはおりませんが、その鏡の後ろにファウストがいるのだと目線でわかりました。


「ルクレツィア、見えるかい?」


 ファウストの返答が聞こえてくる代わりに、今度は殿下のお顔が鏡に映り、こちらもニコニコと手を振ってきます。


「はい、殿下。ごきげんよう」


 屈託なく笑うお二人は、鏡に映るためにかなり密接してお座りのようで、なかなかお似合いのお二人のように見えます。

 馬車の中、並んで座っていらっしゃるようで、向かいの席にファウストがいるのですわね。


「君にしばらく会えなくなるのかと気落ちしていたのに、こんなものを作ってくれるなんてファウストは本当に素晴らしいね。

 これならいつでもどこにいても、君の顔が見られるし、話もできる」


 殿下は本当に嬉しそうに顔を綻ばせておりますが、犬の耳とか尻尾とか、そんなエフェクトがつけられる機能まではさすがについておりませんわよね?

 幻覚が見えたのはわたくしの気のせいのようで、セーラ様が半ば呆れているのようなお顔をされているのが気になります。


「ティアちゃんにお見送りしてもらってから、エンディミオン様ったらどうしてティアちゃんは来られないんだってずーっとずーっとしょんぼりしてたんだよ。

 そしたらアンジェロさんが、ファウスト君がこんなの作ったよって教えてくれて、本当は目的地に着いたらってことだったみたいなんだけど、試運転もかねて、移動しながらの性能もチェックしたいからって貸してくれたの!」


 本当に出発ギリギリに作り上げていったので、殿下もこのビデオ電話機能についてはご存知なかったのですわね。


 セーラ様にまでわかりやすく態度に出されて、お兄さまが見かねて映写機カメラの最新機能を教えてしまわれるほどなんて、殿下、先が思いやられてしまいますわ。

 学園の夏休みとオフシーズンにはもっと長い間お会いしないこともありますのに、その時はどうされているのでしょう。

 そういえば、よくお手紙が転送魔法で届いておりましたけれど、返事をお送りする前に、次のお手紙が来るのが常でしたわね……。


「最初に君の顔を見る権利をアンジェロから譲ってもらったけれど、ここは巫女に出てもらったほうが公平かと思って、同席してもらったんだ」


 現地に先行しているフェリックス様とラガロ様を除き、殿下とセーラ様、シルヴィオ様、お兄さま、ファウストが王族用の馬車と公爵家の馬車に分乗して旅立たれましたが、今は公爵家の馬車にお兄さまとシルヴィオ様がいらっしゃるようです。

 どちらも四人と専属の侍従が乗ってゆとりのある馬車ですけれど、長旅用の馬車は少しサイズが小さめですので、全員でお顔を出すまでには至らなかったようです。


(誰に対して公平なのか、とは考えないようにいたしましょう)


 殿下は殿下なりに、側近の皆さまへの配慮をなさったようです。


「こんなスマホみたいなことできるなんて、魔法って便利だね!」


 魔法が便利というか、ファウストが天才というか、そもそもが伝わるのがわたくしだけなのですけれど、代わる代わる好きにお話になるお二人に、わたくしが口を挟む余地はございません。


「姉上」


 鏡の裏からくぐもったファウストの声が聞こえました。


「聞こえておりますか?」


 返事のないわたくしに、映写機カメラが正常に作動しているのか気になったのでしょう。


「ええ、ファウスト。変わりはなくって?」

「……出立からまだ半日と過ぎておりません」


 セーラ様が気を利かせてファウストのほうに映写機カメラを向けると、あまり映りたくないのか素っ気ない声で返されてしまいました。


(確かに、午前に出立してまだお昼過ぎですものね、殿下があまりにも長い間会っていないようなお顔をなさるから、わたくしもそんな気になってしまいましたわ)


 遠く離れた弟を気遣うような言葉は、今の場合、過保護過ぎる姉でしかありません。

 学園の一年次も、わたくしだけ学校に通っている間、このくらいの時間ならファウストと離れていることは普通でしたもの。


(でもそれも、同じ王都にいて、家に帰ればすぐ会えるという前提でしたから、こんなに長い間ファウストと離れることははじめてのことですわ)


 いつもすぐ側にいるのがファウストですから、これはこれで姉離れ、弟離れの第一歩になりますかしら。


、ルクレツィアに会えていないんだよ。

 それだけで私はもうこんなに君が恋しくなるんだから、やはり家族とは感覚が違うものかな」

「殿下はずいぶん寂しがりでいらっしゃいますのね。セーラ様もファウストもお側におりますわ」

「そうだけど、君がいない」

「あらあら。今こうしてわたくしともお話しできておりますのに、殿下はおかしなことをおっしゃいますのね」


 ……今日もすごい攻勢ですわね。

 巫女様にもファウストにも見守られているのは少々落ち着きません。

 殿下は恥ずかしげもなく言葉を重ねますけれど、返すわたくしのなんと気持ちの入らないこと。


「……はぁ、なかなか伝わらないものだな」

「きちんと伝わっておりましてよ?」


 こういうすれ違いを面白おかしくしたお芝居コントを、前世で見たような気がいたします。


「エンディミオン様ってば熱烈!だけどそれじゃティアちゃんにはダメな気がするよ~」


 セーラ様、そこでいらぬアドバイスをしないでいただきたいですわ!



 殿下たちの乗る馬車が王都の城門から市街地を抜け、何もない平原を貫く街道を進んでいたうちは順調だった通信も、翌日、王都の南に広大に生い茂るカンターノの森に入った頃から、音声だけ途切れるようになりはじめました。

 静止している状態ならうまく作動するものの、遮蔽物の多い中を移動しながらでは繋がった魔力の軌道が不安定になるようです。

 課題が見つかったことで、目的地に着いたらまた連絡するとファウストが告げて、しばらくわたくしへの通信はなくなりました。

 どうも、ジョバンニ様にも繋いでいる映写機カメラがあるそうで、そちらを使って検証に入るようです。

 魔石の性能やその加工について、わたくしがファウストと語り合えることはひとつもありませんけれど、


(ファウストの中で、ジョバンニ様に負けたような気がいたしますわ……)


 少なからずショックでしたわ。


 この先の目的地は、森を抜けた先、サジッタリオ領に入る直前の町です。

 そちらにフェリックス様とラガロ様が迎えに来ており、殿下の拠点に相応しい場所を整えているそうです。

 領境の山々はなだらかな稜線ですが、短時間で越えるには馬車は不向きとのこと。

 町を早朝に発ち、山裾を迂回するように行くと、件の教会には夕方前には着くそうですから、今回はそちらのルートをとるようです。


 二日過ぎ、町に着く頃、連絡が来るのを今か今かと待ち侘びておりましたら、


「姉君!!緊急事態ですよ!!」


 と、ジョバンニ様が邸に飛び込んで来られました。


 今回はお父さまも同席する、とのことで、家族団欒の間のソファーで寄り添って座っているところでした。


「やあ、ジョバンニ君。緊急事態とは只事ではないね?」


 お父さまもジョバンニ様の、いえカンクロ家の奇行にはずいぶん手慣れていらっしゃり、鷹揚に闖入者を迎え入れました。


「おやっ、公爵だごきげんよう!

 そんなことより姉君、大変なことですよ!!」


 お父さまの存在をそんなことと片付けられるジョバンニ様の大物ぶりに呆気に取られていると、ジョバンニ様が持ち込んだ、前世の記憶で言えば古い無線機?のようなものに鏡面のついた、この世界では無骨なフォルムの不思議な道具から、お兄さまの声が聞こえてきました。


「ジョバンニ!聞こえているかい?ジョバンニ!」


 あれがジョバンニ様に繋がっているもうひとつの映写機カメラなのでしょうけれど、形から入るタイプですのね。さすが一人スチームパンクの趣味を全開にしていらっしゃるだけあります。

 スチームパンクとはなんぞや、という疑問もなくはないのですけれど。


「ジョバンニ、ティアにはわざわざ知らせなくていいと言っただろう!」


 めずらしくお兄さまが切羽詰まった声を出しております。


「アンジェロ、いいから状況を報告しなさい」

「父上!失礼いたしました。ですが、」


 ジョバンニ様が映写機カメラの設置を済ますと、お父さまがどんと腰掛けているのが向こうにも見えたようです。

 驚いたようなお兄さまが言いさしたところに、殿下の声が重なりました。


「公爵、ルクレツィア嬢に心配をかけてしまうような話だけれど、それでもいいかな?」

「ええ殿下。もうここまで聞いてしまいましたから、ここで耳を塞いでしまうのはかえって酷でしょう?」

「そうか。

 ではシルヴィオ、公爵に説明を」

「承知しました。

 公爵閣下、シルヴィオ・ビランチャです。

 まず星の探索については、すでにご報告の通り、場所の選定、時期共に確定しており、明後日の夕方以降に探しものの回収予定ということに変更はございません」


 ジョバンニ様と繋がっているほうの映写機カメラはわたくしのものより広範囲を映せるようで、殿下を中心に、お兄さま、シルヴィオ様が両脇を固めて神妙なお顔をされております。


(あら?)


 ふと気付くと、わたくしの映写機カメラも起動しており、あちらには映っていない巫女様のお顔だけが映って、「シィ」と唇の前で人差し指を立てていらっしゃいました。

 音声は重なって聞こえてきませんから、映像のみの起動のようです。


(あらあら)


 わたくしは何事もない顔を装い、自分の手鏡からそっと視線をはずしました。


「それで?」


 お父さまが促すと、緊張の色を隠せないシルヴィオ様の眉間に、深々と皺が寄るのがわかりました。


「……、その、探索場所ですが」


 言いにくそうにシルヴィオ様が繋ぎます。


「魔物が、出現しました」


 マモノ、まもの……、魔物?!


 王都ではまずお目にかかりませんし、ガラッシア領都との行き来でもその存在を脅威に思ったことがありませんから失念しておりましたけれど、確かにこの世界に存在いたしましたわね、魔物!

 冒険者ギルドや各国の軍隊で対応する範囲ではありますけれど、魔物は日々発生しているのです。

 そのほとんどは各地に点在するダンジョンから生じるものですから、こんなに王領のすぐそば、サジッタリオ領との境の山麓に突然出現したなどと聞いたこともありません。


「それは確かに緊急事態だね」


 お父さまも、難しいお顔をなさって報告の先を促します。


「一週間前、村人の案内で探索地の洞窟を確認した際には認められなかったのですが、それから毎晩、念のためラガロ・リオーネが様子見をかねて見回りをしていたところ、昨日、数対の魔物と対峙、一人で一掃するには及ばず、軽傷にて村まで退避したと、フェリックス・スコルピオーネからの報告です」


(ラガロ様が軽傷?あれだけお強いはずですのに?)


 ラガロの星の名に恥じないように鍛錬を重ね、騎士団でも指折りのはずのラガロ様が退避を余儀なくされるなんて、どれほどの魔物だというのでしょう。

 それも、一週間は姿も見せなかったのに、昨日になって急に現れるなんて。


(乙女ゲームのシナリオ的に、簡単に星は手に入れられない、ということですかしら。

 まさか戦闘もあるタイプのゲームでしたのね)


 そこはちょっと想定外でしたわ。

 魔物や戦争とは縁遠く、あまりに平和な世界観でしたので、その点についてはあまり突き詰めて考えておりませんでした。


「ラガロ様の、お怪我の具合は?」

「左腕に少し擦り傷を負った程度だよ」


 思わず口を挟んだわたくしに、お兄さまが答えてくださいました。

 手鏡の中で巫女様も手で丸を作っていらっしゃいますから、ウソはないのでしょう。


「ふーん、ラガロの星に傷を負わせるだけでも大したものだけど、どんな魔物なんだい?」

「水属性の、狼型の魔獣五体とのことです」

「なるほど、ラガロの星とは相性が最悪なわけだ」


 魔法や魔物には属性というものが存在します。

 地水火風光闇の六属性ございますが、光闇属性は珍しく、そのほとんどは地水火風の四属性で分けられます。

 本来魔法属性は一人に一つから二つ備わっていると考えられており、血筋に強く影響を受けます。

 両親、主に父方の属性を強く引き継ぎ、母方の属性が異なる場合、属性の相性が良ければ二属性得ることも可能です。

 ガラッシア家は海凪の巫女様の血の影響が強く水属性に特化しており、お母さまの生家のヴィジネー家は特殊な治癒能力の上、水属性とは相克の地属性ですから、わたくしもお兄さまも水属性のみ。

 ラガロの星、ラガロ・リオーネ様の場合は、生家よりもラガロの星に起因する魔法属性の特化型になりますけれど、水属性の魔物とは相性の悪い火属性。

 それも一対多数で突然のエンカウントであれば、多少不利になるのも頷けます。


(戦闘のチュートリアル的な相性の気もいたしますけれど)


 それでも突然五体は、乙女ゲームしかプレイしない層にはなかなかハードルが高いように思います。


「取り急ぎ、サジッタリオと王領の付近の町村から騎士や兵士を駆り出して探索地を見張っておりますが、教会に踏み入らない限り、襲ってくる気配はないそうです」

「星を得ると力も得るそうだから、魔物はそれに惹かれてやってきたのか、その力そのものが魔物を生み出したのか。どちらだと思う?シルヴィオ」


 急なお父さまの問いかけに、けれどシルヴィオ様も落ち着いて考えを巡らせている様子です。


「狼自体は、近隣の山間部に棲息している種に似ていたとラガロが言っていたので、おそらく後者の半分が理由、かと」

「へえ、続けて?」

「群れをなす魔物の目撃情報は王領にもサジッタリオ領にも、ガラッシア領にもないと確認しておりますので、魔物自体がどこかからやって来たとは考えにくく、土地の獣が泉の力で魔物に変じたのだというのが、私の結論でしょうか」

「そこまで確認済みか。いいね。では君の意見を採用するよ。

 で、星の回収はうまくいきそうなのかな?」


 じわじわと、先ほどからお父さまの筆頭公爵らしい圧を感じます。

 お父さまは王城では特に役職をいただいておりませんが、国王陛下や宰相様の相談役のようなお立場で、発言権は強くお持ちです。

 未来の宰相候補に愛ある指導、なのでしょうけれど、そんなに萎縮させるような態度をお取りにならなくても。

 おろおろとお父さまのお顔を見ておりますと、視線に気づいたお父さまはわたくしには心からの甘やかな笑みを向けて、肩を引き寄せてわたくしの頭をその肩に乗せると、ぽんぽんとあやすように頭を撫でられてしまいました。


(……ええと、このままの姿勢でいるより他ありませんかしら?)


 思いきり映写機カメラに映っていると思うのですけれど、お父さまはこの体勢に疑問はないようです。


「……現状、魔物を討伐しないことには難しいところではありますが、明日中には対応しようかと」

「どんな手を打つつもりなのかな?」

「残念ながら、我々の中には水属性に有利な地属性がおりませんが、集めた騎士、兵士から地属性を募り、討伐隊を組む予定です」

「殿下は、確か第二属性がカプリコノの地属性では?」

「殿下を前線に立たせるつもりはございません」

「ふーん、そう」


 お父さまがわたくしの頭を撫でたまま、何か考えるように、ソファーの肘掛けを反対側の指でコツコツと叩いている隣で、わたくしも頭を働かせておりました。


 殿下は、珍しい方の王族特有の光属性で、王妃陛下の生家のカプリコノ家の地属性も持っておりますが、戦闘には不参加。

 第一王子ですもの、いざとなれば出るでしょうけれど、今回のような急な討伐で先陣を切らせるわけには参りませんわね。

 シルヴィオ様はビランチャ家の風、アリアンナ様の生家のサジッタリオ家は相克の火ですから、属性は一つ。

 さらにビランチャ家は武門ではございませんから、シルヴィオ様はどちらかというと後方から指揮をとるタイプですわね。

 次いでフェリックス様もスコルピオーネ家の水属性、お母さまの生家の風もお持ちですけれど、スコルピオーネ家もまた武門ではなく斥候タイプのお家柄ですから、今回の魔物との戦闘においてはあまり通用しそうにありません。

 お兄さまも水属性、同じ属性同士で戦うのも相性が悪いことに変わりはありませんから、魔法では戦力外。

 ラガロ様は火属性で水属性には弱いため、お二人合わせて近接戦闘のみになりますけれど、ラガロ様が怪我をなされるほどであれば、むやみやたらと突っ込んでいくわけには参りませんわね。

 そして最後にファウストは、彼も珍しいほうの闇属性持ちのためにガラッシア公爵家に迎えられたのですけれど、闇属性は時間魔法や空間魔法、転移魔法などのバフ・デバフを主にした補助型ですし、ファウスト自身も研究者タイプですからやはり戦力外、ですわね。


(地属性はカプリコノ家か、トーロ家、ヴィジネー家の系列に多い属性ですけれど、トーロ家しか戦闘に向きませんわね)


 熊のようなオノフリオ・トーロ伯爵を思い浮かべますが、それに準じるほどの方は思い当たりません。


(シルヴィオ様の仰る方法でうまくいけばいいのですけれど)


 乙女ゲーム的に、なんだか腑に落ちません。何か足りないような。


(地属性をお持ちで、戦闘もこなせるような方……)


「……クラリーチェがいればな」


 シルヴィオ様が、ポツリと呟きました。


(クラリーチェ様は火属性のサジッタリオですけれど、……あら、侯爵夫人は確か)


「呼ばれたから来ましたけれど、お取り込み中でしたかしら?」


 噂をすればなんとやら!

 お母さまの侯爵夫人がカプリコノ家の傍系でいらっしゃるクラリーチェ様が、騎士服に身を包んで、映写機カメラの向こうに現れました。

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